蝶々たち

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生贄

 少女はまだ骨になれないでいる。

(20041123。500文字の心臓イラスト超短編企画−○8△6×2−正選王受賞)

生贄

 少女はまだ絵の中にいる。

(20041123。500文字の心臓イラスト超短編企画−未投稿)

沈まない森

 森に愛された少女を海へと連れ出したときから、何かが変わってしまったのだ。大樹の洞で眠る少女は何も身に付けずに裸で。ドレスを着せてあげよう。髪を梳かしてあげよう。帽子をかぶせてあげよう。椅子に座らせてあげよう。だから私と一緒に来るのだと、返事ひとつしない少女の手を半ば無理矢理に引いた。賛同はしない、けれど抵抗もしない。ただ寒いとだけ言うので、上着とマフラーも与えてやったのだが、それでも寒いとしか言わなかった。
 少女は緑色の瞳をしていたのだが、海の上では閉じられたままだった。森に愛されることは、海には受け容れられないことだから、緑色の証拠を海に見せるわけにはいかない。
 それでもやがて海は異物に気付いてしまう。瞳を閉じていても少女の近くには自然と緑が集まってくるので。
 静かな戦いが始まる。海は少女を取り込もうとする。けれど少女は沈まない。もっと強い力で少女を取り込もうとする。けれど少女は沈まない。幾度となく繰り返される戦いに、少女以外のすべてが海の中になってしまうが、戦いは終わらない。

(20041123。500文字の心臓イラスト超短編企画−○2△1×0)

夢観る少女

 怒り狂う獅子の夢の中を、走り抜ける豹の夢の中を、飛び渡る燕の夢の中を、叫び荒れる烏の夢の中を、振り切れる蝉の夢の中を、閉じ篭る土龍の夢の中を、咲き乱れる桜の夢の中を、揺れ落ちる椿の夢を、枯れ果てる井戸の夢の中を、跳ね回る雨蛙の夢の中を、流れ泳ぐ鮎の夢の中を、吹きすさぶ風の夢の中を、覆い隠す夜の夢の中を、死に絶える人の夢の中を、
 一人の少女がすべてを覗く。少女だけが夢を見ない。

(20041123。500文字の心臓イラスト超短編企画−○0△1×1)

フレアスカート・トラップ

 踝まで隠れてしまう長いフレアスカートの少女が隙を見せたから、少年は思いっきりスカートをめくってやった。
 「きゃあ」なんて可愛い声が少年の耳に届いたけれど、それより気になったのはフレアスカートの中にいた小さな少女の方だった。
 フレアスカートの中の少女は少年を誘うように、また隙を見せている。少年はスカートをめくる。そこにまた少女がいる。

 ふわり、ふわり、ふわりの連鎖。

 ぞくりとする悪寒に振り返れば、暗黒色したカーテンが波打つだけ。視線を戻しても、そこに少女はもういない。

(20040518。SSFC感想御礼)



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