いびきは体からの危険信号
自分のいびきの音で目が覚めたことのあるかたもいらっしゃるかもしれませんが、睡眠中に発生するいびきを自覚することはとても難しく、ほとんどの場合家族や同僚から「うるさくて眠れない」「寝る部屋は別」などいびきの騒音を指摘されて、はじめて自分がいびきをかいていると知る患者さんがほとんどです。
いびきの原因は?
いびきは、睡眠中に咽頭や舌の筋肉の緊張が低下したときや、アデノイドなどの鼻疾患、咽頭部の障害によって気道が閉塞するときにおこります。睡眠中に空気の通り道(気道)がふさがれて狭くなり、そこに空気が通るので、粘膜が振動していびきが発生するのです。
主ないびきの原因は、主に肥満、アルコール、加齢、鼻疾患、小顎などです。
正常な状態(舌の落ち込みがない状態)では気道が十分開いて、自然な呼吸ができます。
無呼吸の状態(舌の落ち込みがある状態)では様々な原因で気道がふさがれ、呼吸が妨げられています。
肥満や体重の増加によって、いびきをかきやすくなります。運動不足や食べすぎによって体重が増えると、顎の周囲、首周り、喉や舌が太くなり、気道が上下左右から圧迫されて、気道が狭くなるためにいびきをかくようになるのです。
肥満が原因でいびきをかく方は、減量(ダイエット)でいびきを改善できます。下記のイラストは学会でしばしば取り上げられる少年「Joe」です。
⇒肥満度チェック
=少年Joe=
チャールズ・ディケンズの「ピックウィック・クラブ」の中で少年Joeは高度の肥満でいつも昼間からウトウトし、激しいいびきをかいて眠る。このようないびき、肥満、高炭酸ガス血症、昼間の眠気、右心不全などを示す疾患をまとめ「ピックウィック症候群」と報告された。現在この症状は「重度の睡眠時無呼吸症候群」と考えられる。 |
体内にアルコールが入ると、気道内が充血し、粘膜が膨張します。鼻が詰まった感じになるわけです。また舌や咽頭の筋肉の緊張がなくなり、気道が狭くなるので、いびきの発生につながります。お酒を飲んだ夜のいびきが気になる方、お酒はほどほどにしましょう!
筋弛緩薬、睡眠薬、精神安定剤などは筋の緊張を緩和させる作用があります。舌や咽頭の筋肉の緊張がなくなり、気道が狭くなるので、いびきの発生につながります。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などは鼻の通りが悪くなりがちで、粘膜の抵抗が大きくなり、いびきの発生につながります。
咽頭扁桃(アデノイド)、口蓋垂(のどちんこ)の炎症や肥大により気道が狭くなり、いびきの発生につながります。
骨格:小顎の女性など、顎が小さいといびきを発生することがあります。
年齢:年齢による筋力の低下により、いびきを発生することがあります。
「たかがいびき」と思うのは危険です!
いびきをかいていると一見熟睡しているように見えますが、実際には、空気の通り道「気道」が圧迫されていびきが発生しているので、呼吸が抑制されて眠りが浅くなり、ほとんどの患者さんが睡眠不足に陥っています。一時的な軽いいびき程度であれば、それほど問題にはならないと思いますが、毎晩いびきかいたり、「呼吸が止まっている」状態になる場合、身体機能にも影響がでることがありますので、特に注意が必要です。
いびきは他人に迷惑をかけてしまうばかりではなく、本人の体にも多くの危険な問題を引き起こすことがわかっています。いびきから睡眠障害(病気)を疑う人は少ないと思いますが、いびきは自他の睡眠の妨げになるばかりではなく、実は深刻な症状の兆候を示している場合もあるのです。
いびきをかいて、しかも呼吸が抑制され熟睡していないとなれば、日中の眠気、集中力、活力、記憶力が低下し、精神不安定でイライラしたりするようになります。さらに「呼吸が止まっている」ことがあれば、ただのいびきだけではなく、睡眠時無呼吸症候群も考えられます。無呼吸状態は体内の酸素不足を招き、循環器系や呼吸器系に影響を与えます。やがては高血圧、不整脈、心不全、突然死などの様々な深刻な障害が出てくると考えられています。
いびきは、いわば体の発する危険信号です。今後の治療と対策につなげていきましょう。
いびき改善法は?
比較的軽度のいびきの場合は家庭でのちょっとした工夫や日常生活の改善で治ることもあります。例えば横向きに眠る、枕を低くする、アルコールを控える、減量・ダイエットする、スポーツをする、睡眠薬や筋弛緩薬をやめる、点鼻薬を使うなどがあります。
・横向きに寝かせる
横に向かせることによって、気道を拡げることができます。(うつ伏せも同様)一時的な処置ですが、防止策の中でもわりと効果があります。お試しください。

・枕を取る
枕が高いといびきの原因になります。いびきをする人は気道が狭くなっているため、枕をするとさらに狭くなりいびきを発生します。
以上の方法は一般的な防止策です。効果は限定的で、全ての人にあてはまるわけではありません。横向きに眠るなどの防止対策で効果が現れない場合や、睡眠中に呼吸が止まる場合は、病院での治療が必要となります。
防止対策でもいびきが改善しなかったり、無呼吸症を併発している場合には、より効果の高い専門治療が必要となります。治療は、負担の少ない新しい治療方法である睡眠マウスピース治療や、CPAP治療、外科手術などがあります。
これらの治療方法は、市販のいびき防止グッズなどとは異なり、専門医療です。いびきを防止する効果は絶大で、睡眠時無呼吸症候群の治療としても極めて高い効果があります。詳しくは、病院のいびき外来で医師の診断を受けてください。当クリニックでは、効果の高いマウスピース治療を行っていおります。

当クリニックで取り扱う睡眠マウスピースは2種類です。