1.子供の成長について

            スキャモンの発達曲線

 

スキャモンの発育発達曲線を参照すると、神経系統は生まれてから5歳頃までに80%の成長を遂げ12歳でほぼ100%になります。
この時期は、神経系の発達の著しい年代で、さまざまな神経回路が形成されていく大切な過程となります。
神経系は、一度その経路が出来上がるとなかなか消えません。
たとえば、いったん自転車に乗れるようになると何年間も乗らなくても、いつでもスムーズに乗れることが出来ることから理解できると思います。
この時期に神経回路へ刺激を与え、その回路を張り巡らせるために多種多様な動きを経験させることは、とても大切なことです。
子どもが成長していく時点では、器官や機能はまちまちの発達をしていきますので、ある一つの課題に対しても、吸収しやすい時期と、しにくい時期が出てきます 。
そこで、最終的に大きな成長を期待するなら、最も吸収しやすい時期に、その課題を与えていくのが最適な方法です。
それでは、5歳〜13歳までの成長の特徴を見てみましょう。

 

 

プレゴールデンエイジ  5歳〜8歳頃

スキャモンの発育発達曲線で説明すると、プレ・ゴールデンエイジと呼ばれる5歳〜8歳頃は、神経系が著しく発達する時期であることが判ります。脳をはじめとして体内にさまざまな神経回路が複雑に張りめぐらされていく大切な時期なのです。
この時期の子どもたちは集中力が長続きせず、常に新しいものに興味が移っていくといった特徴を 持っていますが、神経回路にさまざまな刺激を与え、その回路をさらに張りめぐらせること、神経系の配線をより多様に形成していこうとする自然な欲求の現われなのです。彼らは集中力がないのではありません。非常に高い集中力を持ちながらも、常に多種多様な刺激を身体が求めているのです。
子どもたちのこのような集中力を利用し、飽きさせないで楽しませるためには、多彩なアクティビティ(遊びの要素を含むもの)を与えていくことが1つのポイントです。鬼ごっこや、木登り、ボールを使ったさまざまな遊び、それらの動き一つ一つが、後になって貴重なものとなって身体の中に刻まれていくのです。次に訪れるゴールデンエイジを生かすも、殺すも。この時期次第といってよいでしょう。この時期は多種多様な動きを経験させる ことが大切です。
スポーツの基礎づくりが多面的であればあるほど、後に専門的なスポーツを行った時に覚えるのが早いと言われています。

ゴールデンエイジ 9歳〜12歳頃

歳〜12歳頃になると、神経系の発達がほぼ完成に近づき、形態的にもやや安定した時期に入ります。
この時期は 、動作の習得に対する準備態勢(レディネス)も整い、さらに「可塑性」と呼ばれる脳・神経系の柔らかい性質も残しているという非常に得意な時期として位置づけられています。
一生に一度 だけ訪れる「即座の習得」を備えた動作習得にとって、もっとも有利なこの時期は、「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、世界中どこでも非常に重要視され、サッカーに(他のスポーツでも 同じです)必要なあらゆるスキル獲得の最適な時期として位置づけられています。しかし、この「即座の習得」は、それ以前の段階でさまざまな運動を経験し、神経回路を形成している場合にしか現れません。だからこそ、プレゴールデンエイジも重要となるのです。

ポスト・ゴールデンエイジ 13歳頃以降

ゴールデンエイジを過ぎると、発育のスパート期(思春期スパート)を迎えます。
骨格の急激な成長は、支店・力点・作用点に狂いを生じさせるため、新たな技術を習得するには不利な「クラムジー:Clumsy」と呼ばれる時期となり、今までにできていた技術が、一時的にできなくなったりすることもあります。
この時期は、スキャモンの発育発達曲線を見ると、生殖器型で、ホルモンの分泌の著しくなる時期です。男性ホルモンの分泌は速筋線維の発達を促し、それまでに身につけた技術を、より速く、より強く発揮することを可能とさせてくれます。

(財)日本サッカー協会公認準指導員
藤井 辰己

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