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人権「西光万吉集」 より     

(P54〜P55より抜粋)
些々たる言辞
 ある山奥にたくさんのサルが棲んでいた。ある日彼らは、高いところからなにげなく小石を投げてあそんでいた。すると谷川からカニの声がした。「モシ、サルさん、そんなイタズラをするもんじゃないよ。私らははなはだ迷惑だ」。
 けれどもサルは平気で、「なにがはなはだ迷惑なんだ。こんなことくらいなんでもないじゃないか」といった。
 するとカニはおこってさけんだ。「サルとはわが身勝手なことをいう。おまえさんの方ではなんでもないことでも、私の方では生命にかかわる問題だ」。そこでサルは顔をまっかにして引きこんだかどうか知らないが。
 とにかくわれわれを平気で侮辱しておいて、サテ問題になるとイヤついうっかりしていったので、なんでもないことだの些々たる言辞だの、口でいったことぐらいだのと赤い血のかよつている人間らしくもないことをいう。
 われわれからいえば、彼らはわれわれを侮辱することを、ツイうっかりしていうほど、つねになんでもないことのように思っているのだ。いいかえると、それほどあたりまえなことに思っているのだ。
 とくに石頭で、鉛からでも生まれたような多くの役人は、「かかる些々たる言辞に対して、水平杜の糺弾はどうのこうの」という。彼らには些々たる言辞の根本に、七千万人の日本国民中、三百万人がハッキリと今なお通婚もせず、区別されている事実が見えぬのであろうか。あまり大きすぎて、あまりに目の前にありすぎて、それで目にあまって見えないのであろうか。
(「徹底糾弾の妥当性」より)

西光万吉集に