第3回目: 未来へ行ける!
99年5月30日作成
99年6月2日更新

 さて、前回は過去に行く方法の謎を説明しました。わかってもらえましたか! しかし、実はそこには大きな落とし穴があることも触れたと思います。今回はその「落とし穴」を説明しようと思ったのですが、先に未来に行く方法の謎を説明しようと思います。未来に行く方法は、於保先生の話からちょいと外れて書きます。
 於保先生は、「未来に行くには、なるべく速く移動して光の速さに近づけばいいんだ」、「SF映画とかで、ロケットで宇宙に飛び立ち、1年ほどして地球に戻って来たら、地球上では20年が経過していた!なんてことがあるだろう。これが未来に行く方法だ!」くらいしか説明してくれませんでしたので、於保先生の話に補足をしようと思います。
 未来に行くための方法、これは図で説明するとしましょう。

【図1】静止している二人
 まず、図1のようにロケット(於保先生の授業にならって宇宙戦艦ヤマトを登場させました)とそれに乗っている人、また地球上の人の二人を仮定します。
 ここでのヤマトは静止しています。

【図2】ヤマトの中の「鏡」と「光源」
 図2のようにヤマトの中に「1枚の鏡」「1つの光源」があるとしましょう。また、その「光源」と「鏡」の間の距離を「D」とします。

【図3】光の移動距離
 図3のように光源から発せられた光が、鏡に反射して戻ってくるとします。この場合、光が進んだ距離を考えてみます。光は鏡までの距離を往復しますので、光が進んだ距離は「Dの2倍」です。当たり前です。
 ヤマトの中にいる人、ヤマトの外にいる人から見ても、光が進んだ距離は「Dの2倍」です。何の問題もありません。

 しかし、これはヤマトが静止している場合だけなんです。もしもヤマトが動いていたら、「Dの2倍」ではなくなるのです。それもヤマトの外にいる人から見ると「Dの2倍」よりも長く見えてしまうのです。その説明を下の図4でします。


【図4】光の移動距離が長くなる?
 図4では、ヤマトが左に移動しています。この場合に問題が発生するのです。この場合の光の進んだ距離に注目するとしましょう。
 ヤマトに乗っている人から見た場合、光の進んだ距離は、図3のヤマトが静止している場合と全く同じように見えます。つまり「Dの2倍」であります。これは、電車の中でキャッチボールした事を想像すればよいでしょう。
 しかし、ヤマトの外にいる人からみた光の進んだ距離が変わってしまうのです。光源から発せられた光は、鏡を目標に進むのですが、光が鏡に到着する前に鏡は左に進んでしまいます。なぜならヤマトが左に移動しているからです。そのため、光は鏡を追うように斜めに進んでいるように見えるのです(光が、ヤマトの進む方向に速度を与えられてしまい、その結果、斜めに進んでしまうのです)。
 そしてまた、鏡に反射して戻ってくる場合も斜めに進みます。このようにして図で見ると、光の進んだ距離は、斜めに移動したために「Dの2倍」よりも長いことがわかります。

 図4をまとめますと、ヤマトが移動している場合、以下にように、見る人の場所によって光の移動した距離が異なるのです。
 ・ヤマト内にいる人(動いている )にとっては、光の移動した距離は「Dの2倍」に見える。
 ・ヤマト外にいる人(静止している)にとっては、光の移動した距離は「Dの2倍以上」に見える。

 さて、【光の速度は常に一定である】。この原則を元に考える。「移動した距離が長い」と言う事は、光の速度はどんな時も一定であるため、その距離を移動するのに必要な【時間もより長くなる】という事なのです。これが重要であります!!!!!

 この【時間が長くなる】ということが非常に重要なのです。ヤマト内の人には、この一連の動作にかかった時間が例えば1秒間であったとしても、ヤマト外の人にとっては1秒間以上、例えば1.5秒間もかかっているのです。
 この現象を日常生活に当てはめると、常に高速で動いている飛行機に乗っている人と、地上にいる人では、微妙に時間の進む速度が異なると言えます。

 これが、未来にいくための原理なのです。ヤマトの移動が進むにつれて、ヤマト内の人と、ヤマト外の人(地球の人)の間の時間のずれが次第に大きくなっていきます。ヤマト内の人にとって1年しか経過していない場合でも、地球では10年も20年も経過しているのです。これが冒頭の於保先生のセリフ「1年間だけ宇宙旅行をして、地球に帰ってくると地球では20年も経過していた」という現象の原理です。わかりましたか?



 次は、どのくらい先の未来へ行くかをコントロールする方法を説明します。このコントロールは、この例でいうと「ヤマト」の移動速度となります。ヤマトの速度が速ければ速いほど、地球に戻ってきた時の地球での経過時間は大きなモノになります。つまり、ヤマトの速度が速ければ速いほど、より未来へと行けるのです。
 図4に注目すると、ヤマトの速度がより速ければ、「鏡」「光源」の移動距離も長くなります。つまり光の進む軌跡がより斜めになり、その結果、光の移動する距離が「Dの2倍」より長くなります(付け加えると、ヤマトが光の速さに近づくほど、鏡も光の速さに近づきますので、光源から発せられた光は、なかなか鏡に追いつかず、その結果、光の移動距離がより長くなるのです)。ヤマトの速度が増し、光の移動距離が長くなるとは、それだけ時間も長くなるため、より未来へと行ける訳です。

 では、実際の数字で説明します(ここでは光の速度を対象にしています。光の速度は「毎秒30万Km」(1秒で地球を7周半))。
 ヤマトが光の速さの「0.72倍」で移動しているとします。この場合、「地球上で1年」経過しても、「ヤマトの中は0.69年(約8ヶ月)」しか時間が経過していないのです。つまりヤマトで約8ヵ月経過して地球に戻ってくると、地球では1年が経っているのです。
 ヤマトの速さが光の「0.9953倍」ならば、 「ヤマトでの0.872年(約10ヵ月14日)」が「地球での9年間」。
 ヤマトの速さが光の「0.99953倍」ならば、「ヤマトでの0.873年(約10ヵ月15日)」が「地球での90年間」。
 ヤマトの速さが光の「0.9999998倍」ならば、「ヤマトでの約9年」が「地球での1万4000年間」。

 (ヤマトの速度を光の速さの「B倍」(B<1)、ヤマトでの時間をTy、地球での時間をTとすると、 T=Ty /普i1−B*B)となります)(数学の苦手な人はこの式は無視して下さいね。これ以降は出てこないから!)
 このようにして、ヤマトの速度が速ければ速いほど、タイムマシン効果が発揮されるのです。

 しかし、逆にヤマトの速度が遅ければ、タイムマシン効果は大して発揮されません。図4で考えてみますと、ヤマトの移動速度が遅ければ、光の移動距離は「Dの2倍」とほとんど変わらないのです(光源から発せられた光が鏡に反射して戻ってくるまで、ヤマトの移動速度が遅いことから、光源がほとんど移動していないため)。
 現在、地球上で最も速いと思われる飛行機、スペースシャトル、ロケットでさえ、先に例を挙げた光の速さ(1秒で地球を7周半)に比べれば、子供のようなものです。つまり、現在の地球のあらゆる技術を使用しても、未来へ行くためのタイムマシン効果を発揮するほどの速度を実現することは、不可能なのです。例えば、双子の弟が地上で、兄が飛行機に乗った状態を70年間続けたとします(飛行機が70年間飛び続けると仮定)。それでもこの双子の時間のずれは、飛行機に乗った兄の方が数秒だけ遅れているといった程度です。


 しかし、今後、技術が飛躍的に進歩してゆき、光速度の90%以上の速度を実現できるかもしれません。もし実現すれば人間は未来へ行くことが出来るのです。既に未来へと行くための理論はわかっているのですから、未来へ行くことが決して不可能とは思えません。

 速く移動すればするほど、未来へ行ける。光の速さに近づけば近づくだけ未来へ行ける。そして光の速さを越えた時、第2回で書いたように過去に行ける。これがタイムマシンの原理なのです。わかりましたでしょうか?

 しかし、しかし、第2回の最後にも書きましたが、そこには、重大な問題があるのです。光の速さに近づく、光の速さを超す、これに対して非常に大きな問題が物理学において存在するのです。次回こそ、その問題に触れてみようと思います。

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