目からウロコ その2 オリエンテーリング技術、ブラッシュアップへのヒント
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オリエンテーリングのレースでは、よく、『基本技術ができなかった』、『なんてことないミスをしてしまった』『トップラップから20秒離れた』、『よく走れなかった』、『直進ができなかった』、『たいしたことないタイム』など、多くの反省点が聞こえてくるが、ではそれらの反省を次へ生かすために本当に具体的な問題点とやるべきことを上げて次の練習に生かしているだろうか?なんてことないミスをしてしまうということは、すなわち身に付いてないこと、なんてことある(というのだろうか)ミスだということに本当に気づいているのだろうか、ただ反省を述べただけで、『次はちゃんとやろう』だけで済ましてはいないか?ちゃんとやるっていったい何をちゃんとやるの?実はステップアップの鍵はこういったミスやうまくいったことからより具体的にやるべきことを細かくしていき自分がイメージできるレベル(の言語、映像)で実践につなげていくことではないかと思う。
例えばテニスでサーブを打つとき、より速いスピードでエースを取るような、もしくはそれに近いサーブを打てるようにするためにはどうするか?一球一球打つたびに微妙にフォームを変えていく。トスの上げ具合はどうか、ラケットの面はどうか、肩の角度はどうか、開いた足の幅は?コートに対して体はどっちを向ける、どこを狙うのかなど、一度にではなく打つたびにあれこれ考えて工夫しながらエースを狙えるようなサーブを打てるよう練習をする。実はオリエンテーリングの技術も同じことが言えるだろう。森の中で1人だからなかなかわからないと一般的には言われているけれど、自分で事細やかにレース中にやった動作を振り返り、何をしたらよいか?を具体的に考えて次へ実践し、それを繰り返していけば、スキルアップできるはずだ。(もちろんじぶんがどういうことができるようになってオリエンテーリングをしているかのイメージがないとできないし、そう簡単にはいかないかもしれない)。
今の私はできていない部分はもちろん、あえてできていると思っている部分にも注目して分析を行い始めた。
何をするのも地道にbreak downしていきながらやっていくことが大事、先シーズン、あえて避けていたこの課題に、やっと取り組み始めたのだった。

以下に、12/4に秋が瀬公園で行われた埼玉パークOフェスタのレースから反省と課題を洗い出し、次への課題に生かすために(翌週の筑波大大会)コーチとディスカッションしたことを上げる。実際の技術の話しについて今さらのことばかりで役にたたないかもしれないが、ブラッシュアップのためのアプローチのしかたについてはひょっとしたら参考になるかもしれない。興味ある人はどうぞ。

最初、コーチへ全体の反省としてメールしたのは以下の文章。
1 週末の報告
土曜日;パークO
久しぶりのオリエンテーリング。今週クタクタだった割りにはよく走れた。金曜restにしたのが大きい。が、ナビの部分で後半遅い。走るのに精一杯になってしまいアタック・周辺情報を極端に省いてしまいスピードが落ちて『探す』時間が増えてしまった。確実にコントロールにつくため、極力スピードを落とさないようにするため地図から必要な情報をもっと取り入れること。余裕で走れるような走力をつけること。方向の意識が雑。コンパスを振らないで進むのならもっと方向を意識するべし。脱出の方向。まだコントロールから正置してこっちの方向に行くという動作が無意 識にできていないしぎこちなく遅い。それも課題に入れていきます。
あわせて60秒少々の無駄あり。それにしてもカッシーとそんなにまで差がついてしまったのはショック。ラップ解析がそのうち出てくる予定なので詳細な反省をするべし。


それに対するコーチからのメール
「探す]時間の問題のような気がします。この「探す」という課題はこのとき特有なんだろうか?それともいつでも最近はそうなの?ひょっとすると、技術的な課題の洗い出しのために、スプリントのランオブをしたほうがいいのかも。スプリントはそういう意味ではすごくいいトレーニングだと思うから。

レッグ1。赤が実際のルート、青はより良いと思うルート
『探す』、その他の反省点として、2つのレッグでの動作と判断に注目して具体的に取り上げた。
・1つは白い中の植生界。植生界の判別は元々得意なほうではないので、それを見つけるより手前からまっすぐ進めばあるだろうといって進んだ。(*レッグ1)

・も1つは地図でかかれているオープンと実際私が思っていたのと違っていたため 戸惑った(*レッグ2)。

・さらにもう1つはまっすぐ方向を意識して進むはずなのにそれを忘れて目に見える特徴物に反応してしまった。->図なし、今回ディスカッションせず
今回に限らず今までと同じような課題だと思います。


レッグ1は白の植生界近くにある小凹地。よくよく考えれば道を引っ張ってオープンからアタックすればすぐのところにあったのだが、道周りが少しだけ遠回りになると思い、小道の分岐からまっすぐ進んでオープンを越えたらすぐにでてくるから大丈夫とプランして実行。が、実際遠くからは見えなくて『不安』になり、周囲の緑との位置関係からだいたいの位置を『探していた』ため 、極端にスピードは落ちた。実際思っていたよりかなり東の道寄りにコントロールはあった。男子のトップラップよりこれだけの距離で20秒近くも遅い。

レッグ2はコントロールからまっすぐの方向を意識して進むと道がでてきてそのまま進むとラフオープンがあって道があるからそれに乗れたらラッキー、そのまま方向維持して次の道、緑とラフオープンの境まで出る。そこからアタックとのプラン。実際は方向維持して道に出たとき目の前に見えるラフオープンは自分が思っていたものと違うドロドロの地面だったのでなんだこれはと思い少し左側(西側)の白い林を通って進み、またやっぱりここでいいのだとオープンに乗り戻した。(白の林が汚かったため)頭の中では方向維持をしていればいいのだ、ラフオープンだろうがなんだろうが、方向がずれない限りアタックへはいけるはずと思ってはいたのだがすぐに切り替わらなかった。ここでもトップラップより20-30秒近くも遅れている。
レッグ2。赤が実際のルート、青は最初のプランルート
(レッグ2について)スウェーデンの時から思ったけれど、ちょっとしたところで差がつくのは、この前の勢子辻の練習でもそうだったが(ピークについて取り違える)地図にかかれているものと実際現地であるものとの対応がすんなりいかない。もっともっとこれはこういうものなのだと数学の公式のように納得して、データ-ベースを増やしていかなくてはならないんだろうなと思います。

と言ったところ、コーチからは
ある程度はそれで補えます。上記のようにかなり永い期間やっても直感的に理解できないってことは、人工的に覚えてしまうしかないと思います。
といわれた。さらに、
>・1つは白い中の植生界。植生界の判別は元々得意なほうではないので、それを見つけるより手前からまっすぐ進めばあるだろうといって進んだ。
>・も1つは地図でかかれているオープンと実際私が思っていたのと違ってい > たため戸惑った。

のいずれも、そういうことがあろうことを想定し、別の方法を常にバックア ップでもつように、プランが自動化されるようにできると思いますか?
という問いかけで終了。これに対して私はハッとしたのだった。

できるようになりたいです。よく考えたら別のプラスの情報を考えずにマイナスのままで済ましていた。今までも意識しないとそうだったかもしれないです。
(レッグ1について)植生界がわからなければ他の方法を足せばいいのに、大丈夫、直進だけでいける、、と考えていた。。わからなければすぐ横にある道にでてアタックをひきつけたら楽だと考えればよかった、など。
(レッグ2について)現地と対応ができずに戸惑ったところでは、でもこの方向に行けば大丈夫と思い直したもののそれが不安でスピードが落ちたとか。おー、筑波大大会すごく楽しみになってきました。


と目からウロコ状態、勝手に自己解決。自分でそれなりにできるつもりで対処していたことが実はそれでは良くなく、そのせいでタイムがよりかかってしまうのでは?と気づいたのだった。

コーチからまとめとして、
うーん。田島利佳、どこで「目からうろこ」なのか、全く予想できず。
そうなると
1)不安を感知する
2)その不安を解消できる特徴を何かしら見つける
3)見つけられなかったら、仕方ない。丁寧にいく。そんなところではないかな。

それに対して頭の中で実際にやっている姿をリハーサルしてみた。

なるほど、具体的な手続きのイメージできます。不安を解消できるのは特徴だけではなくて技術(例えば直進をしっかり意識する)もありますよね。
だけど、

1)については、直進だけでいけると思っていった時には不安はなかった、進むうちに思ったところに出てこなくて不安になり、周りに見えるものとの相対位置を見ながら進んだのでスピードが落ちた、『探した』になったんだと思います。
事前のルートチョイスでまっすぐ行くより道をひきつけたほうがいいルートだと判断できればよかったんだろうなとは思うんですけれど。不安もしくはやばいかも?っていう感知は本当は次のレッグを見たときにできれば事前にそれを回避できるプランが出来るはずだと思います。でも実際進みながらでてきたら上にあるようにしていくべきですね。
いやはや『目からうろこ』ですよー。
> のいずれも、そういうことがあろうことを想定し、別の方法を常にバックアップで
> > もつように、プランが自動化されるようにできると思いますか?
別の方法をプラスして補うという発想はあまりなかった。ただ、3)だけで今まで進んでいたかも。といっても無意識にできている部分もあるような気もしています。



そうです。不安への対応は事前にやらないと意味がない。その時になると、たいてい 時間切れ。間に合わない。

ここまで根気強く読んでくださっているあなた、何を今さらこんな基本的なこと言っているんだーと思うでしょ。 でも改めてこの当たり前のことがそうか、なるほどと思えたことが次へのステップにつながると思うのです。

別件でのメンタル面の課題のアプローチでコーチと次のようなことを話しています。
自己評価の厳しさ>他人の評価
 はいいことだと思うよ。ただ1番をとることなのかな?内容的な評価はどうだろう?僕の評価を正確にいえば、「技術的に不十分なわりに結果が出ている」何で補っているか興味はありますよ。それを自分で意識できれば、もっとうまくなれるんじゃないの?たとえば上のことだって、もうとっくに身に付けていてもいい技術だと思います(まあ人によりタイプの違いはあるが)。


自分でも笑う。何を今頃、、といったところですね。なんだろう、感覚的にできているようなところがある。ひょっとしたら実は感覚のみ?直感?でピピピっとしたところで(なんじゃそりゃ)オリエンテーリングをしていたら速いかも、たまにはそれでやるかなーと思うこともあるんです。例えばもっとレベルは低かったけれど97年の大島セレ途中までは速かったなあ。でもそれだと上手くいっているときはいいけど上手くいかなかったとき(自分の技術の限界が超えてしまったとき)のリカバリーが全く出来ないのでだめだし、自分が思っている感覚的ナものなんてこうや って村越さんと話をしてたらたいしたことないし、すぐぼろがでるしなと思います。

そういうことだと思います。95%うまくいっても残りの5%で5分ミスをしたら、結果が残らない。本当は直感のいいところを使って、(コストをかけずに)理詰めの技術で補うことです。でも最初はコスト(面倒、時間)をちょこっとかけても補っておきましょう。最終目標はノー・コストです。
★筑波のレースに備えて、どんな不安が発生しそうか、あらかじめシミュレートする といいでしょうね。


ということで、筑波のレース中はあぁ、なるほどこういうことだーと思うことが数回、うーむ、まだ無意識にできない別の課題もあり、とてもチャレンジングにやるべき課題をしながらレースを進めた。結果はともかくステップアップのために実りがあった、何かのきっかけになるレースとなったかもしれない。
すごく簡単そうに見えるこのレッグ2つは、自分ではもたついてはいたが、そんなにたいしたミスではないと思っていた。がタイム差や行った手続きや考えを一つ一つ細かく振り返り分析することによってここまで話が展開されて現状把握、次ぎへ の課題が導き出された。
もし本当にスキルアップを臨むのなら、例えば1つ1つのレッグでそれぞれの項目(プラン、直進、チョイスなど)を作り、それをチェックし評価していくことなどからアプローチすることも1つの手段なのではないかと思う。ようはただ『がんばる』、『気合いで走る』だけでは上達するのはそう簡単じゃあないということかもしれないね。