御縁と五縁

 巡り会いの不思議を素直にあらわした「袖振れ合うも他生の縁」という諺は、出会いの尊さを親しみのある言葉でしみじみと語ってくれます。「他生」とは私たちが生まれる前々からの生のことを指すのですが、道行く人と袖が触れ合うだけのことでも現在生きているこの世ではなく、前世よりの約束で出会うことに決まっていたというのです。

 そして最も肝心なことは、この世で人間と人間として出会うことができたという事実です。この世で実現した再会は、たまたまの偶然ではなく正にお互いが「御縁」を頂きあった得難い人生であるのだから、その出会いをもっと大事にしなければならないという戒めでもあります。

  ところで「御縁」は五つの縁とも読めます。五本の手の指をよく見てください親指は自分に一番近いご先祖でもあるの縁を現します。次に人差し指が色々な人たちとの縁、中指は仲間友人たちとの縁、薬指は言わずもがな夫婦の縁、そして小指が子供の縁を示しているのです。

 これら「五縁」の人たちも、それぞれが「御縁」を頂いてこの世に誕生してきているのですから、本人とはことさら深い関係があるということです。人間は決して一人では生きていけません。私たちは「御縁」によって人間として命を頂いているのだということを忘れず、自分のまわりの「五縁」を大切に生かして日々過ごしていきたいものです。

真言ぼだい会発行ぼだいより転載

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