8.少年・少女指導において

「ゴールデンエイジ世代には勝負だけにとらわれ、勝つサッカーだけを目指してはいけない。この世代が試合に勝つことは簡単である。DFにキック力のある選手をおいて、FWに足の速い選手を配置すれば、簡単に勝つことができる。しかし、このゴールデンエイジ世代に正しい技術(スキル)を獲得することはのちにつながる。」(その理由として『トレーニング効果の推移』と『スキャモンの発育発達曲線』があげられています。)

指導者がやるべきことは、「長期的な視野に立ち、子供たちに財産=技術(スキル)を持たせ、次のステージに送り出そう。」ということです。

具体的には、
「@人間の器官・機能の発達速度は一様ではない→発達・発育を考えて→個人個人、最も吸収しやすい時期にその課題を与えていく」
「A目先の勝利に目を奪われて将来の大きな成長を阻害してはならない→大会は手段であり目的ではない→あとの発達の妨げになることを取り除いていく」ということです。

この基準をゴールデンエイジ世代の少年の立場でみてみます。

・晩熟な(早熟の反対)小学6年生のケース
@小学3年生程度の体格・体力しかない→キック力弱い・足も遅い→高校・大学の頃には体格・体力面で早熟な子に追いつける→スキルではなく体力面の練習に比重を置かれると悲劇
A勝負だけにとらわれた前記の戦術では活躍の余地無し→試合に出れない・出ても活躍できない→身につけたクローズドスキルを判断を伴うオープンスキルに高められない。

・早熟な小学6年生のケース
@中学3年生程度の体格・体力がある→キック力強い・足も速い→日本では活躍できる→キック力・スピードに頼り過ぎでスキル不足に→高校・大学の頃には晩熟な子に追いつかれる。
A日本人は世界的には晩熟→キック力もスピードも通用しない→ジュニアユースの世界大会等で初めて認識する→スキル不足で大成できず→日本代表どころかプロになれない。

指導者は晩熟な子供を軽視しがちですね。逆に子供の親は早熟な子供を軽視しますよね。早熟な子供は『飛び級』させて一つ上の世代に混ぜてあげないと、キック力・スピードに頼るだけのスキル不足の選手になってしまいます。
 
また、選手は試合をやる限りなんとしても「勝ちたい」と思っています。「勝ちたい」という気持ちをもてない選手は成長しません。それをサイドで「あわてなくてもいい」「しっかりつないでいこうよ」「周りをよく見て判断しなさい」など選手が勝ちに急いでいるときに冷静さを取り戻すようなコントロールをしてあげることが大切なことだと思います。

イマジネーション・技術のある選手は「プレーが遅い」のではなく、プレーの速さを自由にコントロールできるのです。緩急をしっかりつけることができなければ技術があるとはいえません。「プレーが速い」選手はうまくても技術があるとはいえないと思います。サッカーでのスピードには3つの要素があります。「身体のスピード」「プレーのスピード」「判断のスピード」この3つとも備わっていれば最高ですが、足が遅くても足の速い選手にスピードで勝つことは十分できます。「プレーのスピード」と「判断のスピード」で勝つことができます。これが技術 (ボールコントロール)です。だから、技術を身につけることによってフィジカルな選手に勝つことができるようになります。

技術やイマジネーションは幼少でのボール遊びから生まれてきます。楽しく自由に遊ばせてあげることです。そして指導者は、すばらしいプレーや変わったプレーを子供がした時、これ以上ないほめ言葉を子供に言ってあげることです。そのすばらしさを認めてあげることです。日本の指導者は、これができませんというより下手なんでしょう。試合中であれば「失敗」は試合が終わってから問題点として「どうして失敗したか」を選手と一緒に考えどうすればよかったかを子供に考えさせることです。そして 、もっとも大切なのは、いいプレーをしたときに大きな声でほめてやることです。認めてやることです。少年年代の試合中の監督の仕事はそれだけでいいと思います。

指導者の心得として、将来あるサッカー選手の心身の健全な育成を図り、サッカーを通じて礼儀、社会的道徳など良識ある人格の形成を育てることです。
 

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