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人権「子どもによる 子どものための『子どもの権利条約』」
          小口尚子・福岡鮎美
  【小学館】
子どもによる 子どものための『子どもの権利条約』 1989年11月20日、国連総会は全会一致で「子どもの権利条約」を採択した。日本は1994年5月、158番目に加入した。
 授業などで「94年12月までに加入した168ヶ国のうち日本は、何番目にこの条約を批准しましたか?」という問いかけに、どの教室でやっても最初から100何番目という答えは返ってこない。で、答えを言うと、「へぇー、遅い!」という生徒の反応となる。
 ユニセフでは、子どもの権利条約にうたう「子どもの権利」について、@「生きる権利」A「育つ権利」B「守られる権利」C「参加する権利」の4つの権利に大きくまとめている。というように教科書を使いながら授業するのだが、なかなかぴんと来ないだろうと思い、紹介した資料がこの「子どもによる 子どものための 子どもの権利条約」の一部である。
 この本の著者の小口さんと福岡さんは、当時ともに14歳で、94年アムネスティ・インターナショナル日本支部の「子どもの権利条約 翻訳・創作コンテスト」で最優秀賞を受賞した。この本は、それをまとめたものである。14歳で、たった二人でというところにいい意味で驚く。最後の方にある谷川俊太郎さんとの座談会を読むと、実際に英語の原文と政府訳とをにらめながら、辞書片手に格闘したり、市に手紙を書いて人権団体のパンフレットを取り寄せたり、ユニセフ訳も取り寄せたりと本当に自分たちが分かって、分かるように条約をつづっていったたことが分かる。
 本をめくると、まず真っ先に飛び込んでくる言葉がいい。
 "まっすぐに生きるために" 大人に対して、僕は言う。
また、「社会」という言葉を「ひとのよ」と読ませているところにも感心する。

 美しい自然や生き物たちの写真が、随所に挿入されていて、ほんとにさーと読めてしまう。(全体文量が少なくても)政府訳だと絶対にこうはいかないだろう。読みながら気がついたことの一つは、「国」のすべきことは多いぞ!国同士が協力することも大切だよ。てことが自然に頭に入ってくる。
 世界の中で、日本の中で命の危険さえ脅かされている子どもたちがいる。人権や権利から本当に遠ざかっている子どもたちがいる、この現実をまず知らなければ・・!この本全体の主題の一つはここにもあるのではないかと思う。
 下に引用させていただいたのは、授業で資料として教室の子どもたちと一緒に読んだ「ほんとうのまえおき」の一部です。(2004年5月)


(P27〜P31より)
「ほんとうのまえおき」
(前略)
■日本じゃかなりいいくらしができる
 家がある。服もある。食べ物もある。
 遊ぶことも、勉強することもできる。
 「勉強はいやだ」と思う子はたぶん多い。(実際ぼくもだ。)
 でも、
 勉強が(いやでも)できるってのは幸せなことなんだ。
 字が読めなきゃマンガも雑誌も小説も読めないし、
 どんなきまりがどういうふうに自分を護ってくれるのか、
 とか、知らなきゃ損だ。
 それに、
 どんなに大きな事件があっても、
 それがどういう意味なのかわからないままだ。
 どうして自分が殺されるのわからないままだ、
 ってこともありうる。
 さらに、
 自分が殺されるのはあたりまえのことなんだ、
 なんて思うことも。ありうる。
 世界には、
 ぼくらと同じような一日を送れる人たちばかりじゃない。
 たとえばぼくらがお昼ごはんをみんなで食べているあいだに、
 どこかで生まれたばかりの赤ちゃんが
 食べるものがなくて死んでいったり、
 ぼくらが「テストはいやだ」「勉強はいやだ」といっているときに、
 どこかで同じ年の女の子が
 全身傷だらけで泣いている。
 日本だって、苦しんでいる人はいる。
 苦しんでいる人、悲しんでいる人は、
 世界中にいる。
 その中には、子どもも、いる。
 助けてほしい、と心の中で叫んでいる。
 助けるには、いろんな人の協力が、いる。

■この「子どもの権利条約」をもっといろんな人が知って、
 もっとたくさんの人がそれを守ったなら、
 きっと、たくさんの子どもを助けられる。
 たくさんの子どもの、命が消えることがなくなる。
 だから、
 いっぱい数はありけど、
 知ろう。考えよう。
 すこしずつ。
 ひとつひとつ。

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