1998年2月mei01

弓の清水(ゆみのしょうず)

環境省「平成の名水百選」

源平合戦をしのぶ清水

高岡市中田常国

 高岡市中田常国は、市街地から南東に約7km離れ、庄川がつくった 扇状地内にあり、とりわけ良質な水に恵まれた地です。 この地(般若野)は、寿永2年(1183)、木曽義仲が平維盛・通盛の大軍と 白兵戦を繰り広げた古戦場としても知られ、このなかに、弓の清水があります。 『越中の山街道を進撃してきた義仲は、途中兵たちがのどの渇きをうったえたので、 部下の進言により、「南無八幡大菩薩」と唱えながら、弓を引いて矢をがけ下の 地に放ったところ、そこから清水が湧き出た。その水で兵たちののどの渇きを 癒し、士気が大いに上がった。』 弓の清水の名称は、この故事に由来しています。近くの大悲寺(尼寺)に祀られて いる観音様は、義仲がその時に感謝してこの地に安置したお守り本尊観音像と いわれています。この清水はどんな日照りの時も枯れたことがなく、また、病気の人も この水を飲むと治ると言い伝えられているとか。
 ちなみに、中田から庄川をはさんで対岸の戸出大清水にも、次のような木曽義仲と水に関する 伝説があります。  『大清水は、湧き水の豊富な所で、このあたりの人々は、その水で布を晒していた。 寿永の昔、一人の娘が、清水の流れのほとりで一心に布を晒していたところ、急に 水がにごり、せっかく白くした布が泥まみれになった。怒った娘が顔をあげると、 一騎の武者が流れの上流を渡っていくのが目にはいった。日頃から力自慢であった 娘はその武者に駆け寄ると、馬もろとも目よりも高くさしあげて投げとばした ところ、西の方、何十枚も田をへだてた所にあった松の大木にひっかかった。 この松は「木曽投げの松」といわれ、かってJR戸出駅の東寄りで見ることができた。 義仲は、この武勇に感心し、巴と名づけて侍妄とした。』

 戸出から県道富山戸出小矢部線を中田方向へ、中田橋から約2.5km、常国 神社の向かいにあります。今では、この地に、名水を利用した 流しそうめんの店があり訪れる人ののどを楽しませています。 なお、弓の清水古戦場は、昭和44年に高岡市史跡に 指定されています。平成14年には、地元の常国旧蹟保存会によって、 水汲み場の新設と源泉池周囲の保護石柱が修復されるなど、 大切に管理されています。

 ※泉は、地下水面と地表との接触部にできるので、地形に影響されることが 多い。そこで泉は、地形の面から沿河泉、谷壁泉、崖下泉、凹地泉、扇端泉などに 分類されます。崖下泉は、山地や台地の縁辺に多く見ることができ、崖の下から 湧き出るものです。「弓の清水」は、典型的な崖下泉です。


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 弓の清水(動画/33秒)〔登録日:2003/07/20〕


弓の清水1  木曽義仲が平家一族と戦った古戦場です。【2003年1月撮影】



弓の清水2  弓の清水(ゆみのしょうず)全景です。【2003年1月撮影】



弓の清水3  井戸の中には、お賽銭が。【2003年1月撮影】



弓の清水4  源泉池周囲の保護石柱が修復され、水汲み場も新設されました。【2003年1月撮影】



弓の清水5  自然湧水であることを周知する看板が立てられています。【2003年1月撮影】




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