COP/MOPと今夜のごはん

今年秋、日本の名古屋で『生物多様性条約第10回締約国会議』通称Cop10という会議がおこなわれます。さらにその会議に先立ってMop5という会議『カルタヘナ議定書第5回締約国会合』もおこなわれます。

そういえば昨年12月にはデンマークのコペンハーゲンで『気候変動枠組条約』の国際会議もおこなわれ、Cop15などと言われていました。で、こちらではCop/Mop5という会議もおこなわれています。

CopとMopって
なんだかわけがわかりませんが、その前にCopについて。これは the Conference of Parties の略で『締約国の会議』という意味。そしてMopは the Meeting of Parties の略でやはり『締約国の会合・会議』という意味。

どちらも同じような意味ですが、これはおなじ国際会議の会期中に特に重要な決め事というか、法的な拘束力をも含む『議定書』についての会議が独立しておこなわれるため、区別する意味でCopとMopで会議の区別をしています。

気候変動も生物多様性もその参加国がそのまま『京都』や『カルタヘナ』議定書の締約国ならば問題ありませんが、条約にはサインするけれども、議定書で縛られるのはいやだという、たとえば生物多様性条約の国際会議では(米国は条約に調印していないため参加なし)、条約には調印していても『カルタヘナ』に調印していない有力なGM推進国(カナダ、アルゼンチン、オーストラリアともちろん米国も)がいたりするため、同じ条約会議の中で議定書についての会議をするわけにはいかないというのがCopとMopが別にある理由です。

『気候変動枠組条約』では『京都議定書』に調印していない国が、一番問題になっている米国と他にカザフスタン、クロアチアの3カ国だけということでCopの中でMopもおこなってしまっているため、こちらはCop/Mop5と呼ばれているのだそうです。

これらふたつの条約『生物多様性』と『気候変動枠組』とは、片や農業や生物、生命に関る、そしてもう一方は工業・化学活動による地球的規模の環境問題に対する国際的な会議の場というわけです。このふたつの条約がワンセットで地球環境の問題に対応しようとしています。

ふたつの条約で、『気候変動』は『京都議定書』で二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量の規制を、『生物多様性』では『カルタヘナ議定書』で規制することで、新技術で生み出される遺伝子組み換え生物などから貴重な生物資源や持続可能な農業を守ろうとしています。『気候変動』の方はほぼ毎年おこなわれていますが、『生物多様性』はほぼ隔年の周期です。

■名古屋Cop10に望まれること
遺伝子組み換え生物(LMOまたはGMO)が汚染などによって何らかの損害を及ぼした場合、その経済的弁済、または復帰させるための責任をだれがどうとるのかを法制化しようという機運が高まっています。Cop10に向けてその準備のための国際的な準備会がすでにおこなわれています。

今まで、有機水銀やカドミウム、大気汚染などによる健康障害に対する保障は国内的にはおこなわれたことがあります。しかしながら国際的な関係の中でこのような保障がおこなわれたことはありません。これはそれに相当する国際間の法律がなかったからです。また常識的に考えて保障がなされて当然な事柄でも、損害を与えた側の国がそれに応ずる姿勢がなければどうしようもない。『責任と修復(救済)』とは、生物多様性条約の場合、カルタヘナ議定書が国際法としてそれが定められたとき、議定書の締約国としてそれに従う義務を持つことになります。でも議定書に調印していない国はそれに従う必要はないことになる。とくにその国が張本人である場合、どうしようもない。

例を挙げるなら、米国は二酸化炭素にしても、遺伝子組み換え作物にしても、世界でもっとも大掛かりに排出あるいは生産している国です。その国が地球環境を守るべく召集されている『気候変動』ではその議定書(京都)に、『生物多様性』では条約、議定書のいずれにも調印していないという点が大きな問題です。

今年10月の名古屋COP10は、世界が真に前向きに地球環境問題に立ち向かおうとすれば、歴史的ともいえる国際的な約束が成立するかもしれない重要な会議となります。

世界の科学者はこの地球の危機的状況に対し、必死な態度でそれを防ぐべく努力を、この国際会議に賭けているといっても過言ではありません。

■私たちにできること
では、私たち消費者に一体何ができるというのでしょう。『生物多様性条約』とは農業と密接に関係した条約です。農業活動が自然界に及ぼす影響は非常に大きい。そして農業は私たちの『食』と直接かかわっています。『食』とは私たちが『環境』を直接私たちの体内に取り入れる行為です。

私たちにとっての日本の自然を思い浮かべてください。そのほとんどすべてが私たちの主食である『米』のために管理されてきました。『米』という日本人の食の基本がくずれたとき、この日本の自然も大きく崩壊するかもしれません。それほどに日本の自然は『農』によって守られている。

毎日食べるごはんに安全で安心な地産地消のものを選ぶ。海外にたよる食でなく、古来から受け継がれてきた『食文化』を大切にし、今一度、私たちの『食』とは何かということを考え直すところからはじめなくてはなりません。