「最近、手塚の様子が変なんだ」

僕がそう相談したのは、バレンタインから10日後。
もう、その雰囲気が収まったころだった。

「変って?」
聞いてくれてるのは、英二。
「うん、何だか考え込んでることが多いんだ。
 聞いてもはぐらかされるし。
 あと、よく出かけるんだけど、どこに行くのか絶対教えてくれなくて。
 もちろん、ついて行かせてくれないし」
お昼休み、人気の少ない場所で。
「たぶん、何か僕に隠してるんだと思うんだけど・・・・。
 英二、何か心当たりない?」
「心当たりって言われてもにゃ〜。
 不二にわかんないのに、俺にわかる訳ないじゃん」
「そんなの、聞いてみないと分からないでしょ。
 英二は、手塚の幼馴染みだし、
 違う視点から見た方が、分かることだってあるんだよ?」
「・・・・・・そりゃ、そーかもしんないケド」
「本当に心当たりない?」

手塚とは、このごろあまり、話していない。
いつもにも増して、無口な手塚。
いったい、どうしたの?

「う〜ん・・・・。こないだ、図書館で見たけど・・・」
「手塚、何してた?」
「分厚い本読んでたよ。来月卒業試験だし、手塚のことだから
 勉強してたんじゃないのかにゃ〜?」

勉強、か。
それなら、いいんだけど。
本当に、そうなのかな・・・・??

「あっ!!そうだふじっ!」
「!っ何?突然大声出して」
英二の声で、僕の思考は止まった。
「あのさ、不二はここ卒業したらどうすんの?」
「急にどうし・・・・」
「いーから!!」
そう言う英二の目は、期待の色でキラキラ光っている。
「いちおう、研究院に入ることになってるけど・・・」
「やったー!!じゃあさ、俺んち遊びに来てよ!
 3ヶ月くらいはいるんだ〜」
「・・・・3ヶ月、って?」
「実はさ、姉ちゃん二人が旅行行くからって、
 家の手伝い頼まれちゃったんだよにゃ〜」
言いながら少しぶーたれる英二。
「ふふっ。そう言えば英二の実家って、
 隣町で治療院やってるんだよね」
「そだよ〜」
「でも英二、お姉さん達帰ってきたらどうするの?
 さっきの口振りだと、家を出るみたいだけど」
「うん、そーなんだけど・・・・」
と、少しうつむいてもじもじする英二。
かと思えば、
「ここで一つっ、不二に報告っ!!」
いきなり叫んだ。
「報告??」
「・・・・・・バレンタインに、ね。大石に言われたんだ。
 何か、今までのなんとなーくのじゃなくって、具体的に。
 ・・・・・まぁ、その、つまり・・・・・」
真っ赤な英二。

「ずっと一緒にいようって」

幸せそうに笑う英二。



ツキン・・・ッ



「だっ、だから大石もウチ手伝ってくれるって言ってて
 その後は一緒に世界を巡ろうって言ってるんだけど
 3ヶ月はこっちにいるし」
照れてるせいで、早口で流れていく言葉。
「不二も手塚と一緒に・・・・・」

「違うよ」



咄嗟に、冷たく否定した。



「・・・・えっ?」
呆けた、英二の顔。

「僕、手塚に卒業したらどうしようなんて言われてないし、
 言ってないから」

胸に渦巻く、苦しい感情。

「だいたい、僕と手塚じゃ、術を学んでる理由も、違うし」

耐えきれないから言葉にするのに、
言えば言う程、重くなる。


このキモチ。



「それに、僕みたいな『爆弾』、一緒にいたってきっと・・・・」



「不二っ!!」

悲しそうな、英二の顔。



「手塚がっ、そんな風に思ってるワケないだろっ!」

わかってる、これは。



「・・・・・・ゴメン」





ただの醜い、嫉妬。






「・・・・俺の方こそ、ごめん。不二のコト考えないで、一人で、浮かれて・・・」
「英二は悪くないよ。謝らないで」
英二を安心させようと思って笑ったのだけど、うまく笑えただろうか?
「っでも!」
思い詰めた英二の顔。

笑うの、失敗したかな?これは。

「いいの。僕も言い過ぎたし、ね?」
「・・・・・・でもさ」
「英二、もう気にしないで。僕としては、気にされる方が辛いんだけど」
「っ!!わ、わかった!!もう気にしにゃいっ!!!」
英二はこれでもう、大丈夫かな?
「それより、おめでとう英二。二人とも末永くお幸せにね」
「なっ!なんだよそれ――っ!別に結婚するんじゃないんだからにゃーっ!!」
真っ赤になって反論する英二は可愛くて。
「似たようなもんでしょ?」
「ちっが――うっっ!」


ただ、そんな幸せそうな英二が、羨ましかっただけ。









「じゃ、またあとでね。英二」
「またにゃー!」

遠ざかる、後ろ姿。



「・・・・・・・・・まったく。こっそりするならわかんないようにしろっつーのっ!!
 もーバレバレじゃん!フォローする俺の身にもなれっ!!
 ・・・・まぁ、何してるか感づかれてナイのは、
 手塚にしてはジョーデキだけど・・・・・」

脳裏に浮かぶのは、真っ直ぐで不器用な幼馴染みと、
先程の悲しそうに微笑んだ、親友の顔。

「不二にあんな顔させてっ!!・・・・・・・って、俺のせいもあるケド・・・・。
 いやっ!そんなことはにゃい!不二が俺は悪くないって言ったから、
 やっぱ悪いのは手塚だっっ!!」
右手を胸の前で握りしめ、一人で納得する菊丸。




「こーのバカ手塚っ!早く不二を幸せにしろ―――っ!!!」




その友を思う彼の絶叫は、青い空にこだました。
英二くんは、手塚の目論見を知っているので応援しているのですが、
フォローのつもりが地雷を踏んでしまいました。
ここら辺は表現が難しくて、時間かかったのですが、
もしかしたら英二が二人の間でてんやわんやなのを
書きたかっただけなのかもしれない・・・・。
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