在日外資系企業の現役コントローラー氏から、外資系企業と転職について特別に原稿を頂戴致しました。原文のまま掲載します。
米国公認会計士の資格を取得して、外資系企業(特に、経理・財務部門)で働いてみたいと思われている方が多いと思われますが、そのような方々の為に、少しでも参考になればと思いまして、これまで、10年以上大小含めて数社の外資系企業の経理部 門で働いてきた経験を基にして、外資系企業について私の経験と考えをまとめてみました。勿論、下記の内容につきましては、異論・反論等あるかもしれませんが、多少なりとも読者各位の参考となれば幸いと思っております。
目次
ご存知のように、一口に外資系企業といっても、米国系、欧州系、アジア系等さまざまで、数人から数百人又は数千人と規模によっても会社環境は、かなり変わります。
やはり意外と多いタイプは、数人から数十人までの連絡事務所的な存在の会社で、設立後まだ10年以下の企業だと思われます。"外資系企業年鑑"等にも記載のないような会社。このような会社は、最初日本で登記される事もありますが、多くは法人税のかからない外国(例えば、米国ならばデラウェア州など)で設立され、本籍だけを残して、日本支社等の名称にて日本の現地法人を届出する。ですから、親会社とは別で、日本の現地法人の会社でありながら、本籍だけを外国に残し(名前だけ、無人)、その日本支社、支店等の名前で、実質的な組織を形成している企業も多いです。
なにせ、外国では、US$10ぐらいからの資本金で会社設立が可能であるため、このような企業も多いのです。実際株式会社(日本の商法には当てはまらない)ではありながら、○X○Xカンパニー(日本支社)や、△□△□インコーポレイテッド等の 名称の企業に、このような会社が多い様思われます。ほとんどの企業は、実際の売上を計上申告しておりますが、連絡事務所的な企業の場合、5%企業と云われるように、実際に発生した費用金額に5%を上乗せした金額を収益として計上して、5%だけの利益を毎月計上して、実際の会社の運営費は、親会社より送金してもらっているところもあります。
外資系企業の場合、一般的に日本の企業より自由であると云われておりますが、確かにどの外資系企業でも比較的日本企業よりは自由な雰囲気はあると思いますが、それは、各自が自立心を持って"すべき事をしている"事が前提に成り立っております。"すべき事をしている"ということは、当然といえば当然な事なのですが、やはり外資系企業の場合、より"結果"を重視される傾向があるためと思われます。外資系企業への転職に際し、採用する側は、まずその人の経験を買う訳であり(勿論経験だけではありませんが、教育をしている暇は無しというのが実状です)、仕事ができる経験が最も重要な要素のひとつである事は、間違いありません。採用された人は、過去の自分の経験を、新規の会社の状況に応じて生かしていくことが要求されます。外資系といっても、特に小人数の外資系企業の方が、その傾向が強いと思われます。小人数の方が、各自の役割の範囲が広く、責任が重くなるからです。特に経理関係の場合、求人内容が、ブックキーパーなのかアシスタントなのか、それともマネジャーかコントローラー、はたまたCFOなのかで、それぞれ求められるスキルがはっきりしておりますので、入社して要求された仕事が出来なければ、即アウトです。
但し、誰でもが直ぐに、いろいろな経験ができるとは限りませんので、与えられる仕事の範囲以外でも、自分のためだと思い積極的に、多少背伸びをしつつも、いろいろな仕事を取り込んでいく事は、大変重要な事だと思います。
やはり外資系企業へ入社したいと思っても、年齢と経験それに社会状況によって異なります。特に経験の全く無い新卒の場合は、タイミングです。特に経験を求められる経理関係の場合、経験の全く無い新卒は、どうすればいいのか? (誰でも始めから 経験がある訳ではないのだが……)。
ここで、ほんの一例にすぎないが、私の経験(外資系企業への入社のきっかけ)を紹介致します。英語が出来ないくせに英語を使う環境で仕事をしてみたいと思っていた私は、新卒時、海外か国内の外資系企業で働いてみたいと思っていたにもかかわらず、たまたま一番先に練習のつもりで受けた某国内企業から意外にも内定をもらい、いちおう一部上場の企業であったため、方針を変更して安にその会社(海外に支店等もあったため、もしかしたらいずれ行けるかもしれないという淡い期待を持ちつつ)に就職先を決めてしまいました。配属先は希望の部署とは異なり、いまいちやる気の出ない日々を過ごしておりました。がしかし、英語に関わる仕事がしたく、国際関係の部署へ移動を希望して、やっと認められて多少なりとも英語を使う仕事が出来る様になりました。しかしながら、自分は仕事がまだろくに出来ないくせに、会社の悪いところ(環境や将来性)ばかりが目に付くようになっていた生意気な若いその頃は、現状に満足できず、外資系で働いてみたいと思うようになりました。早速、2、3の人材紹介会社に登録をして、数社の面接を受ける事となりました。
その時感じた事は、自分が"いいな"と思った会社は、ダメで、"それ程でも"と思った会社は、OKの返事を貰ったりしたため、まさに、転職は結婚と同じようなもので、相性の問題だと思いました。自分の個性と経験が相手の企業が求めているものと合わなければ、いくら自分が希望しても、無理というものです。ただ実際に転職してその会社に入社してみると、"それ程でも"と思った会社が意外と良かったり、その逆の場合も(経験上)ありました。こればかりは、やはり入社してみないと分からないところがあります。
話が少しそれましたが、国内企業から最初の外資系企業への転職のきっかけは、国内企業の国際関係での経験をアピールして、それが認められた事でした。ただその仕事内容は、事務的なもので、全く経理とは関係なく、自分もそれまで経理の知識が全く無く"Debit", "Credit"の意味すら知りませんでした。そんな中で、その外資系企業が、取引先の会社とジョイントベンチャー(JV)で新会社を設立する事となり、経理を募集することとなりました。当初会社は、いろいろと求人を募集したそうですが、なかなか適当な人が見当たらず、どう云う訳か、経理の知識も経験も全くない私が、そのJVの経理を担当する事になりました。当初は、経理の学校に通いながら(経理の基礎の基礎より勉強)、その外資系企業の経理責任者の管理の元、テンポラリーとして雇った人材派遣の方と一緒にJVの経理をすることになりました。 これが私の経理の仕事をする最初のきっかけとなりました。
私の場合は極端な例かもしれませんが、とにかく外資系企業で働いてみたいと思う方は、自分がアピールできる範囲で企業を探して取敢えず入社してしまう。(始めから仕事内容にこだわらない。)そしてその会社の中で本当にやりたいと思う仕事へ移動していくというのも、ひとつの方法ではないでしょうか。元々経理のバッググランドがあり、それを元にして外資系企業へ入社できれば、それに越した事はありませんが。ただ、今これを読んでいる方々は、少なくても経理を勉強してそれを元にして仕事をしていきたいと思われている人が殆どだと思われますので、特に若い方であれば、多少の知識はあってもブックキーパーぐらいから始める気持ちで、誰かのアシスタントとして取敢えず小さめの外資系企業で働いてみることをお勧め致します。小さい企業の方が、経理としてやれる範囲が広く、その上司の仕事のやり方も学べるので、経理の仕事として伝票作成から財務諸表作成までひと通り学べます。ひと通り経理の仕事ができるようになれば、もうしめたものです。もうその会社ではあまり学ぶ事がないなあと感じたり、キャリアアップを図りたいと思った時には、今度は、正々堂々経理業務をひと通り出来ますと云えるのです。ハッキリ言って、経理業務はつぶしが効きます。金融関係や医療・建設業以外であれば、通常製造業等の会社で経理経験を積めば、殆ど業種を問いません。コンピューターであれ食品あれ、はたまた音楽業界であれ、基本的には、売るための商品があり、在庫があったりします。どの業界であれ、経理としてやる事はさほど変わりません。ただ始めに中規模以上の外資系企業に入社してしまうと、経理部門だけでも5,6人から2,3十人となります。そうすると、各自が担当する仕事内容は細分化され、ずっと長い期間売掛だけとか、小口現金だけとか、手形だけとかなってしまい、結局つぶしが効かなくなってしまいます。
ただ年齢が若ければ、特に5年10年と長期的に経理業務を経験していくことも大切だと思います。やはり他社でも通用するぐらいのキャリアを積むのにはそれなりに時間はかかりますので、焦らずに、ただ貪欲に何でも吸収しようとすることが大切です。
外資系企業への入社に際し、先ず受けなければならないのは面接です。面接といってもいろいろあり、私が経験したものでも、直接その企業のボス(外人)との面接や、本社の人との電話面接やテレビ会議システムによる面接等いろいろありました。
やはり外資系企業で一番面接で重要な事は、"何ができるか?"だと思います。その企業が求めているポジションの仕事内容が出来るのか?、経験があるのか?という事が、先ず始めに問われます。次にその人の個性がその会社に合うかということです。
経験を問われた時、多少のハッタリは必要な場合もあるかもしれませんが、やはり面接でいろいろ話しをしていると、採用する側の人は、この人は本当に仕事がやれるのかやれないのか見抜くものです。ですから面接を受ける人は、今までやってきた経験とやれる事、そしてその会社でやりたい事を最大限にアピール出来るよう自分の考えをまとめておくことが大切です。特に外人との面接にあまり自身の無い方は、有料で模擬面接やレジメの添削をしてくれる外国人や会社等もあります。面接に際しては、自分で出来る限りの準備をしてベストをつくして、後の結果は、相手の企業が決める事ですので、(OKの返事さえ貰えれば、最後に気に入らなければ、自分の方から断る事は、いくらでも出来ます)、取り合えず最善をつくす事です。
本題に戻りますが、外資系企業への入り方もこれまで書いたようにやはりいろいろあります。その会社が気に入れば職種にこだわらず、何でもいいから取敢えず入社してしまう。その後、希望の部署へ移動する。(出来るかどうかは保証の限りではないが)又は。職種(特に経理)にこだわるのであれば、多少回り道をして、経験の積めそうな会社に入り、経験と技術を磨いてから希望の会社、仕事へアップを図る事も可能です。それぞれどういう方法がベストなのかは、やはり自分の目標が何であり、それをいつまでに達成させるつもりなのかによると思います。あくまでも最後は自己判断で決めてください。
外資系企業の大小規模によるメリット・デメリットを一般的に下記にまとめてみまし た。
以上私の経験に基づく外資系企業の実情(これもほんの一例にすぎませんが)と私の考えが、ほんの少しでも読者のみなさんにお役に立てれば幸いと存じます。
特にここの読者は、経理の経験は無いが米国公認会計士の資格を生かして外資系企業へ入社、転職をしてみたいと思われている方が多いのではないでしょうか。
そんな中で、やはり経験してみないと解からない外資系企業の実情というものがあります。
転職については、外資系企業の入り方の始めの方に書いた"タイミング"がキーワードです。
一般的に転職回数が多い事は、歓迎されません。それでも外資系企業の場合、仕事の出来る方は、より良い環境(収入)を目指して2,3回の転職歴があるのは、普通です。
しかし現状の見極めや、キャリアアップも大切ですが、やはり忍耐も必要です。コツコツ努力していれば、自分から求めなくても相手から転職のいい話が舞い込むこともあります。
ただ、どうしても(特に中小規模の)外資系企業の場合、部門・会社そのもの閉鎖や、吸収合併等で、大きく職場環境が変わる事が多々あります。また転職に際しては、人との繋がりがとても重要ですし、いつでも自分の希望に合う求人会社があるとも限りません。これらすべて、巡り合わせ、タイミングの問題です。かといって何もしないのでは、良い巡り合わせも期待できません。やはりここで大切なのは、日々の努力と情報収集のアンテナを大きく広げ、目標をもって積極的に向かっていく姿勢だ
と思います。(自分への反省をこめて…)。最後に教訓じみた感じになってしまいましたが、ここの読者が、すこしでも自分の希望に近づければと思っております。
以 上
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