6. 8人制サッカーの薦め

 本来11人で行うサッカーですが、最近の試合には11人より少ない人数での試合が良く見受けられます。5人制のフットサルはすっかり定着してきましたが、次世代サッカーとして注目度NO.1は8人制サッカーです。この8人制サッカーは、南米のサッカー指導で多く用いられているスタイルであり、今後は日本でも少年サッカーでは定番となってくると思われます。8人制サッカーとは何か?今後のサッカー選手育成にどういった影響を及ぼしてくるのか?をまとめてみました。


●サッカーは11人...は誤り?

 「サッカーは、何人でプレーするか?」という問題を出せばすぐ11人という回答がでるでしょう。では「少年サッカーは何人か?」と問われたら...どうでしょう?10年ほど前に、イングランドは少年サッカーの11人制を禁止しました。なぜかと言えば、イングランド代表が勝てない原因が少年期の11人制だと考えたからです。フランスW杯の前座で行われた試合は9人制、イタリアでは8人、オランダでは7人、アメリカでは6〜8人。クアトロ・ゲームという4人制サッカーの個人戦まであります。欧米の急浮上してきたサッカー強国はいずれも協会が年齢段階別に定員と遠征領域に制限を加えているようです。つまり協会が指導コンセプトを一元化しゲームのルールを統一して、11歳以下では11人制の公式戦を協会が禁止しているのです。
 現在のところ正解はありませんが、少年の11人制が誤りなのではないかという方向に、少しづつ流れが変わりはじめたようです。

●少人数制サッカー(ミニサッカー)の始まり

 さて、ミニサッカーはなぜ日本で始まったのでしようか?日本のサッカー界には「どうしてヨーロッパや南米と日本のサッカーは違うのだろう!?」と世界と日本の技術やレベルの格差の秘密を追求する人たちがいました。その人たちがたどりついた1つの結論が「ヨーロッパや南米にはミニサッカーがある」ということでした。「∃ーロッパ、南米ではミニサッカーが盛んに行われ、そこから子供たちが育ってくる。ミニサッカーは日本の草野球と同じだ!」と当時、日本リーグに参加するために海外からやってきたセルジオ越後、ジョージ与那城らが指摘したのです。これが日本のミニサッカー史の始まりでした。

●いろいろなミニサッカー大会

 ミニサッカーの大会はさまざまな形で開催されました。毎日新聞社、NET(現・テレビ朝日)が後援した「第1回ミニサッカー選手権大会」には、日本リーグ全8チームが出場し、73年、74年と続けて行われ、第1回大会はヤンマー、第2回大会は古河電工が優勝しました。76年には実践女子大、相模女子大の学生チーム、三菱重工と三菱養和によるチーム、またFC神南などのOLチームなどによる女子の8人制ミニサッカーが始まり、この大会は80年まで続きました。その他10年続いた伊勢丹のミニサッカー大会や、77年から千葉県千倉町で行われてきている黒潮少年サッカーフェスティバル(ビーチサッカーのはしり)など、次々とミニサッカー大会が登場してきました。中でも79年から始まった「全国少年総合ミニサッカー大会」は、サロン(5人制)、ガーデン(6人制)、ミニサッカー(8人制)などの部門制で総合優勝を争い、東京、千葉、静岡、栃木など会場も持ち回りで行われた大規模な大会でした。この大会からさらに、小学校5年生〜中学3年制を対象に3種目の種目別、学年別競技も計画されました。いずれの大会も、ミニサッカーの発展にとってそれぞれ意義深い大会となりました。

●フットサルの強化

 94年3月にイタリア・ミラノで行われた「'94国際フットサル大会」には、社会人中心の「全日本ミニサッカー選手権大会」上位入賞チームを母体にチームを編成し、日本選抜チームを送り込みました。ミラノヘ派遣した日本選抜チームはこの大会で完敗しました。任意の大会で選ばれたアマチュアとは言っても日本を代表するチームが国際大会で惨敗したことで、日本のサッカー 界にフットサルの強化という意識が急速に芽生え始めました。そのためには登録制度と組織づくりが必要、という方向性が認識されたのです。
 一方、11人制の日本代表監督だったハンス・オフトは、日本代表チームの強化に積極的にミニゲームを取り入れていました。30×20m程の狭いエリアの中で4人、5人のゲームを繰り返し行ったのです。このことはトップレベルの強化にもフットサルは重要なトレーニングである、という認識を高めることになりました。

●8人制サッカーの利点

 では8人制サッカーは、11人制サッカーやフットサルに比べどのような利点があるのでしょうか?

◆若年層への指導に最適
 11人制サッカーの試合(45分ハーフ)で、一人の選手がボールに触れる時間は、トータルしても2〜4分ほどだそうです。サッカーに初めてふれる年代に一番大切なこと、それはサッカーは楽しいものだと感じてもらうことでしょう。90分間のうちの3分程の時間しかボールに触れられないのでは、サッカーを楽しむにはあまりにも短すぎます。8人制では人数が減るぶん一人の選手のボールに触れる時間が格段に増えます。まずは試合でボールに触る楽しさを8人制で感じましょう!

◆11人制への移行が比較的容易
 ゴールデンエイジと呼ばれる年代では、個人技術の向上が一番見込める世代です。この年代にいかに基本技術を学ばせるかは、そのあとの選手としての成長を大きく左右させます。そういった観点から導入されたのがフットサルです。しかしフットサルは競技人口の増加・フィールドや戦術の違い・必要となるスキルの違いなどから、今やサッカーとは似てはいるが、異なるスポーツになってしまいました。しかし、ポジショニングなどが11人制により近い8人制は、フォーメーションや戦術がよりサッカーに近い形になり、ルールも同じものを用いることができ、そのまま11人制に移行させる事が出来る点でチーム単位の導入に適しています。ヨーロッパでは似たようなものとして7人制の指導が多用されていて、10歳にあがるまでは主に7人制をやらせているそうです。

◆少子化問題の解決策として
 これからのスポーツに発展に最も影響を与える社会現象は少子化問題ではないでしょうか。近隣のサッカーチームを見ても学年ごとに11人揃っているチームは少ない状況です。学年をまたがらず、気の合った仲間で楽しくサッカーを行える8人制は少子化に悩むサッカーチームの救世主になりえます。日本サッカーの先進地・清水市においても、低学年のリーグで8人制を採用しています。低学年でたくさんボールを触って、清水JFCなどの地域選抜へ移行していく形のようです。

◆草サッカーの未来型として
 サッカーをしたくても22人を集めるのは一苦労。草サッカーをしている人であれば必ずといっていいほど味わっている苦労でしょう。日本でフットサルがここまではやっているのも、そういった状況が深く関わっていると言っても過言ではありません。しかし、やはりもう少し広いフィールドでサッカーはしたいという人も多いはず。そんな人にお勧めなのが8人制サッカーです。サッカーほど広いスペースを必要としなく、サッカーほど人数を集めなくても良い8人制サッカーは、草サッカーチームの救世主となると断言します!そこにはフットサルでは味わえない楽しさがきっとあるはずですよ。

●8人制サッカーの今後

 日本サッカー協会では、ユース育成で成功を収めている先進国等を参考に、日本独自のシステム構築の為のプロジェクトを展開中です。その中で少年期における少人数サッカーの推奨ということで、8人制サッカーの認知度を高めようと計画しており、最近では若年層の指導に多く用いられるようになってきています。日本サッカー協会は2010年度から4種協会がからむ大会は8人制を採用する予定です。

●あとがき

 各県の4種大会も徐々に少人数制サッカーが増えているようです。ルールも人数に合わせ、若干の手直しを行っている大会もあり、徐々にインフラが整備されていく事でしょう。要するに、楽しく、ゲーム性も高いこのスタイルをやってみない手はないということ。本当に8人制サッカーが日本独自の育成法につながるのか、数年後を楽しみにしたいですね。

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