F1テクノロジー 第5回 「シャーシ編」
99年11月21日更新

シャーシから発生するダウンフォース

【シャーシからダウンフォース】
 シャーシからも、ウィングと同様に、ダウンフォースが発生します。
 ウィングよりも、シャーシから得るダウンフォースの方が、各チーム、様々なアイディアがあって、面白い!

【どうやって?】
 シャーシも、ウィングと同じ方法で、ダウンフォースを発生します(第2回目その1より)。
 ウィング下面の空気の速度を上げてダウンフォースを得たように、シャーシ下面の空気の速度を上げます。

 では、どうやってシャーシ下面の空気の速度を上げるのか?
 シャーシを、ウィングと同じ形にするのです。

【ウィング・カー】

 シャーシをウィングと同じ形にする。これをウィング・カーと言います。
 ウィングカーは、ダウンフォースを得るために、かなりの効果がありました。コーナリング速度も上がり、ラップタイムも格段に早くなりました。

 また、最初にこれを取り入れたのは、ロータスだったと思いますが、後に各マシンとも、ウィングカーを真似たため、一躍、当時のマシントレンドになりました。
 あまりにも上昇するコーナリング速度に、安全性され、現在ではウィング・カーは禁止です。

【フラット・ボトム】

 ウィング・カー廃止により、「シャーシ下面は平面でなければならない」と言うルールが成立。これを「フラット・ボトム」といいます。

 ただし、マシン下面の全てが平らである必要はなく、「フロントタイヤ後」〜「リアタイヤ前」までの間が平面であればいいのです。

【新しいアイデア】

 エンジニアは、それでもシャーシからダウンフォースを得るように考えました。
 フラットボトムでも「シャーシ下面の空気の速度を上げる」ためにどうすればいいか?
 そこで考えたのが、以下の2つです。

●アイデア1: 『シャーシの後方から、たくさんの空気を抜き出す』
 たくさんの空気が、後方から抜けると言う事は、シャーシ下面のフラットボトムにおける空気が、どんどん流れる。その結果、フラットボトムの空気の速度が上がるわけです。
 このアイデアを実現化したパーツを『ディフューザー』と言います(上図、アンダーパネル後方を、斜めに跳ね上げている部分)。

●アイデア2: 『シャーシ前方からたくさんの空気を入れる』
 空気を、後方から出すだけでなく、前方からも積極的に空気を取り入れてあげます。
 つまり、前方からたくさん入ってきた空気を、後方からたくさん抜き出す。
 このアイデアを取り入れたのが、持ち上げ式のフロントノーズ(上図参照)であります。

【まとめると...、】
 シャーシの前から大量の空気を入れて、シャーシの後ろから大量の空気を抜き出す!
 その結果、シャーシ下面(フラットボトム)の空気の流れが速くなります(空気が疎の状態)。

 これはいわゆる、ウィングと同じ現象となり、ウィングと同様にダウンフォースが発生するのです。

【実生活の例で言うと...】
 夏、部屋の中が暑くて風を取り入れたい場合。
 部屋の窓を開けただけでは、なかなか風が入ってきません。
 そこで、窓だけじゃなく玄関も開けてやると、部屋の中にうまく風が入ってきます。窓から玄関、または玄関から窓へと、風が通り抜ける事が出来るからです。
 つまり、空気を入れる、そして空気の出口をきちんと整えれば、空気が流れるわけです。

【ウィングよりシャーシ!】
 シャーシはF1マシンの中心で、エンジン、コクピット等が含まれた、絶対不可欠なモノ(絶対に省略できない)。
 逆にウィングは、ダウンフォースを得るためだけに存在する、どちらかと言えば、オプション部品なようなもの。
 必要不可欠なシャーシで、充分なダウンフォースを稼ぐ事ができるなら、ウィングは必要ない、またはウィングのサイズを最小限にできるのです。

【様々なデザイン、アイデア】
 と言うわけで各チーム、シャーシから発生するダウンフォースより大きくしようと、いろいろと考えてくるわけです。そして、シャーシのデザインが変わり、マシンに個性が出てくるわけです。
 シャーシの内部には、必ずにコクピット、エンジン、ラジエター、サスペンション等があります。これらを、シャーシ内部で効率的に配置して、シャーシの外側の空力デザインで、いかにダウンフォースを最大限に引き出すか?
 この辺が、F1デザイナー(設計者)の腕の見せどころであります。

次回は、上記のアイデア1とアイデア2について、詳しく紹介します。

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