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実践データベースマーケティング(第5号)
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『実践データベースマーケティング』第5号をお送りします。
発行者の岩瀬です。ホームページを開設しました。ビジネスマンの情報活用を
テーマにしています。実践データベースマーケティングのバックナンバー等も
こちらでご覧いただけます。
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/o-iwase/

●○ 目次 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

1.ターゲットマーケティングとワン・トゥ・ワン

2.お得意様への対応
2.1.パイロット口座へのお礼
2.2.購入履歴で区別する

3.その他属性での対応の仕方
3.1.地域によっての工夫
3.2.年代によっての差別化

【今週のキーワード】:お得意様
【今週のお勧め書籍】:最強組織の法則(ピーター・M・センゲ氏)

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1.ターゲットマーケティングとワン・トゥ・ワン
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今回はターゲット(セグメント)マーケティングについてお話ししたいと思い
ます。現在最先端のマーケティングと言われるのは、ワン・トゥ・ワンマーケ
ティングでしょう。個人を対象にして、一人ひとりに合わせたマーケティング
を研究している時期といえます。しかもワン・オン・ワンでなくワン・トゥ・
ワンであるところが更に難しい問題を含んでいます。ワン・トゥ・ワンでは
双方向を考えているからです。インターネットはワン・トゥ・ワンの実験場
なのだと思います。いきなりワントゥーワンを実践するのはコスト的にも
仕組み的にも難し過ぎます。

考え方としては個別対応だが、実践ではロットを考えるのが自然な方法でしょ
う。お客様をその状況によっていくつかのグループに分けて対応を変えること
を考えてみましょう。私が申し上げる内容は個別データがなければ出来ないと
言う意味では個別マーケティングです。しかし実践ではいくつかのグループを
対象にするという意味ではターゲットマーケティングです。ターゲットマーケ
ティングと個別マーケティングの中間的なものと考えています。

現在でも色々なビジネスルールを見つけ出すことはできます。ある行動があっ
たら、そのお客様には決まった対応をするというルールです。この組み合わせ
・積み重さねがCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に
なっていくのだと思うのです。問題は実際に個別に対応する場合の経費です。
今後技術の進歩やコスト構造の変化によって、少しずつ個別対応の範囲が
広がっていくのだと思います。

2.お得意様への対応
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まず最初に考えなければならないのが、お得意様への対応です。商品では
ABC分析やPPM分析によって、管理の方法を変えます。同じようにお客様
でも、企業との取り引きの大きさによって対応を変えるべきです。実際に
パレートの法則はお客様にも当てはまります。パレートの法則は2:8の原理
と呼ばれるものです。2割の人の資産が全体の8割を占めるというものです。

通販や量販店では1回の販売で2:8の法則は成り立ちませんが、期間を長く
とってみればキチンと当てはまります。これはお得意様ほど長い期間お取り引
きいただけるからです。この2割のお客様に対して残り8割の方と同じコスト
のかけ方をするのはまずいやり方だと言えます。

2.1.パイロット口座へのお礼
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お客様から大変評価されたものにこのお礼があります。通販では通常の販売
期間の前にテスト展開を行ないます。これをパイロットカタログと呼びます。
私はパイロット口座にはお得意様を選びました。そして時々、カタログと一緒
にお礼の品を同送したのです。メリットは次のようなものです。

●お客様の期待を良い方向に裏切ることができる
●自分は特別だということがハッキリと分かる
●少ない人数で必要な商品データを取ることができる
●最悪の場合は再度カタログを送付しても良い
●欠品がない

一つひとつご説明しましょう。

サービスの満足は、期待と結果のバランスで決まります。大きな期待をかけて
いたところに、期待以下のサービスが行われると不満が生まれます。逆に期待
していなかったサービスを受けた場合には感動が生まれるのです。感動は
ファンを作り、口コミを作り出します。このためにお得意様には予定外の
サービスをする必要があると思います。

この例の場合では、お客様に次のようにお報せしました。
『いつもごひいきをいただきありがとうございます。誰よりも早く最新の
カタログをお届けします。弊社より日頃の感謝の印としまして○○をお送り
しました。ご迷惑かも知れませんが、プレゼントですので配送の間違いでは
ございません。今後とも弊社をよろしくお願い申し上げます。』
正確な言いまわしではありまんが、内容はこのようなものです。ここでは他の
お客様より早くお届けすること・定例的なサービスではないことをお報せしま
す。あなたは私たちにとって特別なお客様なのですよ、というのが趣旨なので
す。誰でも特別扱いをされたいものです。これもまた口コミを生む秘訣です。

本来はジャストシーズンに販売する方が売上金額は伸びます。しかしある程度
早くデータがそろわないと受注予測ができません。そこで営業と商品では伝統
的な対立が起こります。営業にすればなるべくパイロットは小規模にしたい、
商品にすれば一定以上の注文が欲しいのです。そこで小人数でも沢山売れる
お得意様にお願いします。この方達は多少早くカタログをお送りしても捨てて
しまうことはありません。

カタログを早く送ってしまって極端に注文が少ない場合は、もう一度カタログ
をお送りします。しかしコストパフォーマンスは落ちますから、なかなか採算
にのりません。ただしお得意様であれば採算もかなり有利なのです。通常は
問題なく売れますので最悪のケースを想定した場合のことです。

最初のうちは商品に余裕があります。販売していくにつれて、注文の多いもの
と少ないもので差が大きくなります。計画との狂いも大きくなって欠品や
不良在庫が出来てくるのです。初めのうちは欠品にはなり難いのです。

以上のように考えて最初からプレゼントを送ったのです。ただし連続的には
行なっていません。毎回プレゼントがあるのでは、特別なサービスが期待に
組み込まれてしまうからです。毎回手を変えてお客様の期待を良い方向に
裏切ったのです。最初からプレゼントをした時には、何人ものお客様から
お手紙をいただきました。注文も通常よりも多く、プレゼントのコストはすぐ
に取り返しました。別の時には期間限定で早く注文をいただいた方に割引を
行ないました。他にもまとめ買いを促進したり毎回新しい方法を考えました。

2.2.購入履歴で区別する
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購入履歴で対応を変えるのは一般的な方法です。取り引き回数がない・1回・
2回以上あるという区別が意味のある方法だと思います。顧客管理の目標を
取り引き関係の維持ということにおけば、複数回お取り引きのあるお客様を
増やしていくのが当面の目標です。一度きりのお取り引きで終わらせては経費
倒れになってしまいます。そこで見込み客の開拓・初回注文・継続注文という
ように大きく三つのプロモーションを行ないます。

もしも継続注文し易い商品があるのなら、購入商品の内容まで分析していきま
す。どんな商品をお買い上げいただいたお客様が再度ご注文いただき易いかと
いうものです。私の経験では。継続注文の起こり易い商品には次のような特徴
があります。

●オリジナル商品
●企業の強み商品
●アウター衣料(人に見られるもの)
●ある程度以上の価格の商品

などです。比べて継続注文率の低い商品には次のようなものがあります。

●一般流通品(ナショナルブランド)
●機能商品(選択の要因が主に商品の機能であるもの)
●インナーなどの実用衣料(人の目には触れないもの)
●商品単価の安いもの

どこで買っても大差のない商品は初回注文をいただき易いものです。そのかわ
り、継続した注文はなかなかいただけません。初めてのお客様でも買い易い
商品・お得意様に良く買っていただく商品という括りによって品揃えやプロモ
ーションも当然変わってきます。これを調査するには購入実績を数量化3類や
4類で解析してみます。EXCELなどの表計算ソフトでも調査できます。

こうして継続の期待できる(ファン)商品を明確にしてやります。すると次の
ようなグルーピングをすることができます。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|注文回数|ファン商品の購入あり|ファン商品の購入無し|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|なし  |    ×     |   (5)    |
|1回  |   (3)    |   (4)    |
|2回以上|   (1)    |   (2)    |
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

こんな5つのグルーピング毎にプロモーションや対応を変えていくのです。
勿論RFMで区切る方法や独自のポイントで区切る方法もあります。今まで
RFMについて詳しい説明をしていませんでした。次週では実際的なRFM
の作り方をお話ししたいと思います。

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3.その他属性での対応の仕方
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購入実績だけでなく他のデータによって対応を変える場合があります。企業で
持っているデータによって違いますが、簡単なアンケート結果を使っている
ところもあります。業界のRFMをアンケートで収集したり、生活の中の
イベントの発生時期を予測したりします。

3.1.地域によっての工夫
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当たり前のことですが、日本には四季があります。そして地域によってかなり
差があります。そこで夏カタログは南から冬カタログは北から配り始めます。
また地域によって大きなイベントや災害があればそれも考慮します。阪神大震
災の時には被災地へのカタログ配布は差し控えました。サミット開催時の東京
では配送が遅れる可能性があることをお報せしました。

通販ではお客様によって案内文を打ち分けます。宛名や注文書と一緒に案内文
を印刷したものを使います。あらかじめお客様の名前や顧客コードなどを打ち
出したハガキをです。案内文の一つの使い方として地域を使ったことがあり
ました。そのシーズンは<ゆかた>を意欲的に取りいれました。そこでお客様
のお住まいの地域毎に花火大会の予定を打ち分けたのです。そして何頁をご覧
くださいというページ連動です。実際のゆかたの売上にも効果がありました。

3.2.年代によっての差別化
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統計的に言えば、年代別に人気の高い商品というのも分かります。補正下着は
20台前半と50才以上のお客様に良く売れます。あくまで統計的にですが。
他にも年代によって差があるものです。そこで年代によっての売れ筋情報を
お報せしたりもします。

年代によって売れ筋商品だけのチラシを作ったことがあります。未注文リスト
や休眠(過去注文があったが現在はない)リストに50g定型郵便物として
送りました。カタログ配布では採算が合わないので使っていなかったリストで
す。通常はこの大きさでは2〜3%位の反応率なのですが、この時には良い
成果を収めました。全体で4%近くの注文発生率でした。何種類ものテストを
織り込みましたから、中には4%を超える成績を残したものもありました。

他にも年代と地域で、お母さんに見せてねというキャンペーンを展開したりも
しました。団塊の世代と団塊Jr.を同時に取りこむような手法です。


長々とご説明しましたが、要は次のようなステップになると思います。

●仮説を立てる(お客様の立場で考える)
●ビジネスルールを探る(意味のあるグルーピングをする)
●実際に対応を変える(どこで対応を変えられるか)

この3つは違う次元のものです。ビジネスルールについてはお客様個別に
考える、或いは調査することが出来ます。実際の対応ということになると、
コストまで考えて決めていくことになります。

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【今週のキーワード】:お得意様
事業はお得意様が育ててくれます。ビジネスマンの仕事の評価は上司ではな
く、お得意様が決めてくれるものだからです。そうであれば、お得意様が誰な
のかを把握しておく必要があります。商品のABC分析も大事ですが、お客様
のABC分析を考えなければならないと思います。
そしてお得意様の声を聞く機会を作り出さなければならないのです。あなたは
お得意様の声を聞いていますか?

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【今週のお勧め書籍】:最強組織の法則(ピーター・M・センゲ氏)
この本は the fifth discipline という題名で次の5つのことを説明していま
す。共有ビジョン・メンタルモデル・チーム学習・自己マスタリー・
システム思考の5つです。メンタルモデルというのは無意識に決めつけている
事柄に関することです。改めて考え直してみればおかしな決まり事があるもの
です。往々にして

●企業(或いは部門)の立場だけで考えている
●時代が変わって環境が変わっているのに変化していない
●目的と手段を取り違えている
●上下の意思疎通が悪いため誤解が生じている

ということが起こり易いものです。そんな時に、無意識に決めつけているもの
はないか、と改めて考えてみることが大切なようです。山本七平氏の『常識の
非常識』も改めて疑って見る目を養うのに効果的な本です。
ホームページでは他にもお勧め書籍をご紹介しています。是非遊びに来てくだ
さい。 http://www.bea.hi-ho.ne.jp/o-iwase/index.htm

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発行人/編集人:岩瀬 理(Osamu Iwase)

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