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米NLP 沖美町が誘致 中国新聞 1/30(2003年)

 広島県沖美町の谷本英一町長が30日、米空母艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)施設を、同町の大黒神島に誘致する考えを表明した。防衛施設庁も、米海兵隊岩国基地(岩国市)に近い立地に前向きに検討する姿勢で、町の正式申し入れを受けて現地調査に着手したい意向。完成まで3−5年かかるとみられるが、騒音問題や地元同意、反発する周辺自治体など課題も多く、難航も予想される。建設予定地は、能美島沖にある無人島の大黒神島(約7.2平方キロ)の西側の町有地。国が町から借リ、2千メートル級の滑走路などを整備し、日米安保条約の地位協定に基づき米軍に提供する。訓練以外の期間は、海上自衛隊が管理し、自衛隊関連施設の建設構想もある。総事業費は、訓練施設関連だけで1千−2千億円と見られる。 大黒神島は、大半が町有地。NLPで使用している岩国基地から東13キロの広島湾にある。(後略)

 朝、新聞を広げてびっくりしてしまった。新聞の一面トップに上のような記事が出ていたからだ。
 沖美町というと、私たちが住む町を海をはさんで対岸の比較的大きな島(能美島)にある町の一つである。対岸といっても距離的には近くなくて、自動車で1時間はかかるのだが、あまりに身近なお隣のお隣さんといった町なので驚いた。
中国新聞から

 これが本当に沖美町長の言うとおりに実現してしまうと、騒音は言うに及ばず、環境や観光などさまざまな面に影響を及ぼすであろう。今でも時たまであるが、わが家の上空をギュキーンと(戦闘機が通った後だろう)音がする。たぶん岩国基地関係だろうと思うのだが、こういったことがひんぱんに起こると健康や教育面にも影響があることは必至である。また何よりも、何故広島に?この沖美町は、地図で分かるように海をはさんで広島市や宮島町との対岸関係にもある。
 当然のようにその日のうちに「ヒロシマ 一斉にノー」と被爆者団体や平和運動団体はもとより、藤田雄山広島県知事や秋葉忠利広島市長、それから大柿町など同じ島にある他の町も一斉に反対の意を表した。町には抗議の電話が殺到した。このような動きについては後述べることとして、沖美町長の頭の中には、一体何があったのだろうか?
翌日の中国新聞の「過疎の島 補助金に望み」と題した記事から抜粋する。

 「よその自治体が放リ出したい施設を、何で受け入れるのか」。町役場には、地方自治体で初めてだった米軍基地関連施設の誘致表明後、町内外からの抗議電話が相次いだ。
 2000年の町長選で、政治にまったく未経験だった谷本町長を手づくリ選挙で支援した若手漁業者(41)は「都市部の人には分からないだろうが、町長の思い詰めた気持ちはよく分かる」と理解を示す。
 戦後間もない1947年に約1万人だった人口は現在約4千人。半世紀で人口が6割も減った。90年には過疎地域の指定を受けた。
 主な働く場は、農業と漁業しかない。島に働き場がないため、親たちは子どもに学歴をつけさせようと都会に送リ出すが、なかなか島には帰って来ない。
 十年間の商社勤めを経て、地域おこしのアイデアマンの島の郵便局長だった谷本町長は、漁協や商工会の若手たちが中心に支援して当選した。
 若手漁業者は「とても反対されて駄目だろうと、誰も手を出さなかったことに踏み出した。いわばウルトラCの活性策。その奇抜さ、大胆さに島を変える起爆剤の期待がある」とみる。
 沖美町を含めて江能4町は、2001年4月に法定協議会を立ち上げた合併協議が新市名をめぐって紛糾し、破たん寸前の状態にある。
 合併の誘導策の一つは特例債だが、その3割は借金として残る。谷本町長は防衛施設周辺整備などの補助金の優位性を挙げ、一般財源として自由に使え、後の世代に借金も残らない」と力説する。
 突然の誘致表明に、町内では、比較的低調だった合併論議よりも、NLP賛否の論議で持ち切リになっている。ただ、NLP誘致によって、恵まれた自然を生かした観光にも影響し、若者の一層の流出を招きはしないか、との懸念も広がり始めている。
 広島市内に通学する高校生の娘を持つ主婦(47)は「修学旅行で沖縄に行った娘は、基地の騒音にぞっとした思い出があって、『よその大学を出たら絶対、沖美には帰って来ない』と言い始めたと打ち明ける。

 決して沖美町だけのことではない。わが町でもお盆や正月が近づくと、どこにこんなに人間がいたのか!とびっくりするぐらいの車の量で、毎年道路は大渋滞だ。おそらく広島市はいうにおよばず、阪神や全国各地に仕事を求め、出て行った人たちなのだろうと思う。幸い渋滞しても車で1時間ぐらいのところに勤められている私などはいい方なのだろう。なにせ島には多くの人が働けるような主だった産業は少ない。
 沖美町には、2〜3回しか行ったことはないが、(すでにわが町では失われている)美しい海がまだあり、すこし荒い波に自然を感じたこともある。だが、確かに道路は細くなったり、入り組んでいたりと、行政の手が付けられていない場所が多いと感じた。
 何よりも合併や、ましてやNLPなどにたよらずに、町が活性化される過疎対策をもっと国を始め考えないといけないのではと思う。少ないもの、小さいところを犠牲にしながらの繁栄はいつか国土全体を滅ぼすものと思ってやまない。 

 このNLP問題、幸いにも同じ島内や、知事、市長、国会議員などの多くも「反対」「遺憾」「県民感情に反す」「許せぬ暴挙」と言っており、沖美町長も手をおろさざるを得なくなるだろうと思う。


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