〜 オープニング 〜

人はみな 星の海を見ながら旅に出る。
想いえがいた希望を追い求めて、
果てしなく旅は長く、
人はやがて、夢を追い求める旅のうちに永遠の眠りにつく。

人は死に、人は生まれる。
終わることのない流れの中を列車は走る。
終わることのないレールの上を、夢と希望と野心と若さを乗せて列車は今日も走る。

そして今、汽笛が新しい若者の旅達を告げる。


〜 少年時代 〜

鉄郎の母 「機械の体だったら寒さななんか気にしなくていいのにね」
鉄郎   「機械の体だったら、とっても長生きできるんだね」
鉄郎の母 「そう、部品さえ気をつけて交換を続ければ永遠に生きられる」
鉄郎   「永遠に?」
鉄郎の母 「お父さんさえ生きていれば、お前にだって機械の体を買ってあげられたのに」
鉄郎   「僕たちもメガロポリスへ行って、999に乗らなきゃ!」
鉄郎の母 「でも、乗車券を買うには、お金がたくさんいるのよ!」
鉄郎   「わかっているよ!
       僕が働くからさ! じゃんじゃん稼いで999に乗って、
       そして、機械の体をタダでくれるって星へ行くんだ!」
鉄郎の母 「ずいぶん、はりきっているのね」
鉄郎   「僕の夢はでっかいんだ! さぁ〜、いそごうよ!」
鉄郎の母 「・・・」
鉄郎   「???」
鉄郎の母 「伏せて、鉄郎! 人間狩りよ!!!」
鉄郎   「えっ!?」

(鉄郎の母、撃たれる!)

鉄郎   「お母さん!」
鉄郎の母 「機械人は、ときどき人間狩りを楽しむのよ」
鉄郎   「人間狩り??」
鉄郎の母 「ここは、機械伯爵の領地、主力よ!
       だから人間は殺されるための獲物なの」

鉄郎   「しっかり、しっかりするんだ、お母さん!」
鉄郎の母 「お母さんは、もう駄目。さぁ、はやく逃げて」
鉄郎の母 「これからは鉄郎ひとりよ。
       でもお母さんは信じている。
       鉄郎は強い子だもんね。
       きっとがんばって機械の体に・・・」

鉄郎   「おかぁ〜さぁ〜ん!」


〜 宇宙ステーション 〜

メーテル 「どうしても999に乗りたかった?」
鉄郎   「ああ! 俺は、機械の体を手に入れたいんだ!」
メーテル 「機械の体になって、どうするの?」
鉄郎   「機械伯爵を殺すのさ!」

メーテル 「私がパスをあげましょうか?」
鉄郎   「?!」

鉄郎   「999のパスをくれるって言ったな。
       俺をからかってんのじゃないだろうね?」
メーテル 「機械の体になって、機械伯爵と戦うために999に乗りたいの?」
鉄郎   「君は、キャプテン・ハーロックやエメラルダスのこと知っているだろ?
       ハーロックやエメラルダスのように自由な海に出たいのさ!
       機械の体になって、永遠に生きて、永遠に星の海を旅したい!
       それが男ってもんだろ!」
メーテル 「ハーロック、エメラルダス・・・、 あなた達、若者の憧れね」

メーテル 「(パスを差し出して)はい!」
鉄郎   「あっ?」
メーテル 「本物よ」
鉄郎   「え、ほんとにもらってもいいのかい?」
メーテル 「条件があるの」
鉄郎   「条件??」
メーテル 「あなたはアンドロメダの機械をタダでくれるという星へ行く。
       私を一緒に連れてってるなら、パスをあげるわ。
       それが私の条件よ」

鉄郎   「あ、そうか。女の一人旅は物騒だもんね」
メーテル 「じゃ、連れてってくれるのね」
鉄郎   「ああ!」
メーテル 「よかった!
       じゃ、ここにあなたの名前を書き入れるのよ。
       そうすれば、パスはあなたのものになるわ」

メーテル 「星野鉄郎。男らしい名前ね」
鉄郎   「うん! 父さんがつけたんだ。
   これで999に乗れるのか! これで!」
鉄郎   (例え、メーテルが魔女や死神だって何だっていいや!
       999に乗って機械の体をくれる星に行けるなら、それでいい!)


〜 999に乗車、そして旅立ち 〜

メーテル 「二度と帰らない乗客のためには、こんな大昔の型の列車じゃないとダメなの」
鉄郎   「俺は機械の体をもらって必ず帰ってくるさ!」

メーテル (男の子が、若者が、一生に一度は迎える旅立ちの日が来たのね。
       負けることなど考えてもみない。
       そして、生涯忘れることの出来ない旅立ちね。
       鉄郎、あなたの旅は今、始まったのよ)

鉄郎   (とうとう俺は行くんだね。とうとう、俺は!俺は!)

メーテル 「今のうちによく見ておくがいいわ。
       今度見るときは機械の目でしか見ることが出来ないから」

鉄郎   「もういいよ、見なくても」
メーテル 「辛かったことも、いつか懐かしくなる時があるわ。見ておけば良かったと思うときが・・・」
鉄郎   「そんなの年とってから後悔すればいいさ!
      (今の俺は機械の体が欲しいだけさ! 機械の体が・・・)


〜 車掌さん 〜

車掌   「え〜、次の停車駅はタイターン、タイターン! 停車時間は、地球時間で16日」
鉄郎   「じゅうろくんち! 16日も停車してんのか!」
メーテル 「ええ」
車掌   「タイターンは土星の衛星の一つでして、太陽系の惑星の月の中では二番目に大きな月でございます。
       自転周期は16日」

メーテル 「各駅での停車時間は、その星の1日と決められているの。
       だから1日が10時間の星もあれば、50時間の星も・・・」

車掌    「あるわけです! はい! つまり自転の速度が違うものでありますから・・・」
メーテル 「停車中は、その星を自由に見物できるから退屈しないわ。
       でもね、発車時間に間に合わず乗り遅れたら、その時は死ぬことになるわよ!」

鉄郎   「死ぬぅ???」
車掌    「置いてけぼりにされてしまうわけです、はい!」
鉄郎   「ずいぶん厳しいんだな」
車掌   「銀河鉄道は、規則を守るのが取り柄でして! うふははははははぁははっ!!」

〜 タイタン  アンタレス 〜

アンタレス 「おい、坊主、きさま、その戦士の銃をどこで手に入れた?」
鉄郎   「戦士の銃?」
アンタレス 「機械人間を倒せるただ一つのコスモガンさ!」
鉄郎   「機械人間を倒せるコスモガン?? これが!」
アンタレス 「一体どこで手に入れたんだ!」
鉄郎   「どこでだっていいだろう! それよりメーテルを返せ!」
子分   「やい、坊主! 口の利き方に気を付けろい!
       その名を聞けば泣く子も黙るブドウ谷の戦士アンタレス様だ! よく覚えとくんだ!」

鉄郎   「坊主坊主って言うない! 俺にも星野鉄郎って名前があらぁ!」
アンタレス 「メーテルって言ったなぁ。おめぇ惚れてるのか?」
鉄郎   「そんなんじゃないよ!
       おれは、あの人を守るために999に乗せてもらったんだ!」
アンタレス 「999だと?
        きさまもやっぱり機械の体になりたいのか?」

鉄郎   「機械伯爵を倒すためさ!」
アンタレス 「むん?」

(鉄郎、アンタレス一味につかまる)

アンタレス 「ここはこいつらの家さ。子供達の天国」
鉄郎   「子供達の天国! この子供達は??」
アンタレス 「孤児達よ」
鉄郎   「みなしご?」
アンタレス 「そう! おめえの様に親を機械伯爵に殺されたなぁ。
        機械伯爵の居所を知っているか?」

鉄郎   「時間城だってことだけは・・・」
アンタレス 「時間城のある星は誰にもわからん。
        しかし、一人だけ知っているヤツがいるってこった」

鉄郎   「誰ですそれは!」
アンタレス 「女海賊エメラルダス!」
鉄郎   「エメラルダス?!」

アンタレス 「これだけは教えてやろう!
        機械伯爵に会ったら、いいか! 撃たれる前に撃て!
        相手が涙を流して、許しを請うても、容赦なく撃て!
        たじろいだり、ひるんだりしたらお前の負けだ!
        それが宇宙で生き延びる唯一の道だ!」


〜 お婆さん 〜

鉄郎   「ありがとう、この銃のお陰で助かりました」
トチロー母 「その銃は、これから先、お前さんには必要だろう、持ってお行き」
鉄郎   「これは戦士の銃だと聞きました。 お婆さんの大切な物なんでしょう?」
トチロー母 「お前さんにあげるよ」
鉄郎   「ほんとに?」
トチロー母 「それはね、私のたった一人の息子の物なんだよ。
        その銃も、その帽子も何度も死線を越え、危険をくぐり抜けてきた物なのさ。
        そしてね、息子はそれを置いたまま、行っちまったよ。
        お前さんも、いつか時が来たら、お父さんやお母さんのところにお帰り。
        死ぬまでは一度はね」

鉄郎   「あなたの息子さん、なんて言う名前なんですか?」
トチロー母 「名前は、私の作ったそれと同じ帽子をかぶっているよ。
        宇宙のどこかで会ったら・・・」

鉄郎   「会ったら、その時はお母さんが待ってるって、必ず伝えます」
トチロー母 「でも、私にはわかっているんだよ。
        あの子は二度と生きてうちに帰ってくることはないってね。
        それでも行くなとは言えないんだよ。
        わかっているのにね。母親なのにね。
        男の子だもんね、息子は。
        男の子を産んだんだからしかたがないよね」

〜 エメラルダス 〜

エメラルダス 「私の船を撃ったのは誰? 誰もいないとは言わせません。出てきなさい!」
鉄郎   「俺が撃った!」
エメラルダス 「お前に? 賞金稼ぎか?」
鉄郎   (首を横に振る)
エメラルダス 「私に銃を向けた男で、生き延びた者はいない!」

  (鉄郎、エメラルダスに撃たれ、銃をはじかれる)

エメラルダス 「命を粗末にする愚か者。まだ子供ですね。
         (はっ!!)
         この銃をどこで手に入れました!」

鉄郎   「タイタンでお婆さんにもらった。帽子と一緒に」
メーテル 「この帽子よ」
エメラルダス 「メーテル!」
鉄郎   「えっ??」
エメラルダス 「この銃とその帽子を持った人は、どこに行ったか聞かなかったの?」
鉄郎・メーテル   (首を横に振る)

メーテル 「エメラルダス、鉄郎はあなたに聞きたいことがあるのよ」
エメラルダス 「私に?」
鉄郎   「あなたが知っていると教えられたんだ。
       機械伯爵のいる時間城の場所を!」
エメラルダス 「機械伯爵!」
メーテル 「知っていたら鉄郎に教えてあげて!」
エメラルダス 「聞いてどうするの?
         あなた(鉄郎)が殺そうというの? 機械伯爵を! 本気ね!」

メーテル 「知っていたら教えてあげて、エメラルダス」
エメラルダス 「教えてもいいの? 本当に。教えてもいいのね!
         機械伯爵の時間城は・・・、
         コレクションを仲間に披露するために『トレーダー分岐点』にやってくるわ!」

エメラルダス 「鉄郎・・・でしたね。たった一つの限りある命を大切にしなさい」
鉄郎   「エメラルダス! ありがとう!」

メーテル 「エメラルダスは、鉄郎のその銃と帽子の持ち主を捜しているのよ。」
鉄郎   「じゃあ、お婆さんの息子って言うのは・・・」
メーテル 「エメラルダスが身も心も、命まで捧げた最愛の人」


〜 トレーダー分岐点 〜

トレーダー分岐点。
それはあらゆる空間軌道が一点に集まる宇宙の大分岐点。
旅する者が一度は必ず通りすぎるところ。
自由と無法の渦巻く大フロンティア。
多くの男達が夢を抱いてこの星に来て、
ある者はこの星の土となり、
ある者はその夢を抱いたまま見知らぬ宇宙の果てへ旅立って行くところ。
そこは、惑星ヘビーメルダーにある。

〜 酒場 爺さん 〜

酒場の爺さん 「若いの! 初めて見る顔じゃな。」
鉄郎   「どうしてみんな泣いてるんです?」
酒場の爺さん 「歌のせいじゃよ。
         遠い昔、もう帰らない若い頃を思い出すんじゃ。
         旅路の果てに行き着いた者達にはやるせなく聞こえてくるのじゃよ。」

酒場の爺さん 「ところで、何にする?」
鉄郎   「あっ! ミルク」
酒場の男ども 「がははははっ! ミルクだってよぉ!」
         おの坊主、乳離れしてねぇぜ! ママのおっぱいが恋しいのにちげぇねぇぜ!」

酒場の爺さん 「ワシにも一杯ごちそうしてくれんか、ミルク」

鉄郎   「オヤジさんは、この星のことは詳しそうだね」
酒場の爺さん 「うん、この星の生き字引と言われとる」
鉄郎   「じゃあ知っていますか? 機械伯爵がこの星へ来るか?!!!」

  (鉄郎、爺さんに店の裏に連れて行かれる)

酒場の爺さん 「機械伯爵に何の用があるんじゃ!」
鉄郎   「殺す!」
酒場の爺さん 「バカもん! お前なんか歯の立つ相手じゃない!」
鉄郎   「そんなのやってみなきゃ、わからないでしょ!
       俺は母さんを機械伯爵に殺されたんだい!
       いや、俺だけじゃない!
       ヤツの人間狩りで両親を殺された子供達が大勢いる!
       そんな子供達のためにもどうしても・・・・!」
酒場の爺さん 「わかった! ガンフロティア山まで行ってみな!」
鉄郎   「ガンフロティア山?」
酒場の爺さん 「こっから南へ10キロほど行った、その麓に一風変わった男がいる。
         機械伯爵の動きは、その男が詳しく知っているはずだ」


〜 トチローとの出会い 〜

鉄郎   「はっ、あっ??」
トチロー 「あ??」

トチローのは母の言葉(名前は・・・、私の作ったそれと同じ帽子をかぶっているよ)

鉄郎   「あなたは!」
トチロー 「どうしたんだ? その帽子は?」
鉄郎   「あなたのお母さんからもらったんです」
トチロー 「お袋に、お前は会ったのか?」
鉄郎   「危ないところを、助けてもらったんです。
       (戦士の銃を見せながら)
       そして、これを・・・」
トチロー 「元気だったか、お袋は?」
鉄郎   「あなたに、会いたがっていました」
トチロー 「家を出るとき、別れは言ってあるさ。
       まぁ、入れよ。オレに用があって来たんだろう?」

鉄郎   「教えてください、機械伯爵はいつやって来るんですか?」
トチロー 「お前も俺と同じ事を考えているんだな」
鉄郎   「あなたと?」
トチロー 「そうだ!
       かつては血の通った温かい心を持った人間だったはずなのに、
       機械の体になったとたん、人間に危害を加えるようになった。
       あいつの残酷さを俺は許せなくって・・・、ごっほっ!
       ごっほっ、ごっほっ! もう駄目だ・・・」

鉄郎   「ダメ? どうしてですか? どうしてダメなんですか?」
トチロー 「長年の放浪生活で宇宙病にやられてしまったよ・・・」
鉄郎   「えっ?」
トチロー 「気にするな。俺は死なんよ、まだ死んでたまるか。」
鉄郎   「そうですよ! エメラルダスさんもあなたを捜していました!」
トチロー 「?!、 エメラルダスに会ったのか?」
鉄郎   「ええ、時間城のことを教えてもらったんです。」
トチロー 「げっほっげっほっ、やつは今夜、真夜中にガンフロティア山の峰の向こうにやって来る」
鉄郎   「ガンフロティア山の峰?」
トチロー 「くたばる前に、機械伯爵は俺の手で倒したかった。ごっほ、ごっほ。
       鉄郎、頼みがある。」

鉄郎   「何でしょう?」
トチロー 「いいか、俺が横になったら、そこのレバーを下げてくれ。」
鉄郎   「下げるとどうなるんですか?」
トチロー 「俺は、あるところへ行く。
       いいか鉄郎、機械伯爵の頭をうち砕け!
       機械の体の人間は頭を破壊されると、もう二度と・・・、うっ、ごっほ、ごっほ。」

鉄郎   「しっかり、しっかりして下さい!」
トチロー 「俺は一つの機械になる。
       そして、俺の親友の乗っているアルカディアの心になって、宇宙の海ををさまよう。
       鉄郎! レバーを!」

鉄郎   「俺には、俺には出来ない!」
トチロー 「俺がもう一度起きあがるためだ。引くんだ! やってくれ鉄郎!
       俺は・・・、まだやりたいことが山ほどあるんだ・・・」

鉄郎  (レバーを引く)


〜 酒場 キャプテン・ハーロックとの出会い 〜

鉄郎   「俺の銃を返せ!」
機械人間 「ここにあるぜ!」
(機械人間、鉄郎を殴る!)
鉄郎   「返せ! 俺の・・・」

  (その時、ある人物が現れ鉄郎を助ける)

機械人間 「助けてくれ!」
鉄郎   「あなたは! キャプテン・ハーロック?!」
キャプテン・ハーロック 「オヤジ、ミルクをくれ。 一杯やれ。」
機械人間 「ミルクは体が錆びる。勘弁してくれぇ!」

鉄郎   「どうして、僕を助けてくれたんですか?」
ハーロック 「俺の親友の墓を建ててくれたお返しさ」
鉄郎   「じゃあ、あの人の親友って、あなただったんですか?」


〜 時間城  機械伯爵との決闘 〜

謎の男 「だから言ったろ、撃たれる前に撃てって!」
鉄郎   「アンタレス!」
謎の男(アンタレス) 「加勢に来たぜ!」

(銃撃戦が続く)

アンタレス 「は、離れてろ! 俺の体には不発弾がぎっしり詰まっているんだ!」
機械伯爵 「リューズ、時間を進めろ!
       リューズ、どうした! 早く時間を進めろ!」
       リューズ、どうした、リューズ!」

アンタレス 「どうやら最後の仲間に裏切られたようだな、機械伯爵!
        罪もない人間達を殺してきた罰だ!」

アンタレス 「鉄郎ぉー! メーテルには、メーテルには気を許すな!」

  (アンタレス、爆破!)

鉄郎   「うわわわぁ〜!」

鉄郎   (機械伯爵を撃ち倒す)


〜 鉄郎の決意 〜

ハーロック 「これで、お前の復讐も終わったわけだな、鉄郎。」
鉄郎   「キャプテン・ハーロック、それは違います。」
ハーロック 「うん?」
鉄郎   「機械伯爵や、機械化人を見ていると、永遠に生きることだけが幸せじゃない。
       限りある命だから、人は精一杯がんばるし、
       思いやりや優しさがそこに生まれるんだと、そう気が付いたんです。
       機械の体なんて、宇宙から全部なくなってしまえと。
       僕たちはこの体を、永遠に生きていけるからという理由だけで、
       機械の体になんかしてはいけないんだと気が付いたんです。
       だから僕は、アンドロメダの機械の体をタダでくれるという星へ行って、
       その星を破壊してしまいたいのです。」

〜 鉄郎とメーテル 〜

鉄郎   「あのぉ〜、メーテル、このたびが終わって、地球に戻ったら、どうするんだい?」
メーテル 「わからないわ、どうして?」
鉄郎   「・・・。
       ・・・。
       君さえよかったら・・・!
       一緒に暮らして欲しいんだ!」

メーテル (鉄郎はいつか気が付く。
       鉄郎が私を愛してくれたのは、それは時の流れの向こうに私が置いてきた、はかない夢。)


〜 終着駅へ 〜

車掌 「長らくのご乗車、ありがとうございました。
     間もなく、終着駅、『メーテル』、『惑星メーテル』、機械化母星『メーテル』でございます。」

〜 鉄郎の失意 〜

アナウンス 「メーテル、終着駅メーテル、惑星メーテル、機械化母星メーテル」
鉄郎   「?! なぜだ! なぜ君と同じ名前なんだ、何故だ!」

機械人 「お帰りなさい、メーテル様。よくご無事で。
     しかも、お連れになったこの男の勇猛果敢さ、責任感の強さは、
     全てコンピューターでコントロールセンターに送られてきておりました。
     女王陛下には、ことのほかお喜びにございます。」
鉄郎   「メーテル、これは、これはどういう事なんだ?!」
機械人 「この星は、あらゆる物全てが、人間で作られた部品で組み立てられている。
     お前は、あらゆるテストに合格した。
     しかも我々の英雄の機械伯爵まで抹殺してくれた。
     許すべからざる重罪人だ。
     その罪の償いのために、このメーテル星を構成する部品の1つになって、
     惑星メーテルを永遠に支え続けるのだ。」

鉄郎   「冗談だろ? メーテル! きたないぞぉ!」

  (鉄郎がメーテルを殴る!)


〜 機械帝国 女王プロメシューム 〜

機械人 「女王プロメシューム様、部品ナンバー 8・9・9・8・9・8・2、人間名、星野鉄郎、参りました。」
プロメシューム 「ご苦労であった。」
鉄郎   「俺は絶対に、機械の部品になんか、ならないぞ!」
プロメシューム 「この少年の適性は?」
機械医者 「中央ブロックのネジがよいかと思われます。」
プロメシューム 「理由は?」
機械医者 「意志が強く、そうとうのショックを受けても、折れたり抜けたりしない男と思われます。」
鉄郎   「?! ネジにするのか? 俺を!」
プロメシューム 「そう、心を持った生きたネジ。惑星を支える生きた部品。」
鉄郎   「離せ! 離せよ、離せったら、このヤロウ!
       ネジなんかにされてたまるかよ! 離せったら、いてぇな、離せよ!
       このヤロウ、やめろよ! やめろ! 化け物ども。お前らの言いなりなってたまるかよ! 離せぇ!」

(メーテルが走って、やって来る)

鉄郎   「何しに来た、俺の間抜け様を笑いにか!」
プロメシューム 「私の娘に無礼な口を聞くと部品にせずに殺しますよ。」
鉄郎   「娘?!」
プロメシューム 「機械帝国を支配する女王プロメシュームの一人娘。」
鉄郎   「そうか、俺は何も知らず機械の化け物と旅を続けてきたのか。
       その化け物を好きになるなんて、しまらねぇなぁ。」
ドクターバン 「鉄郎、メーテルも君を愛してしまったんだよ。」
鉄郎   「その声は! あの時の!」
プロメシューム 「ドクターバン!」
メーテル 「そうよ、お母様、お父様よ!」
プロメシューム 「反機械化世界を目指した裏切り者!」
ドクターバン 「そうだ、プロメシューム。あわれな機械の女よ。
         私の魂はこうしてカプセルに姿を変えているが、
         そのエネルギーは惑星の中心を破壊し、バラバラに砕いてしまう力があるのだ。」

プロメシューム 「愚かなことを。
          生きた部品で構成された惑星メーテルが破壊できるとお思いか!」

ドクターバン 「メーテルが歯を食いしばり、部品となる同志を運んできたのは何のためだと思う?
         部品となった同志達が、要所要所の重要部分に配置されているのは何のためだと思う?」

プロメシューム 「同志?」
メーテル 「私が連れてきた人々は、みな志を同じくする人々。
       機械帝国を破壊するため、身を犠牲にすることをいとわぬ勇敢な人々。
       私は、泣きたいのを我慢して、そういう人を大勢、ここに送り込んだのです。」

プロメシューム 「メーテル、母親の私をお前までが裏切ったのか?
          宇宙で一番美しい体をお前に与えた、この私を!
          永遠の命を授けてやったこの私を!」

メーテル 「そして、永遠に苦しみを下さったわ。」
プロメシューム 「お前は平気か? ここでカプセルを解き放てば、この惑星が破壊される。お前も死ぬことになる。」
鉄郎   「機械帝国を滅ぼすことが出来るなら、俺はかまわないさ!」


〜 ハーロック、エメラルダス、トチロー 〜

ハーロック 「男なら、危険をかえりみず、
        死ぬと分かっていても戦わなくてはならない時がある。
        負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある。
        鉄郎はそれを知っていた。
        いいか、鉄郎にかすり傷一つつけるな!
        無事に地球に帰すのだ!」

エメラルダス 「トチロー?!」
トチロー 「エメラルダス、俺の体は滅んでも、俺の魂は永遠に死なない。
       こうして親友の乗っているアルカディア号の心になって、宇宙の海をさまよう。
       これも鉄郎のお陰だよ。」

エメラルダス 「分かっているわ、トチロー。
         あなたの意志は立派に鉄郎が引き継いでいる。
         死なすわけにはいかない。」


〜 機械帝国の最期 〜

(ドクターバン自身のカプセルを鉄郎が奪い、星の中心部に投げる。惑星メーテルが崩れ始める。)

〜 メーテルの正体 〜

鉄郎   「(メーテルの手をとって)暖かいな。メーテルが機械なんて。」
メーテル 「私の体は、鉄郎のお母さんの体。
       私は、鉄郎のお母さんの若い時の姿の生き写し。
       私は人の姿をした影。
       こうやって、もらった体も年をとれば、
       また一つ別の体を移し替えて、果てしない時間の中を旅してきたのよ。」

〜 プロメシュームの最期 そして、クレア・・・ 〜

鉄郎   「うわっ!」

(プロメシュームが鉄郎の首を絞める)

メーテル 「お母様!」
鉄郎   「苦しい、何すんだよ・・・」
プロメシューム 「道連れだよ。メーテル。これもお前のせいだよ。」
メーテル 「私の?」
プロメシューム 「お前は、母親の私を裏切って、何もかも私から奪い取った。
          だから、私はお前から鉄郎を奪い取ってやる。」

メーテル 「お母様! やめて!」
プロメシューム 「お前が将来、嘆き悲しんで暮らすのが私の願い。」
鉄郎   「かぁあさぁ〜ん!」
メーテル 「お母様!」

(クレアがプロメシュームを締め付ける)

プロメシューム 「は、何をする。離しなさい!」
クレア 「鉄郎さん、さようなら。たった一人の私のお友達。好きだった・・・」

(クレアの体が砕け散る。プロメシュームの最期)

メーテル 「あなたを守って、砕け散ったクレアさんの体。」
鉄郎   「こんなに悲しそうな涙、見たことがない。」


〜 ハーロック 〜

ハーロック 「鉄郎、いつかまた、星の海のどこかで会おう。」

〜 そして地球で メーテルとの別れ 〜

鉄郎   「どうしても行くのか?」
メーテル 「私は時の流れの中を旅してきた女。でも昔の体に戻るために・・・」
鉄郎   「じゃ、やっぱり冥王星へ・・・。 俺、待ってるよ。もう会えないのか?」
メーテル 「(うなずく)
       いつか私が帰ってきて、あなたの側にいても、あなたは私に気が付かないでしょうね。」

(メーテルが鉄郎にキスをする)

メーテル 「私は、あなたの想い出の中にだけいる女。
      私は、あなたの少年の日の心の中にいた青春の幻影。」

  (メーテル、999に乗ってドアが閉まる。999が動き出す)
  (鉄郎は999を追って歩き、そして走り出す)

鉄郎   「メェーテルゥ〜」
鉄郎   「メーテル!」
メーテル 「鉄郎!」
鉄郎   「メーテル! メーテル! メーテルゥ〜ゥ! メーテル! メーテルゥ〜! メーテルゥ〜!」


今、万感の思いを込めて汽笛が鳴る。
今、万感の思いを込めて汽車がゆく。

一つの旅が終わり、また新しい旅立ちが始まる。

さらばメーテル。
さらば銀河鉄道999。

さらば少年の日よ。

さぁ行くんだ その顔を上げて
新しい風に心を洗おう
古い夢は置いて行くがいい
ふたたび始まるドラマのために
あの人はもう想い出だけど
君を遠くで見つめている
The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars

そうさ 君は気づいてしまった
安らぎよりも 素晴らしいものに
地平線に消える瞳には
いつしかまぶしい男の光り
あの人の目が うなずいていたよ
別れも愛のひとつだと
The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars

The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars

HOMEへ