■ 韓国唐辛子事情 | |||||||||||
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道長では『和風きむち』『割干キムチ』『コチュジャン』『キムチベース』『キムチ鍋のもと』に使う唐辛子に愛農会さんの仲介で、韓国の有機栽培唐辛子を仕入れています。 その唐辛子、とくに材料としてほかの原材料と混ぜ合わせた場合、思いのほか風味と旨味を発揮します。聞くところによれば、韓国産唐辛子はピンからキリまであり、作る場所、乾燥や製粉の方法などの違いで品質に大幅な差が出ます。 原産地はメキシコといわれ、品種も非常に多く世界で2千種以上もあるといわれるほど、まったくつかみ所がないというのが唐辛子。辛さの度合い、香りの良し悪しなどについては世界的に名の知れた唐辛子はありますが、専門家にとってさえ「わからない」というのが正直なところのようです。 2006年4月、道長で使っている唐辛子を生産している韓国の『正農会』の農家を訪問するとのことで、愛農会さんに同行させていただきました。ぼくも唐辛子についていろいろと調べてはみたものの、調べれば調べるほどつかみどころがなく、まったく困ってしまうというのが実感でした。そんなわけで、今回の韓国行きには興味がつのるばかりでした。
いちばんわかりやすい例をあげるとすれば、たとえば漢方にはなくてはならない『朝鮮人参』。韓国では水はけの良いなだらかな斜面で、風と直射日光をさけるため寒冷紗を使って栽培していますが、それと同じ栽培方法をとったとしても日本では同じ品質の朝鮮人参を作ることはできません。 キムチにつかう大根についても、ちょうど朝鮮人参とおなじことがいえます。ぼくにはその理屈を説明することはできませんが、たとえば同じ大根を栽培しても日本ではふっくらみずみずしく育つはずなのに、韓国では水分が凝縮されたような感じに育つ。歯ごたえで表現するなら、日本では『シャリッ』で、韓国では『ガリッ』という感じ。大根のキムチといえばカクテキですが、韓国でそれを食べてみて「これが本場のカクテキなのだ」と実感しました。キムチ漬けして醗酵していてとてもなじみのある風味なのに、その味を日本で出すことは非常にむつかしいのです。日本の大根は下漬けしただけではまだまだ水分が多すぎ、歯ごたえが足らないためもう一度漬け直します。それでやっと『カリッ』としたよい歯ごたえ(ここがちょっとちがう)になるのに、それをキムチ漬けにしても、日本ではなぜかキムチベースの味がのらないのです。なのに韓国の風土は大根を漬けなおさなくても『ガリッ』とするし、かといって大根の組織がつぶれていないので(?)キムチベースのエキス分を取り込み、大根自身の醗酵との相乗効果でさっぱりとしてしかも心地よい酸味をかもし出すといった感じ。 これとおなじことが白菜にもいえ、歯ごたえがカリッとしてしかも味ののったキムチになるのです。まさに古漬けになって白菜の青みが失われても水っぽくなるわけでもなく、ここちよい酸味のおいしいキムチになってゆくというわけです。 ■なぜ正農会では南北の生産者から唐辛子を 韓国『正農会』では有機唐辛子の生産者を、北は北朝鮮との国境近くの江原道と、韓国本土最南端に設定しています。これはいずれの地方も農薬、化学肥料による影響が最も少ないという理由からです。とくに南部の全羅南道長興郡には正農会の前会長を中心とした、50軒余りの正農会農家があり、有機農業への転換が着実に進んでいます。 また長興郡の役場では、有機、特別栽培の農産物の振興をはかっており、それを積極的に流通してゆくための政策も打ち出しているほどです。 ■唐辛子粉の品質を決定付けるものとは これはまったくもっともといえばもっともな話ですが、品質を決定付ける要素は次の2点です。
■リスクがあっても天日乾燥、手間暇かかる杵うち製粉 昨年の金さんの唐辛子は天日乾燥の最中、雨に降られてしまい、かなりの量を廃棄してしまったそうです。そのようなリスクを背負ってさえも、せっかく有機栽培した唐辛子を無造作に機械で乾燥・製粉したのではまったく意味がないのです。 ■信頼関係があってはじめて・・ 韓国と日本とは隣同士の近い存在です。にもかかわらず、一般の業者を通しては唐辛子ひとつとってもよいものを継続的に仕入れることは非常にむつかしいといわれます(中国産さえ混入してしまう)。だからといって、それは韓国や中国の国民性だから仕方ないと片付けてしまうのはまったくの無礼千万なのかもしれません。
最後に、江原道での移動にお付き合いしていただいた正農会会長さん、副会長さん。全羅南道での移動は正農会朴さんに同行していただきました。さらに金龍根さんには、三日間の旅程全般にわたりお世話になりました。謹んで御礼申し上げます。 |