第9回目: 実存しない物質
99年9月20日
 前回から連載の間隔が開いてしまいましたが、やっと再開です!
 そして、この連載も、そろそろ終わりに近づいてきました。もうちょっとですから、最後まで付き合って下さい。

 さて、今回は、最後にとっておきの展開(?)を紹介しようと思っています。

 前回では、タイムマシンを作る為に(過去に行く為に)、何とか「光より速く移動」することが出来ないか?について、紹介しました。その結果、残念ながら、「光より速く移動することは不可能である」という結論に至りました。

 しかし、それは、現在の科学力では、「光より速く移動する方法」を見つける事が出来ない、という事かもしれません。

 現在の科学力では、「光より速く移動する方法」を、見つける事は出来ない。でも、その存在だけならば、証明する事は、できるかもしれない!
 今回は、この辺について、紹介していきたいと思います。

 ヒントになる題材は、物理の方程式。
 方程式と書いて、数学の苦手な人は、ひいてしまうかもしれないので、簡単にわかりやすく紹介していきます。
 (車椅子の天才物理学者スティーブン・ホーキングの本、「ホーキング、宇宙を語る」に、次の様な事が書かれていました。「数式を1つ書くだけで、その本の売り上げが、半分に落ちてしまう。それだけ数式というものは、読む相手に、内容を難しくさせてしまう」)

 速度、重さ、エネルギーの関係について、いくつかの方程式が存在します。ここでは、それらのうち、比較的簡単な式を用いてみようと思います。
 ということで、以下の式を見て下さい(式の内容は、一切無視しても大丈夫です)。


 この式は、「速度v」で走っている物質の「重さM」を計算する式です。

  ・「Mo」: 速度0の時、つまり静止ている時の、物質の重さ。
  ・「c」: 光の速度。
  ・「M」:速度vで走っている物質の重さ。

 ここで、速度vが、光の速度を越えた場合、つまり「光速を越えた物質」の場合について、考えてみます。
 (タイムマシンの実現、過去に行く為には、「光より速く進む」事が必要だからです)

 光速を越える、という事は、「vは、cより速い」。
 これを、言い換えると、「v > c」。 この「光速を越える」状態において、上記の式を考えてみたいと思います。

 注目するのは、右辺の分母(浮フ中身です)。
 まずは、「v/c」。 この「v/c」は、1より大きくなります。
 (vは、cより大きいから、例えば「v=2」、「c=1」を代入してみて下さい。「2/1=2」となり、1より大きくなります)。

 今度は、上記の式の、分母の「普vの中の「数式」に、注目してみます。
 この数式、「1−(v/c)×(v/c)」は、マイナスの値になります。
 その訳は、例えば、先の「v/c=2」として代入すると、「1−2×2」=「1−4」=「−3」となり、解はマイナスとなります。

 さて、ここで、問題が発生するのです。
 「普vの中が、マイナスになってしまうと、どうなるか?
 高校生の数学で習ったと思います。「普vの中が、マイナス、つまり「負の数」になると、「虚数」と言われる数字が登場するのです。
 「普i負の数)=虚数」という事になるわけです。

 では、虚数とは、一体何なのか?
 虚数とは、実数の反対のこと。
 実数とは、「実存する数字」のこと。
 では、虚数とは、実数の反対だから、「実存しない数字」、「世の中に存在しない数字」。

 さて、上記の式は、
 M = Mo / 虚数、
 となるため、「M」が虚数となってしまいます。
 (高校生の時の、数学の授業では、「虚数」をアルファベットの「i」を使っていましたよね)

 ということは、光速を越えた速度vで、移動する物質の重さ「M」は、虚数になってしまうのです。
 虚数とは、「実存しない数字」。

 では、虚数の重さを持つ物質は?
 それは、「実存しない物質」、「世の中には存在しない物質」ということ????

 これらをまとめると
 【光速を越えると、「実存しない物質」】になる。
 「実存しない」、しかし、物理的な数式には「虚数」という表現を用いて、「存在する物質」。

 (この数式以外にも、エネルギーの方程式を解く事によって、同様な結果が導かれます)

 光速を越えると、「実存しない物質」になる。
 だから、現在まで、発見されずにいるのでしょうか?

 発見されないが、数式、方程式では存在する数字。
 言い換えれば、数式、理論的には、存在するが、現在の世界では存在しない物質。
 それは、一体なんなのでしょうか?

 現在の世界には存在しない。それは、つまり、どこの世界に存在するのでしょうか?

 私が、思うに...、

 その前に、これを読んだか方の意見が聞きたいと思います。
 考え方自体がおかしい、虚数なんて考える事自体がおかしい、いや虚数の世界とはきっとこんなのだろう、
 等など、よかったら意見を聞かせて下さい。

 そして、次回は、とうとう最終回です。

HOMEへ