「・・・・ん」
「秀一郎君!」
大石が目覚めると、そこは不二家の客間だった。
「大丈夫?どこか痛いところとかない?」
「ゆみこさん・・・・・?」
由美子が大石の寝ているベッドへ、心配そうに駆け寄った。
「・・・!!しゅうはっ!?ゆうたくんは!?」
起きあがった途端、大石は全てを思い出した。
周助が突然苦しみだして、裕太が怪我をし、
周助も血を流して気を失ったのを。
「安心して?二人なら大丈夫よ」
由美子が優しく微笑んだ。
「しゅうはどうしたんですか!?それに、ぼくはどうして・・・?」
「秀一郎君、落ち着いて。全部、説明するわ」

そう言ってベッドサイドの椅子に座ると、
由美子は長い説明を始めた。


「まず、周助と裕太の怪我だけど・・・・
あれは、周助の病気のせいなの。
周助は生まれつき、『氣』っていう術を使う時に必要な力が
人とは比べものにならないくらい多すぎるせいで、
普通は意識しなくてもできる氣のコントロールが
上手くできなくて、周りも自分も傷つけてしまうの。
それが、周助の病気」
「どうして、そんな・・・」
「理由は・・・・・、よくわからないの。
なんでそうなるのか判っていない病気なんだって、
父が言っていたわ」
「なおらないんですか・・・?」
「治るのとはちょっと違うかもしれないけど、
術でコントロールすることは出来るわ。
でも、その術を使うにはまだ周助の体は幼いから、
今はそれさえも出来ないの。
ここまで、大丈夫?わからなかったこととかある?」
由美子が優しく尋ねた。
「しゅうとゆうたくんのことはわかりました。
でも・・・・」
大石が少し言いにくそうに聞いた。
「どうしてぼくは、けが、しなかったんですか・・・?」
「それは、秀一郎君が三源術の
浄化の力を持っているからだわ。
周助が発作を起こしていた時、秀一郎君は無意識に
浄化の力を使っていた。
周助もね、浄化の力を持っているの。
きちんと使えないから傷つけてしまうけど、
秀一郎君が、裕太と周助を助けてくれたのと同じ力。
三源術は、同じ属性だと打ち消し合うから、
浄化の力を使っていた秀一郎君は、
同じ属性の周助の力では傷つかなかったの。
って、ちょっと難しい話だったわね?」
「いえ。おじさんが『浄化導師』なんで、
なんとなくわかります」
「・・・そう。だから秀一郎君も浄化なのね」
「あの、ゆみこさん。しゅうとゆうたくんに
あってもいいですか?」
大石が心配そうに尋ねた。
「ええ、いいわよ。でも、裕太はまだ寝ているから、
起きてからでもいいかしら?」
「はい!」
返事をしてすぐ、大石は勢いよくベッドから飛び出した。






 一階にある客間を出て、三階にある周助の部屋に行く途中、 
大石と由美子は、二階にある裕太の部屋の前に
立っている周助に会った。
「あれ?しゅう?」
「あっ、しゅう、ねえさん」
「周助、裕太の様子見に来たの?」
「うん・・・・」
「しゅう、けがはだいじょうぶ?」
大石が周助に駆け寄って、心配そうに尋ねた。
「おとうさんがなおしてくれたから、ぼくはだいじょうぶだよ。
それよりしゅうはけがしてない?いたいとこない??」
「どこもいたくないし、けがもしてないよ」
「そっか。・・・・よかった」
大石の返事に、周助はとてもホッとしたようだった。
「しゅう、いっしょにおみまいしよ?」
そう言って大石は手を差し出した。
「うん」
周助は大石の手をとり頷くと、裕太の部屋のドアを開けた。



部屋に入ると裕太はベッドで眠っていた。
周助は大石と手を繋いだまま心配そうに裕太に近づき、
ベッド脇のいすにそっと腰掛けた。
穴が開くんじゃないかと思うほどに、
周助は一心に裕太を見ていた。
それを見た大石は、自分と繋がれたままの手に
違和感を感じて、丁寧に手を離した。

周助は無言で手を離した大石に驚いて大石を見たが、
微笑んで頷くと裕太の手を握った。

由美子も周助の後ろで心配そうに裕太を見つめていた。






しばらくそうしていたが・・・
「・・・・・見ていても、裕太が目覚めるわけじゃないし。
そろそろ部屋に戻って休みましょ?
周助だってまだ本調子じゃないんだから。ね?」
由美子が言いにくそうに周助にたずねた。
「・・・・・・・、うん。そうするよ」
周助は裕太が目覚めるまでそばにいたかったが、
優しい姉の心遣いを無下にすることもできず、
しぶしぶ手を離そうとした。


そのとき。
ぴく、と、
自分より小さな手が、確かに動いたのを感じた。


「・・・・っ、ゆうた?」


期待のこもったささやく様な声が、周助の口からこぼれた。
その声に慌てて大石と由美子が裕太を見ると、


裕太がゆっくりと目を開けた。


「ゆうた!」
周助の呼びかけに
「・・・しゅう、すけ?」
裕太はしっかりと答えた。


「お父さん呼んでくるわ!」
由美子は嬉しそうに裕太の部屋を出て行った。


「ゆうた、ごめんね。だいじょうぶ?どこもいたくない??」
大石に尋ねたのと同じように、周助は裕太にも尋ねる。
「??どうしてそんなこときくの?」
裕太は不思議そうに答えた。
「ゆうたくん・・・?」
その様子に大石は嫌な予感がした。




「ぼく、どうしておうちにいるの?」




「ゆうた?」
周助が心配そうに聞いた。


「だって、みずうみでゆきあそびしてたのに。
どうして?」




「おぼえて、ないの・・・・・?」
大石が絞り出すように言葉を発した。


「なにを?」
裕太はそれにきょとんとした顔で答えた。


一連の出来事を裕太が覚えていないのは、
この答えで決定したようなものだった。


大石はどうしたら良いのかわからず、
ただ、立ち尽くした。


不二君の病気の説明ばっかりで、
堅苦しい上に分かり辛くて申し訳ないです。
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