| 「うわっ、すごい・・・・」 目を開いた不二の周りは、一面、白い花で埋め尽くされていた。 しかし、花は一輪も咲いていない。 不思議なことに、全てが蕾の状態だった。 「手塚・・・」 「少し待っていろ。今咲かせる」 「咲かせるって。手塚・・・」 「不二」 止めなければ、不二は、自分が疑問に思っていることを 全て聞くまで話し続けそうだったので、 「後で、何でも答える」 やんわり、それを制した。 「・・・・・・・うん」 手塚はズボンのポケットから宝石を出し、 左手を握りしめ、目を閉じた。 ぱあ・・・・・ 宝石から発せられる柔らかい光が、指の隙間から漏れだしたのと同時に、 二人が立っている所を中心にして、花が咲き始めた。 まるで、静かな水面に、小石を投げた時にできる波紋の様に、 次々と咲いていき、甘い香りを漂わせる、白い大輪の花。 月の光を反射して、淡く輝いている。 「・・・・・・まさに、月下美人だね」 不二がぽそりと呟いた時、全ての花が咲いた。 「不二」 手塚は、不二を真っ直ぐ見つめる。 「気に入って、貰えただろうか?」 「えっ?まさかこれ、全部」 言いながら辺りを見回し、 「僕の、ために・・・・?」 「ああ」 不二も、手塚を真っ直ぐ見つめた。 「手塚、一人で?」 「ああ」 「月下美人って、夏の花だよ? 手塚、植物を活性化させる術なんて、使えなかったよね?」 「勉強した」 「でも、こんな数の花、全部君一人で調整するなんて・・・」 「不二がしていたのを、何度も見ている」 「じゃあ、最近よく僕に内緒で外出してたのは、この花の手入れ・・・?」 「・・・気付いていたのか」 (ねえ、手塚) 「今、僕ら卒業試験前だよ」 「そうだな」 (君は一体) 「みんな、必死に勉強してる時期なのに、 どうして君は、僕のために、こんなことしてくれたの・・・・?」 (何を考えているの?) 不二は、不安そうな顔をして、手塚を見上げた。 その時。 リンゴーン、リンゴーン。 日付が替わるのを告げる、鐘の音。 「この花は全て、不二への贈り物だ」 (えっ・・・・・?) 「誕生日、おめでとう」 至極真面目にそう言った手塚は、 ちゅ 不二の額に、優しいキスを落とした。 「たんじょう、び・・・・・?」 (そんなこと、すっかり忘れてた・・・・) 完全に意表をつかれ、呆然としている不二を心配し、 手塚が声をかけた。 「不二?」 「最近、手塚の様子がおかしいのが気になって。 ・・・・誕生日なんて、すっかり忘れてた」 自然と浮かんだ、切ない笑顔。 ぎゅっ・・・!! 「不安にさせて、悪かった」 手塚は思わず、不二を抱きしめていた。 「ううん。もういいんだ。君の気持ちが、嬉しいから」 そう言って不二も、手塚をぎゅっと、抱きしめた。 二人とも気持ちが落ち着いてきた、その時。 「・・・っくしゅ!」 不二が、くしゃみをした。 「っ!すまない」 バサッ 手塚は謝りながら、来ていた上着を脱ぎ、不二に着せ始める。 手塚に突然連れ出された不二は、あまり厚着をしていなかった。 「やだ、どうして手塚が謝るの?」 不二が、困ったように笑う。 「突然外に連れてきた、俺が悪い」 真面目顔で、そんなことを言う手塚。 「ねえ、手塚」 手塚に着せられた上着を整えながら、不二が尋ねた。 「どうして月下美人なの?」 「花屋で、偶然見つけたんだ。この花の種を。 そしたら、お前がずいぶん前に言っていた、 『月下ヶ原』の話を思い出して・・・・」 ―月下ヶ原― 月下美人の群生地であることが、その名の由来となっている。 そこに生息している月下美人は、何故か全て同じ時に、 一夜だけ開花する。 その光景は神秘的で、見る者全てを魅了すると言われている、 『幻』の場所。 「覚えているか?その話を俺にしたお前は最後に、 『一度でいいから見てみたい』と、言ったんだ」 「・・・そんなこと、覚えててくれたんだ・・・・・・」 「不二の言ったことなら、一言一句、忘れはしない」 手塚得意の、無自覚殺し文句。 不二の顔は、見る見る赤くなって。 「サラリと、そういうこと、言わないで」 恥ずかしくて、うつむいた不二。 「嫌、だったか・・・?」 それを否定的な意味でとらえた手塚は、 不二の肩に手を置き、そっと屈んで、不二と同じ高さに目線を合わせた。 手塚のその表情は、ぱっと見て分かる程に、沈んでいて。 「そんなこと無いっ!すごく・・・・・。すごく嬉しいよ」 慌てて否定した不二。 「本当か?」 「うん。ありがとう、手塚」 言葉だけでは、気持ちが追いつかなくて。 不二は手塚の頭を、 ぎゅっ。 と、抱きしめ。 「・・・・・・大好き」 素直な気持ちを、伝えた。 「俺もだ。不二」 手塚は、両手で不二の頬を包み。 深く、口付けた。 「・・・・っん」 漏れた、不二の甘い声。 月光に照らされている不二は、月下美人のようで。 「不二・・・・」 手塚は花束を抱える様に、優しく不二を抱きしめた。 「ね、手塚」 甘い余韻に浸る不二は、夜風に溶けてしまいそうな声で言った。 「ずうっと、一緒にいてね」 「それなら、不二に贈ろう」 こつん と、額をくっつけて、手塚が答える。 「俺の、これから先の人生。全てを」 「嬉しい・・・!でもね、手塚」 手塚の答えに、不二は、これ以上ないくらいの笑顔で、返した。 「貰うばっかりじゃ嫌だから。僕も、あげる。 僕の人生。最後まで、全部」 そして二人は、お互いの左手の薬指にそっと口付けた。 甘い香りの漂う、真っ白な花畑。 そこで紡がれる、純粋な、甘い睦言。 それを見守るのは、白く輝く、空の月だけ・・・・・。 |
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| 終わった―――っ!! 間に合った〜(泣)ホント良かった。 だって、塚不二サイトなのに、4年に一度の不二くんの誕生日を 祝わない訳にはいかないでしょっ!! 月下美人使おうというのは決まっていて、 だいたいの話のあらすじも決めてあったのですが、 やっぱ所詮は「だいたい」 細かいところで詰まりまくって、大変な目に遭いました・・・・。 ここで、豆知識!! 月下美人は、クジャクサボテンの仲間なのです。 ・・・・・・・・・・知ってたら、ごめんなさい。 話の最中に入れようかと思っていたのですが、 そんなうまくはいきませんでした。ははは(痛) とりあえず、今回も甘々な二人でした。 |
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