2003年現在、低周波の電磁場(電磁波)の健康影響に関してさまざまな報告などの動きがある。
今後も注目が必要な、最先端の研究のホームページを紹介したい。
●日本の国立環境研究所の疫学研究の報告は下記にある。
・「超低周波電磁波、小児の脳腫瘍に影響、3倍で発症危険性10倍」
(2003年6/7東京新聞)などの報道のもととなった報告書だ。
文部科学省・国立環境研究所の報告
http://www.chousei-seika.com/search/info/infonet.aspx
(「科学技術振興調整費成果報告書データベース」)
●国立環境研究所・「電磁界と健康に関する研究」
http://www.nies.go.jp/chiiki2/emf/elec_hp1/index.html
・上記研究の内容が解説されている。
●国立環境研究所ホームページ
http://www.nies.go.jp/index-j.html
●電磁界影響研究の中心となっているアメリカの研究報告(EMF RAPID)
http://www.niehs.nih.gov/emfrapid/home.htm
・ここから、2002年版の電磁場Q&Aなどがダウンロード(6MB)できる。
●WHOによる電磁場についての最新報告は、下記にある。
http://www.who.int/peh-emf/
・いまだにWHOの古い報告=「50G以下なら生物に影響はない」という
数字を持ち出す電力会社やマンション運営関連組織があるので、最新のデータを
見て欲しいものだ。
(注・じつはこの1987年のWHO報告でも50Gで安全とはいっておらず、
5〜50Gで小生物に影響がでたとしている。「低周波電磁波安全論者」も
きちんと原本を調べるべきだ)。
●日本の市民組織・ガウスネットでは、
さまざまな情報の公開とともに、磁界測定器、資料の販売も行っている。
http://www.gsn.jp/
いずれにしても健康影響が現時点で科学的に明確ではないとされても、
「慎重なる回避」の原則でより安全な環境のほうを選ぶことが、
子どもを持つ親の選択肢だと考えたほうがよいだろう。
今後の研究の進展、発表、報告の動向に注視しなければならない。
2000年 5月 2日 朝日新聞「携帯電話 電磁波障害本格調査へ」
2000年 5月14日 朝日新聞「携帯電話の電磁波 子供への影響否定はできず」
2000年 5月15日 朝日新聞「携帯の電磁波、法規制へ」
2000年11月28日 毎日新聞「英は警告を義務付け 携帯電話が健康に悪影響」
2001年 1月10日 毎日新聞「携帯電話の病院機器への影響。84センチ以内だと誤作動」
2001年 6月27日 フランス・リヨンで、国際ガン研究機関(IARC)が「超低周波電磁波に
よってヒトに対して発ガン性がある可能性がある」と全会一致で結論した。
2001年 8月 2日 朝日新聞「電動車いす事故が急増。携帯電磁波で誤作動。昨年一九人が死亡」
2001年10月 3日 WHOが超低周波とガンに関する「ファクト・シート」で「電磁波について
慎重なる回避の考え方を採用すべきだとの立場を公表。
2001年10月28日 朝日新聞3面「メラトニンのがん抑制作用 電磁波が機能障害」
2001年11月 6日 朝日新聞1面「東京タワー周辺に強電磁波」
2002年 1月 7日 毎日新聞12面「電磁波の健康影響を調査」
2002年 1月18日 毎日新聞「図書館でペースメーカーがリセット。盗難防止の電磁波原因」
2002年 6月 3日 朝日新聞夕刊1面「通勤電車に電磁波充満?」
2002年 8月24日 朝日新聞朝刊1面「電磁波 健康に影響」
2002年 8月25日 毎日新聞「電磁波が小児白血病誘発?」
国立環境研究所などによる全国疫学調査で、高圧送電線や電気製品からの
超低周波の電磁波が〇・四マイクロテスラ以上の環境で、小児白血病の発症率が
二倍以上になるという調査結果が出た。
2001年のWHOの発表を追認する形になった。
2003年 1月28日 朝日新聞「電磁波疫学調査きょう報告」
2003年 1月29日 朝日新聞「電磁波巡り国が調査 急性リンパ性の白血病も影響か」
2003年 2月6日 朝日新聞「電磁波の調査「症例少ない」文科省が評価結果」
文科省は国立環境研究所の疫学調査結果について1月28日付で「症例数が少なすぎる」
として「本研究のみで健康リスク評価を行うのは不適切」など。
WHOが進めるプロジェクトによって電磁波の健康影響は、低周波、高周波ともに
疫学的に解き明かされつつある。
ここに交絡因子の影響などを加味していくことで、メカニズムについても
今後、明らかになってくるのではないだろうか。
今後の日本での疫学調査をはじめ、WHOの研究などもバイアスのかからない形で、
公表されるように、見守っていく必要がある。
山崎智嘉 2002.Aug.30
日本のマスコミでは、日本経済新聞が「送電線電磁場:発がん、関係薄い。米環境衛生研“影響の可能性残る”」と報じ(6月16日夕刊)、朝日新聞が「電磁波とがん「関係薄い」米で報告書」と、33面あたりで報じた(東京版6月17日朝刊)くらいで、テレビ報道などもなく、異様に小さな扱いという印象だ。
読売新聞は、不思議なことに6月24日(夕刊)になって、ロイター電ということで、「がん発生の一因」と報じている。
このNIEHSの報告は、当初の5月発表予定から遅れに遅れていた。アメリカの電機産業業界の働きかけなど(NEMA:このあたりは、『週刊金曜日1999.7.9』の荻野晃也氏「ラピッド計画・最終報告書の正しい読み方」を参照されたい)で、発表間際までその内容が揺れていたことがうかがわれる。
その内容は、ようするに、「メカニズムを証明できないが、完全に安全と理解することもできない」というものだ。そして、今後も電気事業者は、電磁波の低減に努力するべきだし、電力線の建設には安全を確保すべき、家電製品からの電磁波の低減にも努力が継続されるべきだとしている。
つまり、「朝日新聞」が報じたように「関係が薄い」というより、「影響の可能性が残る」「がん発生の一因」という結論だ。
これは、アメリカ政府や業界、研究団体が約6500万ドル=約80億円近くかけて、27カ国が参加し、74の研究プロジェクトでおこなわれた徹底的リサーチ「EMF RAPID」の結論として、もっともっと重みを持って受けとめられるべきだろう。
荻野晃也氏が指摘しているように、このリポートは、業界から、つまり計画の資金の一部の出資者から、猛烈な影響を与えられながら難産の上で発表されたものだ。
そこに、科学者の良心によって「それでも地球は回っている」と結論されている、ということは、その背後にどれだけ大きなリスクが秘められているのかを感じとるべきだろう。
具体的には、非常に多くの疫学研究の結果では、慢性リンパ性白血病と小児白血病について、有意な(統計的、疫学的に意味を持つ)危険が増大している。これは「a fairly consistent pattern=非常に一貫したパターンで」「危険は小さいが被曝とともに増大している」というから、科学的にも確かなものといえるだろう。
それに対して、メカニズム的には、動物についての毒物学やがんの発生増加の研究などで、なにも、立証されずなんのあらわれもない。そこで、この最終報告では、べつの原因による可能性もあるが、まだわからないから注意が必要だ、としているわけだ。
問題なのは、まだ注意が必要、という結論に対して、「関係が薄い」と報じたり、無視している日本のマスコミの態度だろう。こういう傾向こそ、「注意が必要」なのだ。
こうした日本のマスコミの傾向に注意しながら、この問題はさらに追いかける必要があるようだ。
今後は、ようやく始まることになった、科学技術庁の電磁波の小児白血病や脳腫瘍についての疫学研究や日本の家電業界の対応などに焦点を当てていきたい。