2003年6月mei01

龍梅水(りゅうばいすい)

龍梅伝説の水

高岡市国吉(笹八口、手洗野、五十辺)


 龍梅水の伝説です。
 その昔、小矢部川は国吉地区の山すそ近くを流れ、手洗野で深い淵をつくって いました。ここに一匹の雌龍が住んでおり、また、五十辺の奥の白山池に雄龍が あって、この二龍は夫婦として鍾乳洞を通じて行き来しておりました。
 あるとき赤丸城の殿様が、五十辺の山中へ狩りに出かけました。そこで、身の丈 60mもの大蛇の姿となって山を巡っていた雄龍に出くわし、驚いてこれを 弓矢で射ち殺したのです。それ以来、殿様は原因不明の病気になり、ついに 亡くなってしまいました。
 このころ手洗野にある古いお寺で、夜の明ける前から和尚さんが、仏様に お経をあげるのを日課としておりました。そこへいつからともなく、 一人の美しい女の人がお堂の外に佇んでそっと手を合わせる姿が見られる ようになったのです。和尚さんが訳をたずねると「罪もない夫が害された ために、私は龍の身でありながら赤丸の城主を呪い殺してしまいました。この上は、 夫とともに往生できるよう願うばかりでございます。」
 和尚さんはこの龍女の心を哀れに思い、後日、本身をあらわしてたずねて 来るようにと言ってやりました。
 約束の日になると、もの凄い暴風と大雨に混じって霰までもが降り注ぐ黒雲が あたりをおおう中、一匹の巨大な龍がお寺の禅堂に巻きついています。 和尚さんは怖れる気配もなく、仏・法・僧に帰依するための三帰戒を授け、 仏様の弟子となったことを示す血脈をこの龍の耳にかけてやると、龍女は 満足の涙を流していずこともなく飛び去りました。
 後日、龍女は女の人の姿となってお寺にやってきてなにかお礼がしたいと 言います。この寺は水の便が悪いので困っていると和尚さんが言うと、 龍女は「お寺の境内のどこでも好きな場所を掘って下さい。人間の 肌のような木の根を起こせば水が湧くでしょう」と答え、さらに 梅の実を二つ、残していきました。実からは立派な紅梅と白梅が 育ち、また、教えられた通りに掘ったところから清らかな水が あふれ出したのです。やがて人々は、この泉を「龍梅水」と呼ぶように なったということです。 樽谷 雅好(高岡市児童文化協会)

 高岡市手洗野の信光寺にこの伝説が伝わっています。井戸跡が残っているようです。 なお、龍女の残した梅の実は芽を出し花を咲かせて いたが、200年後の天明3年(1783)に枯れてしまい、第13世密宗和尚がその木で観音像を 2体彫り上げ2龍を供養、その像は今も信光寺に安置されているそうです。


「龍梅水の女神」像  笹八口にある国吉配水場(水道つつじ公園)の「龍梅水の女神」像です。梅の小枝を持っています。 付近に伝わるこの伝説を踏まえ設置されたものです。【2003年6月撮影】



信光寺  手洗野の信光寺です。【2003年6月撮影】



白山池  五十辺(いからべ)の白山池です。ここに雄龍が住んでいたとか。【2003年6月撮影】




【とやまの名水に戻る】