米国公認会計士、CPAで生きる「英語」「会計」――転職の武器に、社内で活用。

 「英語」「会計」「IT」――。現代ビジネスマンの“三種の神器”とされるスキルだ。このうちの2つに関係する資格として注目される米国公認会計士(CPA)。取得後は多くの人が転職に動くとされるが、もちろん会社に残っても活用できる。来年4月には試験制度が大幅改正され、日本人受験者には追い風になるとも見られるCPA。取得を考えるならチャンスかもしれない。

取得者の半数、一年内に転職

 CPAを取得すると、半数は転職に動くといわれる。
 「合格後は、かなりの割合で転職している」と出川雅人・TAC第一教育部マネジャー。U.S.エデュケーション・ネットワークの卒業生調査でも合格者の五割近くは一年以内に転職している。ただCPA資格があれば必ず転職できるわけではない。「書類審査ではねられることがなくなる」程度との声もある。
 CPAは国際会計の基礎知識がある証明として、社内でも活用できる。財務・経理部門でなくても、営業職として海外赴任した時に現地の活動で差をつけられる。「海外を含めた子会社のマネジメントなどにも活用できる」(U.S.エデュケーション・ネットワークの三輪豊明社長)。

合格までの勉強、平均で1000時間強

 各予備校での受講者の、合格までの平均勉強時間は千時間強という。仕事後に一日に二―三時間勉強した場合、一年半ほどかかる計算だ。だが、「日本の公認会計士の十分の一程度」(ANJOインターナショナルの安生浩太郎社長)。「米国ではCPA取得者の多くが一般企業で活躍している」(三輪社長)。
 日米で資格に対する考え方の違いはあるが、CPAは能力の証明書という意味合いが強そうだ。
 試験問題は英語だが、英語の能力が問われるわけではない。会計専門用語は新たに覚える必要があるが数は限られる。U.S.エデュケーション・ネットワークの場合、受講当初の平均レベルはTOEICで四百点台から五百点前後。「CPAの勉強をしながら、英語を学びたいという人も多い」(三輪社長)。
 会計知識も予備知識がなくても大丈夫そう。「受講生のうち経理・財務部門に勤務している人は四分の一程度」(安生社長)だ。

 来年四月には試験方法が変更される。受験者は米国内の決められた試験会場に行き、コンピューターを相手に問題を解く形式になる。日本人の弱点とされる筆記式の問題がほとんど無くなる。
 さらに、四科目すべてを年二回(五月と十一月)に一括受験する必要があったが、新制度では十八カ月以内に四科目に合格すれば良い。受験機会も年四回に拡大する。
 「科目合格制の緩和など、日本人には受けやすくなるのは間違いない」(安生社長)という。
 ただ、受験者の多くが予備校を利用する傾向は変わりなさそうだ。
 どの予備校も受講生は社会人が多い。このため、講義は週末に設定するケースや、ビデオ講座を利用する例が多い。受講者の年齢層はTACの場合、二十歳代後半から三十歳代で五―六割程度を占める。さらに上を目指すビジネスマンが、一つのターゲットととらえているようだ。
(大林卓)

外資系から評価、意欲生む効果も

 システムエンジニア(SE)として金融機関向け汎用システム開発を担当していた岡本晋衛さん(34)。「幅広いビジネス分野に携わりたい」と、二年間勉強して取得した。
 翌年の二〇〇二年春には外資系の大手システム会社に、この七月に海外の有名ブランド会社に移った。転職のたび自分が理想とするビジネス場面に近付いているという。
 「最初の転職も、いまの会社にスカウトされた際もCPAがアピールポイントだった」。会計知識とIT知識をを持つ点が評価された。「さらにやりがいのある仕事を求めようと思い始めた」と、自分の中にわき起こる前向きな意欲を実感する。

能力アップ求め、3年かけて挑戦

 キリンビールの藤田伸朗さん(38)は二〇〇二年にCPAを取得した。一九八八年の入社以来、営業一筋だったが、「自らの能力を広げるために財務・会計をしっかり身につけたい」と、CPA挑戦を決めた。
 日常業務をこなしながら、専門学校のビデオ教材で学習。合格までに約三年かかった。現在は、オーストラリアにある関連会社、ライオンネイサン社に出向、キリンとの間の戦略構築などに携わっている。
 CPAは日常業務の中での付加価値と考えている。「営業職としてCPAを取ることは、日本人以外のビジネスマンと事業採算制などを話し合う際や事業戦略の構築時の財務知識などに役立つ」と話す。投資家のボーダーレス化など、事業を取り巻く環境に敏感に反応できるようになったと実感している。

 ▼米国公認会計士 米国の会計の専門家資格。国際会計基準の導入機運などを背景に、日本でも一九九〇年代半ばごろから注目され始めた。受験資格は州で異なるが、試験は全米統一だ。
 受験資格は原則として四年生大学卒業か卒業見込みで、会計やビジネス関連の単位を一定数取得している必要がある。日本の大学の単位も認められるが、追加で単位を取得するケースが多い。

日経産業新聞2003年7月18日29面の記事から。新聞記事としてはまずまずでしょう。

試験の難易度


  CPA試験概略

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