メンテナンスのあれこれ 巷で噂される壊れるイタ車。その実像に迫ります



パンダは物の本に拠れば大変壊れない、手のかからないイタ車だという。
それはウソです。
トラブルをどの程度まで許容できるかは、その人の人格と慣れによりますが、
所詮は、イタリア人のためのクルマです。それを日本で使うとこうなるのです。

<オルタネータは鬼門>

パンダあたりのクラスをイタリアで使うのに、クーラーなんかないのが当然です。
地中海気候で温暖な彼の地で、わざわざ密閉した車内の気候を作り出すなんて
馬鹿げてます。
でも、日本で使うクルマで、今時冷房のないクルマ、探す方が難しいでしょう。
フェンダーミラーのクルマより少ない筈です。
な、訳で、パンダにもクーラーの設定があります。国産の素晴らしく冷えるクーラーです。
エンジンルームにはコンプレッサが当然、装着されます。
高圧、低圧の各ホ−スもまた然り。レシーバも、コンデンサもあります。
邪魔です。凄く。

このクルマのオルタネータは、エンジン向かって左。よく見える位置にあります。
でも、困った事に、ベルトが張れないのです。素人には。何故って、ピポットボルト
が3箇所もあるんです。パンダには。しかも、前述したように、あと付け無理矢理クーラー
のコンプレッサもあるので、非常に手の入りにくい仕組みになってます。
クランクプーリには、コンプ掛かる平ベルトが張ってあります。コンプはWプーリに
なっていて、その内側にオルタへのVベルトを掛けてあります。
ベルトテンションは、まず、一番奥のコンプで張ります。電磁クラッチが入ってるので、
それなりのトルクで張りましょう。その上の、見える所にオルタ本体があります。
オルタの張り調整用のボルトには回り止めのナマクラのナットがステイについてます。
ナマクラでも、ここはかなりのテンションがかかるところです。
しかし、目視はできません。工具と経験でトルクを測ることになります。
そして、一番上の良く見える所にピポットボルトが何故か2個、ついてます。
それは、このボルトの間にバールを通して、テコの原理でオルタベルトのテンションを
作れ、ということなのです。

以上で、作業は終了です。知ってれば。
ボクの場合、国産と同じつもりで、エンジンブロックとオルタ本体に直接バールを
あてて、テンションを取ろうとしました。ええ、もちろん、力いっぱい。
その結果、オルタは帰らぬ者となりました。軟いアルミボディのオルタは割れました。
見事に。知らなかったんです。こんな風にテンションを取るなんて。
仕方なく、中古のベアリング不良のオルタを知り合いからしこんで、ニコイチにしようと目論んでる
のですが、すっかり、ヘタレになってしまい、1ヵ月、観て観ぬ振りをしています。
つうか、壊す前に、ちょっと聞けば済んだのに。あーあ。

<アース、ってなんだ?>

通常、自動車の電気、プラスはオルタネータで発電して、そいつがバッテリーや
スタータモ−タ経由で各所に分配されて行きます。
戻るマイナス電気はボディを通ってバッテリーに帰ります。そう、自動車の電気は
直流なのです。
で、具体的には、バッテリーの側のエンジンブロック本体に通常、マイナスアースが
落としてある事が多いです。
ボディ直接だと、錆びや、塗色による導通不良を起こし易いからです。
パンダの場合、購入後半年であっさり導通不良になりました。
結果的に、不動です。しかも、ちゃんと出先でなりました。これも、後で聞いたら、
なんだ!で済んだのですが、当時は、きっちり、回送車を待ちましたね。
フィアットよ。頼むから、ボディアースくらいちゃんと、錆び、落としてよね。

<何でギアが360度回るの?>

友人のレビンとシグナルグランプリをしてた時のことです。絶対負けるに決まってるのに、
ロケットスタート(自称)を決め、電光石火で、2速に、と思ったら、ギアが抜けました。
後で聞いたら、シフトリンケージのブッシュが樹脂の押し込み式で、これが劣化すると、
あっさり、ギアが入らなくなってしまうらしいです。
先日も、電装やさんの店先で再発し、まとめて修理をお願いする羽目になりました。
しかも、割れたブッシュをディーラーに持っていくと、すんなり、”あ、シフトブッシュ
ですね”とのたまう。
つうか、フィアットよ。そんな重要な部分を怪しい樹脂で納めないで頂戴。
こっちの気候には、イタリアの樹脂部品は異常に弱いという事実、ご存知ですか?(笑)
怖いので、部品を一つ余計に手配し、予備部品で車載しておくことにしました。安価
だったし。
でも、その間に多分劣化して、いざ、の段にはきっと役にたたないのだろうな、と
その日が来るのを暗澹な気持で待っている次第です。



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