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オタクとの遭遇における諸注意


 とりあえず店主の《趣味》に関するコンテンツを作ったものの、迷い込んでこられるだろう一般のお客様にこの趣旨を説明するのはとてつもなく難しい事です。よほどバックレて「判る人だけ判ってくれ」で済まそうかとも思いましたが…“○○以外の方はご遠慮下さい”って間口の狭さだけは、ページ作る以前からやりたくないなと誓っていたので仕方なく。いらん意地を張るんじゃなかった、と今ちょっと後悔中。
 恐らくどんな凝ったコンテンツを作るよりも、これがうまく書けるかどうかがページの価値を決めちゃうんでしょうね。…嫌な話ではございます。

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 一口に《趣味》と言ってもいろいろな物がございます。お茶やお花、釣りに囲碁、ピアノ、旅行に野鳥観察、切手の収集、音楽鑑賞や映画鑑賞や観劇、読書…。「ご趣味は?」と問われて何の躊躇いもなく答えられるのがこの類の趣味でしょう。一般に高尚と思われたり、昔から趣味として認められていたり、愛好者が多くて通りが良いのがこの類。
 ここからはみ出した趣味を持つ人間を一般に“オタク”“マニア”と呼びます。鉄道・フィギア(アニメ美少女の人形)・人形(リカちゃん、ジェニーちゃん等。ビスクドールはその価格により「よいご趣味」に分類される)・パソコン・ミリタリー・メカニック(バイクや車など)・マンガ・アニメ・ヘビメタ・パンク…。“オタク”より“マニア”の方がセクシャルな意味合いを含む趣味、この度合いが更に進むと“フェチ”と呼ばれるようになります。
 で…これだけ価値観が多様化して、個性重視の世の中になってるんだから、“オタク”系の趣味の人間の総数は軽く人口の50%を越えてるんじゃないかと思うんですよね。

 遙か昔のことですが。小学四年生だった店主は“マンガ本を買った”罰で母親に家を追い出された事がございます。母親にとってマンガなんて物は小学校の1・2年で卒業してなきゃならない物だった訳で。当時の親としてこの認識は普通だったと思います(それでもマンガを買うのを止めなかった店主に母親の方が折れ、『ベルサイユのバラ』なんか買ってくるようになりましたが)。あと、高校生の時に日曜の朝から早起きしてTVアニメみてた店主の前で「アンタって子は…お母さん情けなくて泣けてくるわ!」と泣き出された事がございます。まあこれも当時の親としてはまっとうな反応だったでしょう。
 高校生にもなってTVアニメを見ている事に己のアイデンティティを見いだしている人間が、あの当時にはいくらか存在しました。当然、はみ出し者でしたが。

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 このように一般的価値観からはみ出してしまった「オタク人種」と一般社会が関わる時、喜悲劇が生まれます。いかに非社会的趣向を持つオタクと言えど、しょせんは人間。そして人間とは社会的な動物です。誰かに認められたい、仲間に入りたい、人の上に立ちたい…どう考えても社会の価値観と折り合えないオタクに、そのような欲望があるのはいくらか不思議ではありますね。
 「己の嗜好を主張する」とはオタクの第二の本能でもあります。理解されがたい嗜好であるだけに尚更、言葉を尽くし道具立てを駆逐して、オタクは己の価値観を他人様に知らしめようとします。その主立った方法が“同人誌”と呼ばれる自費出版物、パソコン通信のアニメ関連会議室、そしてこのような個人のHPになる訳です。
 残念な事にこれらの空間ではオタクにおけるディープな専門用語が飛び交い、まっとうな日本語が通じない世界と化しております。それはさながら粋を極めた遊び人の世界か、道を究めた芸事の世界か…。社会的に認知されていない下世話な趣向ではありますが、《趣味》というくくりとしては、いくらか同じ方向性を含んでいると思われます。判る人は判るが判らない人は全く判らない。それでいい、と思わないでもありませんが、少し異人種に優しいオタクサイトがあってもいいのでは、と京屋は考えました。少なくとも「オタク以外お断り」とお客様の鼻先でドアを閉めるマネはしたくない、と。

 京屋のオタクコンテンツは、オタクな方々にはまんまオタクな楽しみを、そして一般の方々にはこの特殊空間に解説を加える事で、何とかこの「オタク空間」を身近に感じていただく事を念頭に作らせていただこうと考えております。

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 “オタク”という物のがえんぜなさ、例えこの世に一人も理解してくれる人がいなくても、それを《趣味》として貫いてしまう我の強さ、そしてそれを理解してもらおうと足掻くゴキブリのような姿を、何となく理解していただけましたでしょうか? 「ガンダムはロボットじゃない。モビルスーツだ」という主張が「井戸茶碗というのは口の広い、底の小さい茶碗なんだよ」という主張と同程度に正当な物であると理解していただければ(すごい話だ)、長々とこんな事を書きつづってきた意味もあろうという物ですが。
 時代は“オタク”に有利に動いているようですので(笑)、店主は今更焦ろうとは思いません。「何が何でも判って欲しい」と思うほど店主も若くありませんし、そんな事ムチャに決まっております。ほんの少しでも“オタクって何?”と思われた方々の理解の足しになれば、というのが正直な所。多々誤解も招くでしょうが、そのあたりは他のサイトさんをご覧になって補っていだだければいいかな、と。
 …少しはオタクという物に興味を持っていただけましたでしょうか?

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