近江湖北観音の里


滋賀県湖北地方には昔からたくさんの観音様が祀られています。
湖北地方にある仏像、寺院は京都や奈良のような壮大なものとは違い、山里や田園地帯の中にあり昔から集落の人達によって大切に守られてきました。井上靖著「星と祭」の中にもそのことは詳しく書かれています。しかもその中には国宝や重要文化財が多く、参拝客の目を大いに和ませてくれる貴重な仏像ばかりです。その詳細は高月町立観音の里歴史民俗資料館に行くと詳しく触れることができるでしょう。
さて、ここではパタリロが参拝したことのある主な仏像を紹介したいと思います。


★渡岸寺観音堂(どうがんじかんのんどう)
所在地=伊香郡高月町渡岸寺 本尊=十一面観音菩薩
JR北陸本線高月駅から徒歩10分位のところにあります。湖北の観音様をお参りする時は、この観音様だけはぜひお忘れなく参拝していただきたいと思います。尊像は2m近い桧の木造で、香の煙のためか黒く光っており、何よりも慈愛に満ちた尊顔、豊満・官能的な容姿には驚嘆してしまいました。美術的・文化財的な価値は相当なもので、国宝に指定されたこの仏像には遠近・老若男女を問わず、大勢の参拝客が訪れているようです。

★赤後寺(しゃくごじ)
所在地=伊香郡高月町唐川 本尊=千手観音菩薩、聖観音菩薩
JR北陸本線高月駅と木之本駅の間にあり、国道8号線沿いの千田というバス停から西に向かって北陸自動車道を越えたところにあります。寺の境内には杉の大木が林立しており、昼間でもうっすらとした暗さのある住職不在の寺です。しかしこの寺の仏像は住民の手によって手厚く守られており、参拝客があると交代で世話人がやってきて観音様を拝ませてくれます。私が訪れた時にも電話一本で世話人がすっ飛んで来て、本堂の扉を開け、解説をしてくれました。二体の観音様のうち、千手観音菩薩には手首がなく、聖観音菩薩には頭部がありません。見るからに痛々しく悲惨・・・といった感じがしますが、そのようなお姿の中にも観音様の気がうっすらと感じられました。平安時代から戦国時代にかけての戦乱期には、その難を逃れるため、村人達が仏像を土中に埋めたり、川底に沈めたりして、今日まで大切にお守りしてきたようです。川底に沈めた際には大洪水があったようで、その時に手先や頭上仏、台座が流失したのではないかと言われています。昭和44年、国の重要文化財に指定されました。

★西野薬師堂(にしのやくしどう)
所在地=伊香郡高月町西野 本尊=薬師如来、十一面観音菩薩
JR北陸本線高月駅より西へ4キロ、ヤンマーの工場の近くにあります。明るい境内の中の小さな本堂には欅の木造の薬師如来様と十一面観音菩薩様が蓮台の上に立っておられました。薬師如来には薬壺がなく、阿弥陀如来と見ることもできます。昭和25年、国の重要文化財に指定されました。

★石道寺(しゃくどうじ)
所在地=伊香郡木之本町石道 本尊=十一面観音菩薩
JR北陸本線木之本駅の東、国道365号線よりさらに東に向かって高時川を越えたところにあります。石道寺は己高山(こだかみやま)の麓、石道の集落の近くにあり、緑の樹木の中にひっそりと立っていました。寺は「しゃくどうじ」ですが、集落は「いしみち」と呼ぶようです。寺には拝観料を受け付ける窓口があり、厨子の中を拝観してみると十一面観音様が三体、真ん中が最も大きく身長173cmの欅の木造でした。国の重要文化財に指定され、顔立ち、体形ともに美女を模したといった感じがあり、慈愛に満ちたお姿にはひどく感動してしまいました。私の最も大好きな観音様です。

★その他
鶏足寺(けいそくじ)の薬師如来、菅山寺(かんざんじ)の不動明王、腹帯観音堂の十一面腹帯観音、小谷寺(おだにじ)の如意輪観音、青岸寺(せいがんじ)の聖観世音菩薩などたくさんあります。


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