鉄郎の母 「機械の体だったら寒さななんか気にしなくていいのにね」
鉄郎 「機械の体だったら、とっても長生きできるんだね」 鉄郎の母 「そう、部品さえ気をつけて交換を続ければ永遠に生きられる」 鉄郎 「永遠に?」 鉄郎の母 「お父さんさえ生きていれば、お前にだって機械の体を買ってあげられたのに」 鉄郎 「僕たちもメガロポリスへ行って、999に乗らなきゃ!」 鉄郎の母 「でも、乗車券を買うには、お金がたくさんいるのよ!」 鉄郎 「わかっているよ! 僕が働くからさ! じゃんじゃん稼いで999に乗って、 そして、機械の体をタダでくれるって星へ行くんだ!」 鉄郎の母 「ずいぶん、はりきっているのね」 鉄郎 「僕の夢はでっかいんだ! さぁ〜、いそごうよ!」 鉄郎の母 「・・・」 鉄郎 「???」 鉄郎の母 「伏せて、鉄郎! 人間狩りよ!!!」 鉄郎 「えっ!?」 (鉄郎の母、撃たれる!) 鉄郎 「お母さん!」
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メーテル 「どうしても999に乗りたかった?」
鉄郎 「ああ! 俺は、機械の体を手に入れたいんだ!」 メーテル 「機械の体になって、どうするの?」 鉄郎 「機械伯爵を殺すのさ!」 メーテル 「私がパスをあげましょうか?」
鉄郎 「999のパスをくれるって言ったな。
メーテル 「(パスを差し出して)はい!」 メーテル 「星野鉄郎。男らしい名前ね」
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メーテル 「二度と帰らない乗客のためには、こんな大昔の型の列車じゃないとダメなの」
鉄郎 「俺は機械の体をもらって必ず帰ってくるさ!」 メーテル (男の子が、若者が、一生に一度は迎える旅立ちの日が来たのね。
鉄郎 (とうとう俺は行くんだね。とうとう、俺は!俺は!) メーテル 「今のうちによく見ておくがいいわ。
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車掌 「え〜、次の停車駅はタイターン、タイターン! 停車時間は、地球時間で16日」
鉄郎 「じゅうろくんち! 16日も停車してんのか!」 メーテル 「ええ」 車掌 「タイターンは土星の衛星の一つでして、太陽系の惑星の月の中では二番目に大きな月でございます。 自転周期は16日」 メーテル 「各駅での停車時間は、その星の1日と決められているの。 だから1日が10時間の星もあれば、50時間の星も・・・」 車掌 「あるわけです! はい! つまり自転の速度が違うものでありますから・・・」 メーテル 「停車中は、その星を自由に見物できるから退屈しないわ。 でもね、発車時間に間に合わず乗り遅れたら、その時は死ぬことになるわよ!」 鉄郎 「死ぬぅ???」 車掌 「置いてけぼりにされてしまうわけです、はい!」 鉄郎 「ずいぶん厳しいんだな」 車掌 「銀河鉄道は、規則を守るのが取り柄でして! うふははははははぁははっ!!」 |
アンタレス 「おい、坊主、きさま、その戦士の銃をどこで手に入れた?」
鉄郎 「戦士の銃?」 アンタレス 「機械人間を倒せるただ一つのコスモガンさ!」 鉄郎 「機械人間を倒せるコスモガン?? これが!」 アンタレス 「一体どこで手に入れたんだ!」 鉄郎 「どこでだっていいだろう! それよりメーテルを返せ!」 子分 「やい、坊主! 口の利き方に気を付けろい! その名を聞けば泣く子も黙るブドウ谷の戦士アンタレス様だ! よく覚えとくんだ!」 鉄郎 「坊主坊主って言うない! 俺にも星野鉄郎って名前があらぁ!」 アンタレス 「メーテルって言ったなぁ。おめぇ惚れてるのか?」 鉄郎 「そんなんじゃないよ! おれは、あの人を守るために999に乗せてもらったんだ!」 アンタレス 「999だと? きさまもやっぱり機械の体になりたいのか?」 鉄郎 「機械伯爵を倒すためさ!」 アンタレス 「むん?」 (鉄郎、アンタレス一味につかまる) アンタレス 「ここはこいつらの家さ。子供達の天国」
アンタレス 「これだけは教えてやろう!
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鉄郎 「ありがとう、この銃のお陰で助かりました」
トチロー母 「その銃は、これから先、お前さんには必要だろう、持ってお行き」 鉄郎 「これは戦士の銃だと聞きました。 お婆さんの大切な物なんでしょう?」 トチロー母 「お前さんにあげるよ」 鉄郎 「ほんとに?」 トチロー母 「それはね、私のたった一人の息子の物なんだよ。 その銃も、その帽子も何度も死線を越え、危険をくぐり抜けてきた物なのさ。 そしてね、息子はそれを置いたまま、行っちまったよ。 お前さんも、いつか時が来たら、お父さんやお母さんのところにお帰り。 死ぬまでは一度はね」 鉄郎 「あなたの息子さん、なんて言う名前なんですか?」 トチロー母 「名前は、私の作ったそれと同じ帽子をかぶっているよ。 宇宙のどこかで会ったら・・・」 鉄郎 「会ったら、その時はお母さんが待ってるって、必ず伝えます」 トチロー母 「でも、私にはわかっているんだよ。 あの子は二度と生きてうちに帰ってくることはないってね。 それでも行くなとは言えないんだよ。 わかっているのにね。母親なのにね。 男の子だもんね、息子は。 男の子を産んだんだからしかたがないよね」 |
エメラルダス 「私の船を撃ったのは誰? 誰もいないとは言わせません。出てきなさい!」
鉄郎 「俺が撃った!」 エメラルダス 「お前に? 賞金稼ぎか?」 鉄郎 (首を横に振る) エメラルダス 「私に銃を向けた男で、生き延びた者はいない!」 (鉄郎、エメラルダスに撃たれ、銃をはじかれる) エメラルダス 「命を粗末にする愚か者。まだ子供ですね。
メーテル 「エメラルダス、鉄郎はあなたに聞きたいことがあるのよ」
エメラルダス 「鉄郎・・・でしたね。たった一つの限りある命を大切にしなさい」
メーテル 「エメラルダスは、鉄郎のその銃と帽子の持ち主を捜しているのよ。」
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酒場の爺さん 「若いの! 初めて見る顔じゃな。」
鉄郎 「どうしてみんな泣いてるんです?」 酒場の爺さん 「歌のせいじゃよ。 遠い昔、もう帰らない若い頃を思い出すんじゃ。 旅路の果てに行き着いた者達にはやるせなく聞こえてくるのじゃよ。」 酒場の爺さん 「ところで、何にする?」 鉄郎 「あっ! ミルク」 酒場の男ども 「がははははっ! ミルクだってよぉ!」 おの坊主、乳離れしてねぇぜ! ママのおっぱいが恋しいのにちげぇねぇぜ!」 酒場の爺さん 「ワシにも一杯ごちそうしてくれんか、ミルク」 鉄郎 「オヤジさんは、この星のことは詳しそうだね」
(鉄郎、爺さんに店の裏に連れて行かれる) 酒場の爺さん 「機械伯爵に何の用があるんじゃ!」
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鉄郎 「はっ、あっ??」
トチロー 「あ??」 トチローのは母の言葉(名前は・・・、私の作ったそれと同じ帽子をかぶっているよ) 鉄郎 「あなたは!」
鉄郎 「教えてください、機械伯爵はいつやって来るんですか?」
鉄郎 「しっかり、しっかりして下さい!」
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鉄郎 「俺の銃を返せ!」
機械人間 「ここにあるぜ!」 (機械人間、鉄郎を殴る!) 鉄郎 「返せ! 俺の・・・」 (その時、ある人物が現れ鉄郎を助ける) 機械人間 「助けてくれ!」
鉄郎 「どうして、僕を助けてくれたんですか?」
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謎の男 「だから言ったろ、撃たれる前に撃てって!」
鉄郎 「アンタレス!」 謎の男(アンタレス) 「加勢に来たぜ!」 (銃撃戦が続く) アンタレス 「は、離れてろ! 俺の体には不発弾がぎっしり詰まっているんだ!」
アンタレス 「鉄郎ぉー! メーテルには、メーテルには気を許すな!」 (アンタレス、爆破!) 鉄郎 「うわわわぁ〜!」 鉄郎 (機械伯爵を撃ち倒す) |
ハーロック 「これで、お前の復讐も終わったわけだな、鉄郎。」
鉄郎 「キャプテン・ハーロック、それは違います。」 ハーロック 「うん?」 鉄郎 「機械伯爵や、機械化人を見ていると、永遠に生きることだけが幸せじゃない。 限りある命だから、人は精一杯がんばるし、 思いやりや優しさがそこに生まれるんだと、そう気が付いたんです。 機械の体なんて、宇宙から全部なくなってしまえと。 僕たちはこの体を、永遠に生きていけるからという理由だけで、 機械の体になんかしてはいけないんだと気が付いたんです。 だから僕は、アンドロメダの機械の体をタダでくれるという星へ行って、 その星を破壊してしまいたいのです。」 |
鉄郎 「あのぉ〜、メーテル、このたびが終わって、地球に戻ったら、どうするんだい?」
メーテル 「わからないわ、どうして?」 鉄郎 「・・・。 ・・・。 君さえよかったら・・・! 一緒に暮らして欲しいんだ!」 メーテル (鉄郎はいつか気が付く。
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車掌 「長らくのご乗車、ありがとうございました。
間もなく、終着駅、『メーテル』、『惑星メーテル』、機械化母星『メーテル』でございます。」 |
アナウンス 「メーテル、終着駅メーテル、惑星メーテル、機械化母星メーテル」
鉄郎 「?! なぜだ! なぜ君と同じ名前なんだ、何故だ!」 機械人 「お帰りなさい、メーテル様。よくご無事で。
(鉄郎がメーテルを殴る!) |
機械人 「女王プロメシューム様、部品ナンバー 8・9・9・8・9・8・2、人間名、星野鉄郎、参りました。」
プロメシューム 「ご苦労であった。」 鉄郎 「俺は絶対に、機械の部品になんか、ならないぞ!」 プロメシューム 「この少年の適性は?」 機械医者 「中央ブロックのネジがよいかと思われます。」 プロメシューム 「理由は?」 機械医者 「意志が強く、そうとうのショックを受けても、折れたり抜けたりしない男と思われます。」 鉄郎 「?! ネジにするのか? 俺を!」 プロメシューム 「そう、心を持った生きたネジ。惑星を支える生きた部品。」 鉄郎 「離せ! 離せよ、離せったら、このヤロウ! ネジなんかにされてたまるかよ! 離せったら、いてぇな、離せよ! このヤロウ、やめろよ! やめろ! 化け物ども。お前らの言いなりなってたまるかよ! 離せぇ!」 (メーテルが走って、やって来る) 鉄郎 「何しに来た、俺の間抜け様を笑いにか!」
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ハーロック 「男なら、危険をかえりみず、
死ぬと分かっていても戦わなくてはならない時がある。 負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある。 鉄郎はそれを知っていた。 いいか、鉄郎にかすり傷一つつけるな! 無事に地球に帰すのだ!」 エメラルダス 「トチロー?!」
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鉄郎 「(メーテルの手をとって)暖かいな。メーテルが機械なんて。」
メーテル 「私の体は、鉄郎のお母さんの体。 私は、鉄郎のお母さんの若い時の姿の生き写し。 私は人の姿をした影。 こうやって、もらった体も年をとれば、 また一つ別の体を移し替えて、果てしない時間の中を旅してきたのよ。」 |
鉄郎 「うわっ!」
(プロメシュームが鉄郎の首を絞める) メーテル 「お母様!」
(クレアがプロメシュームを締め付ける) プロメシューム 「は、何をする。離しなさい!」
(クレアの体が砕け散る。プロメシュームの最期) メーテル 「あなたを守って、砕け散ったクレアさんの体。」
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ハーロック 「鉄郎、いつかまた、星の海のどこかで会おう。」 |
鉄郎 「どうしても行くのか?」
メーテル 「私は時の流れの中を旅してきた女。でも昔の体に戻るために・・・」 鉄郎 「じゃ、やっぱり冥王星へ・・・。 俺、待ってるよ。もう会えないのか?」 メーテル 「(うなずく) いつか私が帰ってきて、あなたの側にいても、あなたは私に気が付かないでしょうね。」 (メーテルが鉄郎にキスをする) メーテル 「私は、あなたの想い出の中にだけいる女。
(メーテル、999に乗ってドアが閉まる。999が動き出す)
鉄郎 「メェーテルゥ〜」
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