大台ヶ原山から大杉谷

(日出ヶ岳=1695m)


奈良、三重、和歌山の県境にある大台ケ原山は日本有数の多雨地帯です。この雨水が台地を潤して木々を育てて原生林を作り、岩石を削り取って渓谷や深い淵を作っています。特に大杉谷に至る道には素晴らしい滝が連続して続いています。くれぐれも十分な登山装備をして出かけて下さい。


平成5年6月、梅雨入り前に入山しました。近鉄大和上市駅からバスに乗り、2時間半かけて大台ヶ原駐車場へ。そこから近道を通って日出ヶ岳山頂に登りました。そこから先は大杉谷へ行く道で入口に「十分な登山装備をして入山して下さい」という看板が立っていました。

ここから堂倉避難小屋へ下りる道はシャクナゲ坂と呼ばれ、5月下旬にはシャクナゲの花が見事に咲いているようです。しかしここはかなり急坂だったので、下り始めて30分で左足の膝上が痛くなってきました。いつもの持病、靭帯損傷とやらでこの痛みはたまらない。泣く泣く下り進んで、堂倉避難小屋、堂倉滝に到着しました。ここまで下りるとかなり深い渓谷の中で、吊り橋を渡って歩かなければいけない道が増えてきました。足場の悪いところには鎖も取り付けられており、膝を痛めた私としては慎重に進まなければいけない道でした。そういえば、昔、山友のメンバーが吊り橋が切れて落下し、死亡者一人を出したというのはこの辺りかなぁーという複雑な恐怖心が胸に押し寄せて来たのもこの頃。しかし今日の宿泊地、桃の木山の家までは絶対に歩かないといけません。泣く泣く進むうちに与八郎滝、隠滝、光滝、そして最後の見物、七ツ釜滝が見えてきて、桃の木山の家に着いた時は既に18時を回っていました。小屋は宿泊客でごった返していて、足の痛みで悲壮な思いで食事を済ませると、後はコンコンと眠りに着きました。

翌朝は6時に出発、前夜に宮川乗船場からの船の予約を12時に入れましたので、遅れないように歩かないといけません。平等ぐらを過ぎるとシシ淵に出て、ここの岩場で足を滑らせて「すっぽーん」と川の中に左足をはめてしまいました。泣く泣く歩いて行くとやがて千尋滝が見え、大日ぐらに出て宮川乗船場に到着しました。山小屋から標準3時間40分のところを6時間かけてのゴールインです。身体は既にバテバテ状態。腕時計をはめた手首の周囲にはカビが生えていました。

宮川からは船に乗って40分程で大杉に到着。そこからバスで2時間かけて近鉄松阪駅に着きました。今回の山行は痛い思いをしただけに永遠と記憶に残ることでしょう。全治1ヶ月の重傷です。


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