Chi-Circleトップページに本と言葉に
book「自分の感受性くらい」 茨木 のり子
自分の感受性くらい  (数年前の)朝,通勤の車の中で何気なく聞いているラジオから,突然耳に飛び込んできた。
8:00からの番組で毎週火曜日のゲストの詩人が紹介していた。
頭に衝撃が走った。職場のこと,自分のこと,すべてに心当たりあるようで・・
・・叱られることの少ない大人が,「怒られた」気持ちがした。
 原文を見つけようと,詩集を探して,本屋から呉市立図書館まで探したが手に入らない。
妻が「教室で読ませたい詩」という本の中にあるよ!と見つけてくれた。
この詩,今でもときどき見ては叱られている。
(茨木のりこさんは,最近では『倚りかからず』という詩集がかなり売れた詩人です。)
(原本を買うことができた!2002年。)
book

自分の感受性くらい 茨木 のり子

ぱさぱさにかわいていく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
何もかもへたくそだったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

本と言葉に