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(更新日の新しいものが上です)

索引

19.佐野眞一 「あんぽん」孫正義伝(2012/04/27)
18.Walter Isaacson 「Steve Jobs」(2012/03/02)
17.米長邦雄 「われ敗れたり」(2012/02/24)
16.蓮池 薫 「半島へ、ふたたび」(2009/09/24)
15.養老孟司 「バカの壁」(2004/04/10)
14.藤原正彦 「天才の栄光と挫折 数学者列伝」(2003/03/09)
13.ナオミ・クライン 「ブランドなんか、いらない」(2002/02/16)
12.ピーター・フランクル 「数学放浪記」(2002/02/14)
11.一橋文哉 「三億円事件」(1999/09/05)
10.淀川長治 「生死半々」(1999/09/05)
9.Wendy Goldman Rohm 「マイクロソフト帝国裁かれる闇(上・下)」(1999/01/03)
8.最相葉月 「絶対音感」
7.ケリー・ラム 「香港魂」
6.野村 進 「コリアン世界の旅」
5.林 育男 「ビートルズで英語を学ぼう」
4.吉岡 忍 「墜落の夏 日航123便事故全記録」
3.田勢康弘 「政治ジャーナリズムの罪と罰」
2.井口俊英 「告白 The Confession」
1.レズリー・ダウナー 「血脈 西部王国・堤兄弟の真実 THE BROTHERS」

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「あんぽん」孫正義伝
佐野眞一 著、小学館、2012、1680円
著者はこの本についてWalter Isaacsonの「Steve Jobs」に負けない面白さ、と述べているが、両者を比べてみるとアプローチが全く違う。あるいは目的が違うと言った方が良いかもしれない。「Steve Jobs」は本人およびJobsと関わった人々への丹念な取材に基づいて見事にJobsという人間を描き出したのだが、この本は孫正義という人間そのものを描き出すよりも、その背景を明らかにすることに重点をおいている。「あとがき」で著者自身が次のように書いている。「私が本書で書こうと思ったのは、孫正義という特異な経営者はなぜ生まれたのか。それを朝鮮半島につながる血のルーツまで遡って探ることだった。言葉をかえれば、これは私なりの在日朝鮮人論であり、孫一族の「血と骨」の物語である。」。「特異な経営者」という孫への自分自身の見方を当たり前のように使っているように、本書は著者の孫に対する見方を書いているものであって、確かに孫が生まれ育ったルーツは良く分かるが、孫自身がどのような人間なのかは見えてこないのである。-->索引   

「Steve Jobs」
Walter Isaacson 著、SIMON & SCHUSTER、2011、2113円(Amazon)
2011年11月5日に亡くなったSteve Jobsの伝記です。変わっているのはJobs自身が亡くなる数年前に伝記を書くように筆者に頼み、彼が生きている間にこの本が作り続けられたことです。そしてJobsがその内容には一切タッチしなかった(表紙の写真以外は)ということです。この本はJobs自身や肉親、家族を含め、Jobsが接した多くの人々とのインタビューやドキュメントを元に作られていますが、実に鮮やかにJobsという人間を描き出しています。またその周囲の人々をも生き生きと描いています。また彼が関わった製品、会社、業界についても彼の考え方の特異性と業界・世界の流れもよく分かるようになっています。Jobsの人間性(とても私にはつき合えませんが)を明確に描き出した点に感心するとともに、伝記としてのまとめ方のうまさに舌を巻いてしまう本です。ちなみにJobsは1955年2月24日生まれということで、私とは1年と1日違いですので、国の違いはありますが、同時代を生きた人としてまた、ある程度同じ業界を生きた人としての感慨もあります。Jobsは自分のDNAがAppleという会社(彼が最も偉大な創作物と考えている物)に受け継がれたと信じていますが、果たしてそうなのか。JobsのいないAppleがさらなるイノベーションを生み続けられるのか、大いに関心があるところです。-->索引   

「われ敗れたり」
米長邦雄 著、中央公論新社、2012、1300円
2012年1月14日に行われた元プロ棋士にして元名人、現日本将棋連盟会長、永世棋聖の米長邦雄氏とコンピュータ・システム「ボンクラーズ」との対戦において、米長氏がどのように準備をし、戦略を立て、それを実施したか、また本番での敗因は何か、について率直に述べた本です。著者は出版の動機を「私はこの対局が決まってから今日にいたるまでの私が考えたこと、実践したことを一冊の本としてまとめておくことが、将棋界、あるいはコンピュータ業界の発展のためにも、将来へのたいへん貴重な資料になるだとうと考えました。」と述べています。これは大変立派なことだと思います。しかも内容も何ら言い訳じみたところはなく、客観的かつユーモアを持って自己分析をしています。また、最後に他のプロ棋士やコンピュータ将棋の開発者らの意見も載せられていて、それらの記述も大変興味深いものです。
著者はコンピュータとの対局を一種の異種格闘技戦と述べていますが、これは極めて重要な視点だと思います。チェスにおいても随分前に世界チャンピオンがコンピュータに敗れて話題になりましたが、その際に人間側の思考については何も伝わっては来ませんでした。著者はコンピュータとの対局を相手が人間であるかのように戦っては勝ち目はないと述べています。即ちコンピュータの弱点を突かねば勝てないということです。これにはプロ棋士の間でも異論はあるでしょう。今回のボンクラーズはただ単に膨大な手を読むだけではなく、過去のプロ棋士による棋譜を記憶しそれらから学習する機能も持っているとのことです。こうした相手に対してどのように戦うのか。著者はまた、このようなコンピュータ相手の戦いのための準備は人間相手の戦いには役に立たないとも述べています。現在最高峰(私は歴史上最高峰だと思っていますが)のプロ棋士である羽生善治氏も、もし自分がコンピュータと対戦するなら、一年間人間相手の対局はせずに準備することが必要だと述べたそうです。
プロ棋士とコンピュータとの次の対戦は現役プロ棋士5人対5システムになるようで、その時どのような戦略を持ってプロ棋士側が向かうのか大変楽しみです。-->索引   

「半島へ、ふたたび」
蓮池 薫 著、新潮社、2009、1400円
北朝鮮による拉致被害者である著者による手記です。前半は韓国への旅行記、後半は著者が翻訳家として生きていくチャレンジについて書かれています。本人のブログが元になっているせいか、特に後半はぐんぐん読者を引き込むような著述にはなっていませんが、著者の心情が率直に吐露されていてその生き様に感銘を受けました。北朝鮮での生活については恐らく拉致問題への影響等を踏まえてのことだと思いますが、断片的にしか触れられていません。しかし、それ自体がかえってご本人の抱える苦しさを表しているように感じます。それにしても一向に進展の見えない拉致問題は、どうにかならないのでしょうか。-->索引   

「バカの壁」
養老孟司 著、新潮新書、2003/2004、680円
ベストセラーとなった本書ですが、ようやく読みました。読み出してみるとやはり面白い。まえがきにもありますが、本書は養老氏が書き下ろしたものではなく、氏が話したことを編集者がまとめたものです。そのことがかえって本書のような内容のものに適しているのか、まさに話を聞いているような感覚で読み進めることができます。内容としては私自身が以前から感じ、考えていたこととの共通点を多く感じましたが、より深く捉えられているという感想を持ちました。私自身は優柔不断な人間だと思っていますが、迷うことは極めて大切なことであること、物事には常に二面があること、誰かに身を任せること(何かに自分の信条を捧げきってしまうこと)は楽だろうけれども思考停止である、とはいつも思っていました。これは自己弁護・自己防衛かもしれませんが、氏の言う二元論と根は共通ものだと思います。読後に感じたのは氏と直接話をして議論をしたら楽しいだろうな、ということです。-->索引   

「天才の栄光と挫折 数学者列伝」
藤原正彦 著、新潮選書、2002、1100円
数学者の筆者が歴史に残る天才数学者達の軌跡と人としての姿をその栄光と挫折から描き出したものです。数学者に限らずどの世界においても天才とはある一点への集中力の凄さによるものではないかと思っていますが、本書によってその思いをまた強くしました。それとともに並はずれた集中力とは別の言い方をすれば起伏の激しさであり、それは往々にして人生および精神における栄光の高みと挫折の深さとして顕れることにもなると思われます。ただ、あまりに若くして死んだガロワは一瞬の輝きにすぎずなんとも惜しく痛ましい限りです。-->索引

「ブランドなんか、いらない」
ナオミ・クライン著、はまの出版、2001、3400円
反グローバル化の運動を扱った本です。反グローバル化とは何か。なぜサミット会場で大規模なデモが行われるのか。ブランドとは何か。消費者とは、市民とは、多国籍企業の商売はどうあるべきか、大部な本ですが、読み応えはあります。-->索引

「数学放浪記」
ピーター・フランクル著、晶文社、1992/2000、1900円
著者のピーター・フランクルについては以前のテレビ番組「平成教育委員会」などを通じて知っているくらいでした。当時からなかなか頭がよくて日本語の上手な人だなとは思っていましたが、それほどの関心はありませんでした。最近日経新聞の日曜版に著者のコラムが連載され、その中で著者の生い立ちが書かれており、関心を引かれたことから本書を読んでみる気になりました。まず最初に著者の母国であるハンガリーでのユダヤ人差別については少々驚きました。本書で描かれているように生活に密着した形あるいは宗教的な形での差別は実に根が深いものだと感じされられました。また、著者は数学者であるわけですが、著者を含めて紹介されている数学者たちの生き様がまた興味深く、自分に忠実で、自由でうらやましくも感じられましたが、それ以上に自分の生き方ももう少し肩の力を抜いた生き方もあるのかもしれないと感じされられました。そう感じるのも著者の年齢が自分とほぼ同じであることも強く影響していると思います。
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「三億円事件」
一橋文哉著、新潮社、1999、1600円
1968年12月10日に起きた三億円強奪事件に対して新たな「物証」を引っ提げて真犯人に迫ったノンフィクションです。この本で示された「真犯人」が本当かどうかというよりも、当時の捜査不備に対する指摘の方に興味が引かれました。あれだけの遺留品がありながら、あれ程の人員を投入しながらなぜ犯人を突き止められなかったのか。ごく単純なミスや思い込み、当たり前のような社会的制約などが重大な結果を招くというよい事例でしょう。特に扱う規模(この場合は遺留品の多さや、捜査員の多さ、社会的関心など)が大きくなればなるほど、そうした基本的なことの影響が大きくなるという見本でしょう。
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「生死半々」
淀川長治著、幻冬舎文庫、1998、457円
淀川長治氏が亡くなったのが98年11月11日と約1年前、そしてあとがきの日付が95年9月5日とちょうど4年前の今日です。また、この本を書いておられたのが86歳の時。死を意識することで今日を精一杯生きるという著者の信念を綴った本です。近頃ある年齢にならないと本当には分からないことが沢山あることにだんだん気がついてきました。この本の内容も恐らくそうしたものが多分に含まれていると思います。ただ、著者の半分程度しか生きていない自分にも生きる意味と勇気を与えてくれる本です。
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「マイクロソフト帝国裁かれる闇(上・下)」
Wendy Goldman Rohm著、倉骨 彰訳、草思社、1998、上下とも1700円
1998年までの10年間におけるマイクロソフトのビジネス戦略を、司法省や競合他社およびマイクロソフトの内部資料から検証しようとしたものである。事情通な人の中にはマイクロソフトのやり方に反感を抱いている人は多くいるが、市場では圧倒的な勝利を収めている。なぜそのようなことが可能なのか、その理由を白日の下にさらそうとしている。ビジネス環境における公正な競争とはどういうものであるべきか、何のためにあるのか、ということを考えさせてくれる。また、マイクロソフトの問題だけでなく、アメリカのビジネス社会のあり様をも照らし出してくれるものである。恐らく読む人のバックグラウンドによって、様々なものを受け取れる本ではないかと思う。ただ、本書は決して読みやすくはないので、最後まで読み通す人はそれなりの関心と知識のある人に限られてしまうかもしれない。この業界の今後の展開、ひいては情報化社会の今後の姿に興味がそそられる。
-->索引   

「絶対音感」
最相葉月 著、小学館、1998、 1680円
持つものと持たざるものとが住む世界の違いは色々な面であるだろうが、この絶対音感といわれるものもその一つである。私にはないので想像もつかない世界であるが、それが一種の憧れや権威の対象となるのも分かる気がする。身近なところではバイリンガルの世界も私にとっては同じようなものだ。芸事の世界もそうであろうし、幼い頃からの環境、訓練で世界が広がるのも確かなことかもしれない。それには人間が持つ記憶のシステムが深く関与しているのは間違いないだろう。しかしそれがその人にとっての苦悩の元にも幸福の元にもなりうるところが人生というものかもしれない。
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「香港魂」
ケリー・ラム 著、扶桑社、1997、 1333円
香港人が香港人について書いた本です。ごくストレートに香港と香港人気質を描いており、香港に対する興味より歴史と風土が異なると人も実に異なるのだということを実感させてくれます。また、本の最初の部分の著者に関する写真や記述がいかにも香港臭くておもしろい。
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「コリアン世界の旅」
野村 進 著、講談社、1996/1997、 1748円
私にとっては見えていなかった世界が少し見えるようになった本です。何故見えていなかったかについては、明治以降の日本の歴史がそうさせている訳ですが、これからはどうなっていくのだろうか。韓国・朝鮮系の人々だけではなく、xx系日本人が日本社会の中にどんどん見える形になって、xx系日本人の首相が生まれるのはいつになるのだろうか。ただ、差別というのは人間社会に普遍的に起こる問題であるが故に、永遠に克服の努力を続けなければいけない問題だろうとは思います。
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「ビートルズで英語を学ぼう」
林  育男 著、講談社文庫、1984/1997、 460円
ビートルズの歌詞を例文に使って所謂学校英語を教える本です。読者としては中高生を対象としたのでしょうが、我々ビートルズを聞き込んだ世代の人間にも楽しく読める本です。特に、意味も曖昧なままに記憶していた曲を改めて文法的に解釈して示されると新しい発見があり、ビートルズの魅力が増します。
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「墜落の夏 日航123便事故全記録」
吉岡  忍 著、新潮文庫、1988/1993、 440円
この事故からもう随分年月が経ってしまいました。当時(1985年)自分が何をしていたかあまり記憶がありません。事故の記憶としてはヘリコプターで救助される少女の映像がある程度です。この本を読むと事故現場の信じられないような凄惨さや、その中でも生き続ける人間の生命力の強さを感じるとともに、このような事故を同時代的に経験しながらほとんど記憶にないという自分自身の無関心さも改めて痛感します。また、当事者の人々の驚き、辛さ、悲しさが身を包むように感じられるのです。そして飛行機だけでなく本当に人間に制御できるのか分からないような大きなリスクを負いながら、快適さや便利さを提供してくれるテクノロジーに依存して生きている現代という時代を意識せざるを得ないのです。
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「政治ジャーナリズムの罪と罰」
田勢康弘 著、新潮文庫、1996、 400円
日頃から現在のマスコミにジャーナリズムと呼べるものがあるのか、疑問に思っていました。特に政治に関しては新聞はつまらないし、テレビ報道も表面的な事象を騒がしく報じるだけで本当に知りたいことを知らせてくれていないと感じています。この本はその理由と責任がかなり報道する側にあることを教えてくれます。そうした背景を知ることで一つ一つの記事や報道に対する感覚を鋭くしてくれるように思います。また、ジャーナリストだけでなくプロフェッショナルであるべき職種に携わっている人々に共通な批判と励ましを感じるのです。
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「告白 The Confession」
井口俊英 著、文藝春秋、1997、 1500円
大和銀行ニューヨーク支店での巨額損失事件でアメリカ司法当局によって逮捕された元行員の手記です。著者が述べている全てが事実かどうかは私から見れば藪の中であり、それら一つ一つに対して素直に反応することは憚れるのですが、大和銀行や大蔵省、FBI、ニューヨーク連銀などの関係諸機関の行動は、この世界を知らない者にとって中々興味深いものがあります。また、法に対する企業と個人の関係についての具体的な例示として受け取れます。著者が現在禁固刑に服しているという事実が重く感じられるのですが、本の中で繰り返し吐露されている感情を思うと、恐らく著者がこの本を最も読んで欲しいと思っている相手は、著者の息子達ではないかと思います。
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「血脈  西部王国・堤兄弟の真実 THE BROTHERS」
レズリー・ダウナー 著、常岡千恵子 訳、徳間書店、1996、1800円
私は西部線沿線に住み西部デパートやパルコで買い物をし、プリンス・ホテルも利用する。しかし堤兄弟についてはこれまで何も知らなかった。日本人ではなく英国人が書いたことによって、かえって基本的なことや日本の歴史も分かりやすく、また慎重な筆致にも好感が持てた。あらためて西部線の電車内の沿線地図を見てみると、プリンス・ホテルやステーション・ビルは載っているのに、西部デパートやパルコは載っていない。
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