Bye-bye, long days 

 旅を続けて、時を重ねて、
 ヨーロッパのサマータイムにも慣れてきた。
 でも、得てしてそんな頃に旅は終わりを迎える。
 北欧に比べ低緯度に来たとはいえ、夏のヨーロッパの夕暮れは遅い。
 この日も気づけば21時、ようやく眩しい太陽の姿が雲の中に消えていく。
 さっき着いたと思っていたフェリーがイギリスへ向けて発つ。
 太陽が見えなくなったのをきっかけに、ひとりふたりと桟橋を後にする。
 やっぱり、夏のヨーロッパの1日は長かった、そう思えるのは
 1日の終わりだからなのだけでなく、これがこの旅の終わりでもあるから。
 次の日、また太陽と会うときには帰路についている。
 旅の終わり、このドーバーに沈む夕日を見て、ほんとに泣いた。
 旅の最後にこの街を選んでよかったと思う。
 無心にシャッターをきっていて、このカットを撮り終えたとき、
 カメラがフィルムを巻き上げ始めた。私も桟橋を後にした。
 この旅のラストショット、さよなら、夏の日。