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book「過去に目を閉ざすものは」 ヴァイゼッカー
これは,1985年5月8日に行われたドイツ連邦共和国(当時)のヴァイゼッカー大統領が,ヨーロッパにおける終戦40周年を記念しておこなった演説のごく一部だ。
 日本の終戦記念日頃になると,戦後処理とその理念の比較のためか,この演説がたまに引き合いに出される。原文全部が「岩波ブックレット」にあったように思うが,買いそびれてしまった。下の文章は,「世界」(岩波書店)1985年9月号に載っていた日高六郎さんの「三つの40年目ー記憶をいきいきと保つこと」の意味という文章から抜粋させていただいた。  
主に若者たちに向けて言ったと思われる有名な部分!を抜き出しました。
book

わが国では,新しい世代が政治的責任を引き受けるだけに成長している。その若者たちは,40年前に起こったことにたいしては責任がない。しかし彼らは歴史的結果にたいしては責任がある。
・・・・・
 今日の人口の大多数は,当時子どもであったか,まだ生まれていなかった。彼らは彼ら自身が犯していない犯罪にたいして,彼ら自身の罪を告白することはできない。 判断力のある人間ならば,ドイツ人であるという理由だけで,贖罪の服をまとうべきだとは期待すまい。
しかし,若者たちの先祖は苦い遺産を残したのである。 我々すべては,罪があるにせよ無いにせよ,老人であろうと若者であろうと,過去を受け入れなければならない。
我々はすべて過去の結果から影響を受けており,また過去に責任を負っている。若者と老人とは互いに助け合い,なぜ記憶を生き生きと保つことが決定的に重要であるかを理解し合わなければならない。またそのことはできるはずである。これは過去として期限満了にできる一件ではない。 それは不可能である。これは,やがては和らげたり,あるいはしなかったことにできるようなことではない。
過去に目を閉じるものは,現在にたいしても盲目である。非人間的なことを記憶することを拒むものは,だれであれ,新しい伝染病にかかりやすい。

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