| 「英二、行っちゃったね」 「ああ・・・・」 互いに英二が駆けて行った方向を見つめたまま呟いた。 「ふふっ。英二がいるから切ったのに、ね。 願掛けに伸ばしてた、この髪」 僕は微笑みながら、髪に触れた。 「周」 「本気だよ」 微笑むのをやめて、秀を真っ直ぐ見据えた。 「相手は、今日、戦って負かされたヤツ・・・か?」 「うん」 「本気か!?」 秀の口調が、だんだん強くなる。 「さっき本気って言ったでしょ?」 「馬鹿げてるっ!!今日初めて会ったヤツなんだろう!? しかも、たった一度試合をしただけだ!そんな・・・!」 秀は、完全に不信感を露わにしていた。 「・・・秀」 「そんなよく分からないヤツに、本当にっ、 これから全てを託す気かっ!?」 畳み掛ける様に自分の考えを訴える秀。 「たった一度、じゃないよ。一回も、だから」 「・・・・・どういう、意味だ?」 今度は、僕が話す番。 「試合を一回したから、分かるんだ。 彼に氣がどれだけ優しいか。 僕の氣を、とても穏やかに包むんだ」 今日の試合を思い出しながら、思いつく言葉を並べた。 「目が、とても綺麗だった。真っ直ぐ、曇りのない瞳。 違ったんだ。今までの誰とも。氣も、僕を見る目も ・・・・・伝わってくる、思いも。 分かるんだ。彼が僕の待ってた、 『塔から救い出してくれる王子様』だよ」 「だがっ!まだ決めるには早すぎる!! もし。もし違ってたら、どうするんだ!?」 僕の話を聞いて、少し考えが揺らいだみたいだけど、 やっぱり、まだ納得はできないみたい。 「万が一違ったって、大丈夫だよ。ねぇ、秀は覚えてる? あの時のこと・・・・」 ―唯一のひとが見つかるまで、僕、髪を切らないよ― ―あ!それって『願掛け』?― ―うん。知ってたんだ。さすが秀。でもね・・・ これにはもう一個、意味があるんだ― ―どんな意味?― ―ラプンツェルだよ― ―らぷんつぇる?― ―悪い魔法使いに高い塔に閉じこめられた、女の子の話― 「ラプンツェル、か?」 「そう。魔法の掛かったラプンツェルの髪は、 切ってしまえばもう誰も彼女の元へは行けない。 選んだ人が王子様じゃなかったら、彼女はもう救われない。 だけど、僕は違う。髪に魔法なんて掛かってないし、 髪が長くなければならない、なんてこともない。 僕のチャンスは一度じゃない。 何回でもある。もう一回言うよ?」 お願いだから、うまく説得されてよね、秀。 「万が一、百歩譲って違ったとしても、大丈夫」 どうか、矛盾に気付かないで。 「・・・・・えられ・・・のか・・・?」 秀は俯いて、とても小さな声で何かを言った。 「何?秀」 「耐えられるのかって、言ったんだ」 それまでに勢いがあった分、静かに言われた事に 威圧感を感じた。 「え?」 「もし・・・・・。もし違った時、耐えられるのか? もう一度、探せるのか!?周は!!」 秀の言葉にしては珍しく、なんのカバーもしていない、 そのままの言葉。 僕の矛盾を、見抜いた言葉。 そう。 何度でもチャンスがあると思っているなら、 初めからラプンツェルなんて言わない。 似てると思ったから、使ったんだ。 あの時から、分かってた。 この人だと思った人が、もし、違ったなら。 僕はもう。 おしまいだろう、と。 もう一度立ち上がれる自信なんて、無かった。 「どうなんだ!周!!」 きつい口調。 けれど、瞳が雄弁に語ってる。 『心配なんだ』と。 「秀」 やさしいね。 「もう一度言うよ」 僕は大丈夫。 「彼に決めた。本気だよ」 心配しないで。 「周・・・・・」 しばらく、秀と見つめ合った。 秀は、僕に何というか考え、 僕は、秀の答えを待った。 サァ―――・・・・・ 風が吹いて、僕の不揃いな髪を揺らした。 「・・・・・・分かった。周が、周がそこまで言うなら、 俺はもう、何も言わないよ」 口ではそう言っているけど、やっぱり瞳の色は『心配』で。 「でも、これからも変わらず、今までと同じように、 周を助けるから。それだけは、覚えておいてくれ」 やさしい、やさしい秀。 込み上げる気持ちに、素直に微笑んだ。 それは、感謝の笑み。 「ごめん」 ありがとう・・・・・・。 「ふ―――じ―――っ!!」 ふいに聞こえた、英二の声。 「・・・・・すごい。謀ったとしか思えないタイミングだね。英二」 「そうだな・・・」 そう言った秀の顔には、ようやく笑顔が浮かんだ。 |
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| うわ、やっべー。 全4話とか言ったのに、5話になっちゃいました・・・・。 なにゆえ??? 今度は絶対、次で確実に終わります。 ま、今回の敗因は「過去ネタの多さ」ですね。 次はそんなこと無いんで。 |
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