◆第二小隊十二班に帰る
三月上旬、命令が下り移動が始まった。山を下りクインガレーから後方に退き、懐かしいレミナの町を通り抜け、ヘンサダの町に来た。その間四日間の行軍が続いた。
その頃、通信班が解散したので、私は金井塚中隊長や溝口班長と分かれて、中隊本部から元の瀬澤小隊の自分の班に帰ってきた。その時、寺本班長は他所に転属し、古参の戸部兵長が班長に任命されていた。
行軍は、輜重車に我々中隊の装備を乗せ馬に引かせて行った。ここしばらく山の中で幾らか標高の高い所にいたので余り暑くなかった。しかし、遮蔽物(しゃへいぶつ)のない平地の道路では日中の暑さはやはりこたえた。南部アラカンの山から降りて、久しぶりに見る町の様子は、子供達が元気で遊び若い娘達が奇麗にしており、なんとなく和やかなものを感じた。
以前から、ビルマでは日本軍は軍紀を正しくしており、現地人からひ・ん・し・ゅ・く・をかうようなことは一切していない。娘さんを見ても、ひやかすようなこともせず、秩序正しい兵隊として行動していた。けれども、久し振りに見る女性の優しい姿に思わず目がそちらの方に向くのは仕方のないことであった。

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