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冬通り

早朝の釧路湿原に降り立ち
結局2時間ほど2匹の白い犬と野道を歩いた
雪の積もる湿原の川べりの野道
この河に落ちても誰にも気付かれることはない
無音と無人と寒さの孤独 けれど思わぬパートナーに寂しさも忘れる
自由に雪原を走り回りながらも
自分の周りを離れない2匹のことが気に掛かる
無音のなかで思わず声に出てしまう
早朝の釧路湿原は寒いという感覚ではなく
耳など外に出ている部分は痛いという感じ
こんな感覚は初めて、これが北海道
ふと太陽の方の山影を見れば
空気中にきらきらと光るものが舞っていた
写真には写らないだろうと思って撮らなかったけれど
それだけに忘れられない光景だった
広い大地を流れる深い青の河
その河が運ぶ氷のかけら
白い樹氷を咲かせた木々
はりつめた光景はしっかりとフィルムに切り撮った
この駅を去るとき
列車待ちの間に2匹は暖かい待合室で眠っていた
やがて列車が来る頃には2匹は起きていた
自分を追って列車のドアのところまで来る2匹のことが
何ともやるせなく心に引っかかる
別に自分でなくとも2匹は変わらぬ表情を誰かに見せる
それは分かっているけれど
ほんのひとときを共有しただけにつらかった
数日後、またこの駅を通る列車に乗っていた
この駅に着いたとき、ホームに2匹の姿はなかった