やる気満々で八塚市に赴いた森山を待っていたのは、かつて森山の論文を批判しながら審査員を請け負った優秀な研究員・曽根ルミエと、5人の子どもたち、そして何とも奇妙な住人と、市を支配する「条例」だった。
一応この本は児童書のようです。が、この粗筋を読んでも分かると思うのですが、何というかいわゆる子供向きの書き方は一切されていません。パロル舎の他の本を読んでも思うように、やっぱり冒頭から「誰のために書かれた本なんだろう?」と首をかしげてしまいました(なぜなんだ＞パロル舎)。森山が八塚市に派遣される冒頭も、曽根ルミエとの関係(って言うようなものは書かれていないんですけど、雰囲気が)、お話の展開も、何かまとわりついて離れない違和感があるのです。
一言で言うなら「アンバランス」。恐らくある程度は計算されたアンバランスなんでしょうが、でも全てを計算し尽くしたという感じでもなく、それでいて偶然に形作られた絶妙とも言える「アンバランス」なのです。
元々私がこの本を手に取ったのは、川島誠が書いているというので手に取った『児童文学の魅力―いま読む100冊・日本編』文渓堂を読んでいて興味を持ったからなのですが、これによると『夜の子どもたち』は1985年に福音館書店から発行されたものの新版で、ストーリーも設定もかなり改稿されているらしいのです。うん、インターネットが出てきて驚いたりしたのですが、なんという か・・・。
八塚市では「大人も子どもも夜は決して出歩いてはいけない」という因習があり、市の人々はそれをしっかりと守り、さらに「夜間外出禁止条例」なるものまで作られている。市内の店は日が暮れると同時に店じまいし、人々も日が暮れると同時に眠りにつく生活。街明りの乏しい八塚市の夜は真の「闇」が支配していた。では、なぜ夜出歩いてはいけないのか――、子どもたちは「夜の大王・カレルピー」が出るからだと口々に言う。カレルピーは古代から日本の「夜」を支配し続けるモノで、八塚市に住んでいるのだという。当初迷信だと言って信じず、自分が学んだ心理学を用いた解釈を子どもたちに押し付けるだけだった森山も、夜の奇妙な出来事を目撃するにつれて考えを変えていく。
もし私がこの本を子どもの頃手に取っていたとしたら、熱狂したでしょう(^^;。夜の闇へ対する絶対的な恐怖と、それに立ち向かう力を得ていく主人公たち、という展開。そして、ちょうど私が小学生だった頃蔓延していた(ような気がする)文明社会が行き着く果て、未来への漠然とした恐怖など・・・・。もうまさに小学生時代の自分のツボですわな＜暗い小学生だな。
ですが今私は小学生ではないわけで、それが無茶苦茶残念なのですが、23才の私の感想を言えば、かなり荒っぽい話ではあると思います。因習と国家的陰謀の結びつきがかなり唐突な感じがしますし、国家的陰謀なんていうものを掲げているわりには、ちょっと雑です。いや、私も欲しいけど＞図書館に自然言語処理検索機能付きコンピュータ。他にも色々と、あるのですが、やや子供だましな感じを受けてしまいました。
その子供だましな部分も大人向きの文章で書かれている所が、いかにもアンバランスで「いい感じ」です。まるで、子どもの頃読んでいたジュブナイルを思い出すようで、結構楽しめました。そういう所から感じる違和感と、ストーリーが醸し出す全く奇妙な「アンバランス」が、非常にオモシロイお話でした(^^;。出来・不出来を言えば、必ずしも「上出来」ではないでしょうが、不出来ではないです、絶対に。こんなのダメだよ、という人もいるかもしれませんが、私としては充分「可」でした。
これからも芝田勝茂の作品を探して読んで見ようかな、と思っております。こういう本を読んだら、子どもも読書にはまるんだけどなあ(;_;)＜って少なくとも私は、3日くらい夢に見たと思うぞ。頑張れ＞パロル舎!!