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=太田市へ=

実質最終日は「世界遺産・石見銀山」へ。
玉造温泉駅から快速・アクアライナーに乗り、大田市駅へ。
駅からバスに乗り換え約30分で到着の予定。

なにしろ電車の本数が少ないので、玉造温泉駅を7:07発車に乗らなければならない。
残念だが宿の朝食は取れぬまま出発。

日本海沿いを走る列車はのどかな風景を見せてくれる。
海が目の前の駅のホームで待つ学生達の眼には、何が映っていたのだろう。



「太田市駅」に到着してちょっと驚いた。
世界遺産の玄関口というのに、駅前は閑散としていたからだ。
朝食をとらずにきたので駅で何か食べよう、と思っていたが駅の売店にも何もない。
駅前にやっと1件の喫茶店を見つけ、そこで大急ぎでモーニング。
う〜ん、モーニングなんて数十年ぶりだなー。
この閑散とした雰囲気は、あとで納得できたのだけど。

早朝から出かけたのには理由があった。
石見銀山 ガイドの会】という所にガイドツアーを頼んでいたからだ。
当初は石見ツアーに依頼する予定でいたが、電車等タイムスケジュールを練り直しているうちに、
ナント満員になってしまったのだ。
歴史に弱い私たちはこういう場所は絶対ガイドを頼まないと何も解らないまま終わってしまう、
と解っていたので困ってしまった。

あれこれ探しているうちに、ガイドの会と言うものがあると知り、電話をしてみたら・・・
「ああ、そういうことならこのツアーがいいですよ」と案内してくれたのがこのツアーだった。
しかも料金は無料・・・
おじさんは「あっちのツアーと同じだよ」と言っていたけれど、
同じツアーで¥3,800と無料の差って・・・ホント?
とりあえず銀山公園にある集合場所に集まった。

無料と言うだけあって、40人くらい集まっていた。
40人を一人で説明するのは大変だ・・・
まずはジオラマで石見銀山の全容の説明から。
そしてガイドさんに連れられてウオーキングツアーの始まり。



ここ大森・銀山地区の主な見所としては・・・
1:代官所跡と町並み
2:龍源寺間歩
3:山吹城
4:仙ノ山トレッキング

などがありますが、私たちの参加したのは1+2のコースです。
石見銀山については私はとても説明できませんのでコチラでどうぞ。

   
左:ぞろぞろと銀山遊歩道を歩いていく。目指すは【龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)】

中:私たちの担当ガイド佐藤さん、説明に熱が入ります。

右:遊歩道でスズメ蜂が死んで転がっていた。始めて見ましたがすごく大きくてビックリ!スズメ蜂対策まで教えてくれた。



【豊栄(とよさか)神社】毛利元就が建立した神社


山を見上げる場所で止まるガイドさん。
「最初に言っておきます。ここはただ歩いただけでは何もない場所なんです。こんな景色はすぐそこの裏山となんら変わらない。
ただ車でぱーっと来て、間歩を見学して・・・どこが世界遺産なんだろう、ってたぶん何もわからないと思います。
せっかく来たのだから、自分がその時代を生きて、ここを歩いているイメージを持っていただきたいんです。
私は語り部としてみなさんがこの「山が光っていた」ということ、
ここで働いてきた人々の暮らしぶりを少しでも感じてもらえるように頑張ってお話しします。」

銀山で仕事をしていたというガイドさん、大変詳しく、熱い思いが伝わってきました。

 
立ち止まった先に見える山、これが【仙ノ山】
近づいてみましょう・・・大きな枯れ木が見えます。
あの山の上に昔町があって、『石銀千軒』と謳われた鉱山町だったなんて信じられない。
残念ながら私たちはここには行けないのですが、仙ノ山トレッキングツアーに参加すればここまでこれるそうです。
山としては難しいわけではないのですが、あちこち銀山として彫ったのでどこにどんな危険があるか解らないので、
フリーで登るのはオススメできないとおっしゃってました。

銀が取れなくなってから町は衰退し、自然と今の位置に下りてきたということです。

そして【高橋家】
(谷ごとに任命された山師の代表で、鉱山を取り締まり、支配層と現場労働者とをとりつなぐ重要な役割を果たしていた)
の横を通り、皆さんのお目当て【龍源寺間歩】へと進みます。


現在は住居ではなく、時々管理の為に戻られるらしいです。

  

左:休日の為、すごい人です。チケットを買うのに並んでいます
右:いよいよ中へ。



中は天井が結構低いので中腰になったり。
これでも見学の為に広げたそうなので、実際銀を採掘していたときはもっともっと狭かったそうです。

  

ナントカ式といって(何だっけ?)、まずは一本の銀が取れる道を探し出し、
そこから左右へ横に彫っていく方法が効率が良く、採用されていたそうです。
出口近くには『石見銀山絵巻』の電照板が展示してあり、当時の銀山の様子を伺い知ることができます。



ナントカ式の説明を受けて終了です。




間歩を出たらまた来た道を戻りますが、行きは遊歩道だったので帰りは車道を歩いていきます。
左右は民家。モチロン今もここに皆さんそのまま住んでいらっしゃいます。

  
左:これは【大森小学校】レトロな建物で素敵ですね。
右:これは病院。中には昔懐かしい小さな受付の窓が。

この銀山地区が世界遺産に登録された理由の一つとして、
「人の手による開発を逃れ、遺構や人々の暮らしぶりが奇跡的に手付かずで残っていたこと」
なんだそうで、なるほど納得の町並みです。
何の派手さもなく、どちらかといえば静か過ぎる町。
仕事をして、食べて、眠って、また仕事に行って・・・人間らしい普通の毎日を送っていた頃の風情そのまま、といった感じを受けました。
この地区にお住まいの皆さんはこの地を大変大切にしており、
小学生から大人まで、みな進んで掃除をしたり遺跡の管理をされたりしているそうです。
私たちが忘れかけている、継承できることのありがたさ、感謝の思いを問いかけられた気がしました。


銀山公園前で解散です。40人いたツアー客もいつの間にかばらけてしまい、
ガイドさんと一緒に最後まで来たのは私たちともう二組だけでした。

私たちが満員で断られたツアーは「大久保間歩一般公開ツアー」という、もうひとつの大きな間歩を見学するもので、
エリアも違う。その違いが終わってから解った・笑 通りで無料な訳だ。

でも少ない時間を有効に使う為に選んだこのツアー、歴史に疎い私たちにとってこちらのほうが良かったんだと思う。
一時でも銀山が光っていた頃にタイムスリップできたし、人々のささやかでも温かかった暮らしぶりを感じることが出来たから。
何よりガイドさんが素晴らしく、とてもいい人だったから。

語り部として大変熱く、親切に説明してくださったガイドさんにお礼を言ってサヨナラです。



  
銀山公園まで戻り、【五百羅漢石窟】を見学。(撮影禁止)
喜怒哀楽さまざまな表情の五百羅漢、自分に似た顔形のものが必ずあると言われています。

バス停に戻り、時間が合ったので【石見銀山資料館】へ。
先に見ておけばもっと理解できたなぁ(笑)と思いました、とくに銀山のDVDは必見ですね。


お腹が空いたので何か食べようと思っても、実はこのエリアあまり食べるところがないのです。
お蕎麦屋さん、カレー、喫茶が2件ずつ程度しかなく、途中テイクアウトのパン屋さんがあったのでそこでパンを食べて終了でした。
お土産屋さんもほとんどないです、お弁当を持参で歩いている方が多かったのに納得しました(公園があるので)
今まで見てきた世界遺産観光地のどこよりも「何もないところ」でした。
まだ昨年登録されたばかりなのでまだ未開の地なのかもしれませんが、「手付かずの町」という意味では
この程度何もない方が静かでいいのかもしれません。
観光客がどっと押し寄せるようになったら(私たちもその一人ですが)変わっていくのでしょうか・・・



石見銀山をもっと知る為には日本海にある【温泉津】の【沖泊】に行くといいと思います。
銀山から港まで銀を運び、日本から世界へ旅立って言った様子が解ると思います。
また、その【温泉津】には昔のままの木造の温泉宿があるそうで、薬効の高い天然温泉に入ることが出来るそう。
ただ、残念ながらそこも「昔ながら」の為、宿も数少なく、宿泊できる人数も限られている為、
当初温泉津に宿泊の予定を組んでいましたが、どこも満室で泊まる事ができませんでした。
それだけがとっても心残り・・・。



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電車とバスに揺られ来た道を戻り、またも「玉造温泉」へ帰ってきました。
なぜならここしか宿泊の開いているエリアがなかったからです。
玉造温泉は数十年前に家族旅行で来たことがあったのですが、こんなに何もないところだったかな〜。
駅から徒歩20分くらいの間、駅前の酒屋一軒以外は何のお店もお土産屋さんもありません。
それでもこれだけの数の宿が合ってやっていけるんだからオドロキです。


     

今夜の宿は【長楽園】広大な庭園と120坪の大露天風呂があります。
露天風呂はまたしても混浴でした!ビミョーな深さの温泉でした。(座ると頭まですっぽり、立つと体が出てしまう)

島根の旅最終日、「宍道湖七珍」をはじめ、海の幸を中心としたキレイなお料理で早速旅の反省会。


 
最終日となると大人しく眠るのがもったいなくて、ついフラフラと外へ。
ここ数年、温泉街に来ると、浴衣のままプラプラと地元を感じさせるお店に入るのが好きになった。
大人になってからこういう楽しみが少し解ってきた気がする。

今夜見つけたのが「なかおか」
暖簾をくぐると予想通り70代位のおかあさんが、地元のお客さんとおしゃべりしていた。
お腹は空いていないけど飲んだ後の「ラーメン」と「ビール」を注文すると、おかあさんに呼ばれて奥からおとうさん登場。
エプロンを締めなおし、ちょっと面倒くさそうに作る姿がいい感じ。


出来立てアツアツの「野菜麺」食べていると、カウンター越しにチラチラとこちらを見るおとうさんとおかあさん。
客は私たち以外もう誰もいない。
天井に近い位置にあるテレビを見るために、厨房から出てきたおとうさんが私たちと同じカウンターに座った。
自分のグラスに麦茶を注ぎ、そして無言で私にも一杯、カタン、と置いてくれた。

麦茶をもらった私が、
「おとうさん、このラーメンとっても美味しいね。」
と言うと、
さっきまでのぶっきらぼうな表情がほんの少しだけ和らいで、はにかむように微笑んでうんうん、と2回うなずいた。
それをみたおかあさんもちょっぴり微笑んだ。

世間話をするわけでもなく、どこから来たのと聞くわけでもない。
ラーメンをすする音と、映りの悪いテレビから見たこともないドラマの台詞が流れるだけ。
夜も更けた静かな温泉街の昔ながらの小さな店で、体の芯から温まるこの瞬間が好きなのだ。

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翌朝、宿をチェックアウトし、また誰も歩いていない川沿いの道を駅まで歩く。
旅の終わりが車では、早すぎて寂しすぎるから。

今回の島根の旅は派手なところが全くなく、観光地でありながらも静かな旅が出来た。
いつもほどドラマチックなところもなかったのだけれど、それが、ここのよさなのかも。
また数十年後にここに来ても、何も変わってないのかもしれない。
その頃、変わらないことを楽しめる自分がいたらいいな、と思う。
大切なことをちゃんと見失わない、オトナでありたい。




またいつか・・・。



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【11/2〜3 本日のタイムスケジュール】
玉造温泉駅7:07⇒大田市駅8:28 バス9:02⇒銀山公園バス停9:30
間歩ツアー(ガイドの会)10:00⇒12:30ツアー終了・散策 大森代官所跡バス停14:07⇒大田市駅14:33
大田市駅14:41⇒玉造温泉駅15:46

玉造温泉駅8:51⇒やくも10号⇒岡山駅11:38 岡山駅⇒のぞみ⇒東京15:33




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