ミステリー(海外)

(更新日の新しいものが上です)

索引

11. ベルトラン・ピュアール 「夜の音楽」(2003/02/02)
10. ジェフリー・ディーヴァー 「青い虚空」(2003/01/25)
9. ミシェル・クレスピ 「首切り」(2002/08/25)
8. ジャン=クリストフ・グランジェ 「クリムゾン・リバー」(2002/04/03)
7. スティーブン・ハンター 「狩りの時 Time to Hunt」(2000/03/12)
6. スティーブン・ハンター 「ブラックライト Black Light」(2000/03/12)
5. スティーブン・ハンター 「極大射程 Point of Impact」(2000/01/16)
4. ジョナサン・ラブ 「ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ The Overseer」(1999/10/03)
3. デヴィッド・ダニエル 「翡翠の罠 The Heaven Stone」
2. ジョン・ラッツ 「同居人求む SWF SEEKS SAME」
1. スティーブン・レザー 「チャイナマン THE CHAINAMAN」

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「夜の音楽」
 ベルトラン・ピュアール 著、東野純子 訳、集英社文庫、2002、571円
フランスの作家によるロンドンを舞台にした作品です。作者がまだ20代そこそこということもあって大変若々しい感じがします。着想もとても面白くホラー的要素もありながらあまり毒々しくなくまとめられています。ただ、作中人物に関して若い人たちの描写は良いのですが、中心的人物である警部と犯人に関しては鋭さや深みがやや足らないように思います。この点は作者の年齢から考えて仕方のないことでしょう。また、ロンドンの地理や雰囲気が背景としてうまく使われていますので、ロンドンに興味のある方はそれなりの楽しみ方ができるのではないかと思います。
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「青い虚空」
 ジェフリー・ディーヴァー 著、土屋 晃 訳、文春文庫、2002、829円
久々に電車内で読む時には乗り過ごしに注意しないといけない作品に出会いました。帯に「ハッカーvsハッカー」と書かれていたので、素人相手のまやかし本かとも思い少々ためらわれたのですが、舞台がカリフォルニアのシリコン・バレーということで、以前短期間ですが行ったことがあるので、その郷愁にも惹かれ手にしました。ところがこれが読み出すととても面白い。登場するハッカーも並大抵ではないのですが、決して現実性を失うことなく見事にその人物像が描かれています。また、ストーリーも意外性に富み先を予測しながら読むのが何とも言えず楽しく、止まらなくなってしまいます。まさにハッカー対ハッカーの戦いだけに専門用語やハッカー用語がふんだんに出てきますが、一緒に捜査する刑事がコンピュータ音痴とあって彼に説明する形でうまく処理されています。犯人の相棒の正体が一つの謎解きになっていますが、途中迷いながらも最初の直感があたっていたのでなおさら気分良く読了することができました。
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「首切り」
 ミシェル・クレスピ 著、山中芳美 訳、早川書房、2002、880円
2001年度フランス推理小説大賞に輝いた作品です。主人公は何らかの理由で企業を解雇された元経営コンサルタントの失業者で、特に犯人がいるわけではなく推理小説というよりハードボイルドに近いものです。グローバリズムと競争に覆われた資本主義社会をシミュレートする研修という設定もある意味非常に現実的で、実際に通常の企業でも行われているものにも思えます。その設定も秀逸ですが、失業者であるがゆえにその中で狂気の世界にはまりこんでしまった過程を巧みに描いています。また、登場人物たちの設定も面白く彼らを通してその狂気も実は人間と社会が本来的に持っているものにすぎないと言っているようです。
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「クリムゾン・リバー」
 ジャン=クリストフ・グランジェ 著、平岡 敦 訳、創元推理文庫、2001、920円
テレビの映画番組で同作品を見たのですが、どうも内容に腑に落ちない点があり、その解消のために原作を探して読んだものです。映画での疑問点については理屈の上では解消したのですが、やはりなお釈然としないところが残りました。それは残酷な犯罪とその動機の結びつけに違和感があるためです。集団的な作為に起因する個人的な動機と、その作為に対する復習としての残酷な殺人との関連が素直に納得できないのです。それは私自身に作者の持つ宗教的なあるいは文化的な背景が欠けているためでしょうか。
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「狩りの時 Time to Hunt」
スティーブン・ハンター 著、公手成幸 訳、扶桑社ミステリー、1999、781円/781円
スワガーシリーズの最終作にあたります。この作品で第1作の「極大射程」で触れられなかったヴェトナム時代が描かれ、そして「ブラックライト」後の姿が描かれています。これまでとやや異なりテーマとしてスパイにまつわる国家的陰謀を取り上げています。ただやはりこの作家の真骨頂はそうしたテーマではなくこの作品でいえば、ヴェトナム戦争でのスナイパーの描写であり、そこから続くスナイパー同士の戦いでしょう。また、70年代のアメリカの社会状況とヴェトナム戦争との結びつきの深さも改めて認識させられました。
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「ブラックライト Black Light」
スティーブン・ハンター 著、公手成幸 訳、扶桑社ミステリー、1998 
前回の「極大射程」からシリーズとなる作品群の3番目の作品です。2番目は「ダーティーホワイトボーイズ」ですが、日本での翻訳の順番からその2番目が最も早く紹介され、ついでこの作品、そして「極大射程」の順に翻訳が刊行されたようです。かくいう筆者は同僚からその当たりを紹介され、まさに著者が書いた順番に読むことができました。ただ「ダーティーホワイトボーイズ」は直接”スワガー”が主人公ではないようなので、パスしました。ところでこの作品ですが、背景としては前2作を踏まえており、主人公たちの父親にまつわる謎を解いていく形になっています。「極大射程」よりも登場人物たちの奥行きが深まり、ストーリー展開ばかりでなく人物そのものにも興味を引かれました。特に老検事のサム・ヴィンセントの老いに苦闘する姿には感動を覚えました。また、父親と息子という関係に日本よりも濃密なものを求める背景がアメリカにはあることも感じられます。
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「極大射程 Point of Impact」
スティーブン・ハンター 著、佐藤和彦 訳、新潮文庫、1999、 667円/667円
同僚から譲り受けたものですが、ほとんどをこの土日で読んでしまいました。自分の予想通りに行くのかそれとも予想外の展開になるのか、あれはどの伏線になっているのか、など先を読まずにはいられなくなります。狙撃手が主人公なのですが、人間と同等以上に銃そのものに重心が置かれていて、銃がアメリカ文化の基底をなしていることが十分感じられます。そしてこれほど銃犯罪が頻発し、犠牲者がでているにもかかわらず、なぜアメリカから銃がなくならないのか、分かるような気がします。ただ、登場人物たちがある意味ではアメリカ的、ハリウッド的なステレオ・タイプとも言えるものであるため、奥深さにやや欠けるような印象があります。
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「ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ The Overseer」
ジョナサン・ラブ 著、野村芳夫 訳、文春文庫、1999、 971円
原題の「監督者」の方が内容を的確に表していますが、ミステリーというより冒険小説のような感じを受けました。物語の展開や描写から映画をみているような感覚になります。中世の文書が核となり陰謀を実行する者とそれを阻止する者との戦いですが、展開のスピード感や主人公らのスーパーマンぶりはそれなりに楽しめます。
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「翡翠の罠 The Heaven Stone」
デヴィッド・ダニエル 著、星野真理 訳、扶桑社ミステリー、1997、 552円
時々海外物のミステリーを読みたくなります。題名とカンボジア移民というキーワードで選んだ本でしたが、中々楽しめました。主人公の探偵も最初は表に出さないのですが、だんだんと本領を発揮してきます。そして最後はちょっとカッコ良すぎる位です。アメリカの小説を読むといつも感じるのですが、ちょっとした表現や描写に表れるアメリカ社会の荒々しさをこの小説でも感じてしまいます。また、こういう主人公は多くが離婚しているか妻と問題を抱えているかで、ノーマルな結婚生活を営む人では小説にならないのでしょうか。あるいはアメリカ社会を反映しているのでしょうか。
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「同居人求む SWF SEEKS SAME」
ジョン・ラッツ 著、延原泰子 訳、ハヤカワ文庫、1992/1996、 600円
SWFはSingle,White,Female。見ず知らずの同居人と暮らすということが 我々の感覚とは違って興味深い。また、いかにもニューヨークという雰囲気 が感じられ、そこで生きる人々の様子が生々しく描写されています。 主人公が女性コンピュータ・プログラマー (むしろコンサルタント兼システム・エンジニア兼プログラマー) というのも関心をそそられたのですが、アメリカではこのようなフリーな 形でのビジネスがなりたって、生活している人がいるのだろうか。
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「チャイナマン THE CHAINAMAN」
スティーブン・レザー 著、田中昌太郎訳、新潮文庫、1996、 680円
表題と裏書きに誘われて買ったものですが、大変おもしろい。興味の もとはIRAと元ヴェトナムのゲリラ兵のアジア人的思考・行動様式です。
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