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2. 従来のエルゴノミックキーボードの問題点

■ 従来のエルゴノミック(人間工学)キーボードのデザインの視点

前述した一般のキーボードが持つ問題点(手首のねじりによるストレス)を解決すべく、人間工学(エルゴノミクス)を考慮したキーボードが開発されています。



その典型的なモデルは、左右前腕がつくる角度(ハの字)を意識して、キー配列が前腕の中心軸と直角になる様に、文字キーを右手用のキーと左手用のキーとに2分割した、いわゆるV字型キーボードです。


キー配列をV字型に設計した代表的な例としてはMicrosoft社のNatural Keyboardや、Kinesis社のMaxim Keyboardが挙げられます。 またこれらのキーボードは、項目1.で説明した、手の甲の傾斜にも配慮されおり、手の甲の傾斜に平行になる様にキーボードの筐体に傾斜がつけられ、キーボード全体が山型になって(あるいは山型にできるようになって)います。



即ち、これらの従来のエルゴノミック・キーボードは、「左右の前腕がつくる角度」と「手の甲の傾斜角度」の2点に配慮して設計されていると言えます。




■ 従来のエルゴノミックキーボードの問題点(互換性の壁)

これらの従来のエルゴノミック(人間工学)キーボードは、確かに慣れると使いやすいと言われています。 但し、これには”慣れると”という条件が付きます。 人間は、ある道具(一般のキーボード)が少々使いづらいと思っても、その道具の使いづらさを許容してしまう高い適応性、順応性を持っています。 従って、一旦慣れてしまうと、後から本当に使いやすい道具が出てきても、その道具への移行期には、また新たな慣れを必要とし、違和感を感じてしまいます。

では、最初に違和感を感じても、使いやすい道具に慣れれば問題は解決するかというと、そう簡単ではなさそうです。 つまり、特に普及が進んでいるキーボードの分野では、家庭用、会社用、モーバイル用等、複数のキーボードを使い分けるのが一般的になっているので、人は使っている全てのキーボードに対して、キー配列・配置の統一性・互換性を求めます。

例えば、キー位置が縦方向に微妙に斜め向いているのは手動式タイプライターの時代の遺産ですが、誰もがこのキー位置でタイピングを覚えたので、今もそのまま残っています。




オリベッティ製 「赤いバレンタイン」
懐かしい! 
(画像提供 ノアックス株式会社













また、現状のQWERTY方式の文字配置より打ちやすいという文字配置が過去研究されましたが、人の「慣れ」を打ち破れず、普及しませんでした。 

結局、普及品を超えて、あらたな設計思想を導入するには、普及品との「互換性」が求められると言えます。

また、従来のエルゴノミック(人間工学)キーボードに限って言えば、まず筐体がデカすぎます。 いくらディスプレーがCRTから液晶に替わってスリムになっても、ディスプレーの省スペース分をキーボードに取られてしまっては意味がありません。 また、V字型や、キーボードを傾斜させたデザインはノートブックパソコンへの採用は困難と思われます。

加えて、V字型や山型のデザインは、ブラインドタッチが難しいという欠点が挙げられます。 Kinesis社のContured Keyboardでは、手首のねじりを徹底的に排除する為に、キー群が左右に完全に離れており、更にお椀状に窪んでいるのでキーの視認性は更に低下します。

以上の様に、エルゴノミックデザインと言いながら、従来のエルゴノミックキーボードには、問題点がありそうな事が見えてきました。

ところで、人間工学的視点でキーボードをデザインする場合、「左右の前腕がつくる角度」と「手の甲の傾斜角度」の2点のみを考慮すれば、それで十分だったのでしょうか・・・・・


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特許出願中 特開2004-288166(「キーボード」)      
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