食品という名の添加物

たんぱく加水分解物、アミノ酸系調味料などと呼ばれる、実に都合のよい調味料が一般に使われるようになったかと思うと、こんどは『核酸系調味料』とか『酵母エキス』などというような調味料も登場しています。そしてそれらは最近では『化学調味料』とは呼ばれず『うま味調味料』と呼ばれていたりします。

かつて『加水分解』という方法で調味料としての旨み成分が精製、抽出されてきました。この『加水分解』とは読んで字の如し、タンパク質に水を加えたり、塩酸などの強酸を加え、分解し旨みを得ることです。しかし、最近では遺伝子組換え大腸菌などを利用した発酵技術の応用が主流となっています。

たんぱく加水分解物:食品
タンパク質を塩酸などで分解し、水酸化ナトリウムで中和安定させ、精製抽出されるアミノ酸系調味料。酵素分解の方法もある。食品
アミノ酸系調味料(うま味調味料):食品添加物

砂糖の製造過程で出る廃糖蜜(残渣)などを微生物に分解させ、抽出したアミノ酸を水酸化ナトリウムで中和し安定させるというのが現在の主流。昆布の旨み成分、グルタミン酸ナトリウムなどが知られています。最も一般的な調味料。遺伝子組換え微生物が主流
核酸系調味料(うま味調味料):食品添加物

かつお節の旨み成分であるイノシン酸、しいたけのグアニル酸などが知られています。またそのふたつを混合したリボヌクレオチドナトリウムがあります。これも遺伝子組換え微生物による発酵が主流。遺伝子組換え微生物が主流
抽出エキス:食品

水を加え加熱したりして旨み成分を抽出する方法。だしなど。
たんぱく自己消化物:食品

魚醤のようにタンパク質を自ら消化させ、脱臭したり凝縮したりして得られる旨み調味料。発酵技術が使われることが多い。
酵母エキス:食品

ビール酵母などを発酵や酵素分解、熱処理などして得られる旨み調味料。
風味調味料:食品添加物

以上に挙げた調味料のほかに、最近よく見られます。非常に曖昧な定義ですが、天然の調味料にうま味調味料などの食品添加物を加え、顆粒状などにした調味料ということになっている。ほんだしなど。

工業的に製造される調味料は最近では微生物による発酵が主流です。かつては石油を原料にしたり(1970年代)、タンパク質やデンプンを塩酸などの強酸で分解したり、酵素を使ったりする製造が行われてきました。

発酵といえば聞こえはいいけれど
かつて『化学調味料』と呼ばれた時期もありましたが、イメージがよくないため業界側では『うま味調味料』という呼び名を普及しようと努力しているようです。製造方法が変わり、イメージアップしても、いかに安く、大量にというコンセプトにはなんら代わるところはありません。うま味成分を安定中和させるため、化学的な処理が行われる点では、食品として認められている『たんぱく加水分解物』も同様です。安全性は二の次になっている点は否定できません。

遺伝子組換え技術が主流
発酵といえばいかにも健康的なイメージがありますが、その内容は私たちが考える伝統的な発酵とは程遠いものです。最近では遺伝子組み換え微生物に発酵の過程を代用させ、ごく短時間で大量に旨味成分を作ってしまいます。しかもその原料は『食品廃材』が使われることが多い。そして、使われるGM微生物も、大腸菌が主流となっています。これを発酵と呼ぶことに、おおいに抵抗を感じます。

このように、日常、私たちが使っている調味料などと比べて大きな違いがあります。そしてその差異はたやすく無視できるというものではありません。それを箇条書きにしてみます。
@信用のできる良質な調味料と比べて、その製造工程にはあまりに化学的な部分、不明な部分が多い。
A消費者がその原材料を知る由もなく、トレーサビリティ(追跡可能性・履歴)を重視した商品作りとはほど遠い。
B製造者・流通業者などの便宜・経済性が最優先され、安全性は二の次
C調味料(食品)なのか食品添加物なのか非常に曖昧

■食とは何か
調味料を含めて、食品とは何でしょう。またその問を次のように言い換えたらどうでしょう。私たちは何のために食べるのでしょう。空腹を満たすためでしょうか。グルメの欲望を満たすためでしょうか。そのような目的のために私たちは食するのではないはずです。

『医食同源』ということばがあります。私たちは健康に暮らしてゆくために食するということを忘れてはいけません。そのためには、信頼できる生産者の作ったものを、安心して食べるという基本の姿がまず必要です。さらに生産者には強い使命が必要であり、さらに責任があるわけです。なぜならば、ひとりの生産者が受持たなければならない消費者の数は、あまりにも複数かつ多数であるからです。

いわゆる粗悪な食品になればなるほど、製造者の心は消費者から遠ざかってゆきます。そしてそれは食べ物としてのおいしさとはほど遠いものとして判断せざるを得ないのだと思います。