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book「竹内浩三全集〜五月のように」 竹内浩三
五月のように 広島に帰って就職して(まだ独身のとき!),何も予定のない休日に広島市の 八丁堀〜本通り〜紙屋町あたりを何ということなくお店に入ったりして歩くのが好きだった。
特に本屋さんで時間を過ごすことが多く,下に引用した「五月のように」が入っている『竹内浩三全集−1』 も本通りの丸善で見つけたと思う。おそらくこのマイナーな詩人,ご存じの方は少ないかも知れませんね。 (私もこの時はじめて知った!)
編者まえがきから−「・・・そして,戦争は,この人間らしいもっとも人間らしい魂を,ついにフィリピンの戦場へとなみし去り, この魂が予感したとおり,人間竹内浩三の生命を断った。享年,二十三歳。」
この作品集は,「とても読みやすく」「青春の若さが感じられ」・・・「せつない」思いを抱かせる。 「青空のように 五月のように・・・愉快に生きよう」,「みんなが」そう思っている。「みんなで」そう生きましょう。


五月のように 竹内浩三

なんために
ともかく 生きている
ともかく

どう生きるべきか
それは どえらい問題だ
それを一生考え 考えぬいてもはじまらん
考えれば 考えるほど理屈が多くなりこまる
困る前に 次の言葉を知ると得だ
歓喜して生きよヴィヴェ・ジョアイユウ

理屈を云う前にヴィヴェ・ジョアイユウ
信ずることは めでたい
真を知りたければ信ぜよ
そこに真はいつでもある

弱い人よ
ボクも人一倍弱い
信を忘れ
そしてかなしくなる

信を忘れると
自分が空中にうき上って
きわめてかなしい
信じよう
わけなしに信じよう
わるいことをすると
自分が一番かなしくなる
だから
誰でもいいことをしたがっている
でも 弱いので
ああ 弱いので
ついつ いわるいことをしてしまう
すると たまらない
まったくたまらない

自分がかわいそうになって
えんえんと泣いてみるが
それもうそのような気がして
あゝ 神さん
ひとを信じよう
ひとを愛しよう
そしていいことをうんとしよう

青空のように
五月のように
みんなが
みんなで
愉快に生きよう

(竹内浩三全集−1『骨のうたう』P43〜46より抜粋)


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