巷にあふれる遺伝子組換え技術
12/12/26

今年も、12月4日付けで、『安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧』が厚生労働省から公示されました。
食品では:
昨年の158品種から、33品種増加となっており、とくにとうもろこしで顕著。品目としては久々、昨年12月にパパイヤが加わり8品目となりました。それまでに認可されていた7品目は、いずれも加工食品として利用されるものばかりでしたが、そのものを生で食べる食品としてはパパイヤが初めてです。

それにしても、GM食品の増加ぶりには驚くばかりで、2001年に認可済みのものを数えてみると38品種、2005年には67品種でした。

GM食品(食用の作物)を栽培する場合、解放された一般の畑での栽培が可能です。ただし、法令では定められていませんが、近隣の農家などに対する周知をしないわけにはいかず、当然の反発が予想され、GM作物の栽培は難しい状況です。

数年前、GM作物推進派が全国何箇所でGMダイズの栽培を強行したことがありましたが、地元農協や住民の反対にあい、ことごとく鋤き込むなどの処分をされました。日本では、GM作物の導入には大きな抵抗があることが伺われます。

食品添加物では:
α-アミラーゼ、キモシン、プルラナーゼ、リパーゼ、リボフラビン、グルコアミラーゼ、α-グルコシル・トランスフェラーゼ

昨年の7品目14品種から1品目2品種増加の16品種(6年か7年ぶりに増加)。とくにα-グルコシル・・・の1品目2品種を江崎グリコが申請、認可を得ました。GM食品・添加物で日本の企業が認可を得たのは江崎グリコが初めてだと思います。

GM添加物とは:
たとえば生乳からチーズを作る場合、レンネットという凝乳酵素を使います。レンネットにはキモシンという仔牛の胃からしか取り出せない酵素がありますが、希少で高価なので、GM微生物によって大量のキモシンを製造しようというもの。また、リボフラビン(ビタミンB2)などは、栄養強化や着色料(黄色)として利用しますが、その生産効率を高めるためにGM技術を利用しようというもの。これが日本でもBASF社の未承認GMリボフラビンが流通していることがわかり、現在安全審査のため販売禁止になっています。そのほかのGM添加物は、おもに酵素で、いずれも生産性の向上などが目的のようです。

その他、動物実験用などに利用されるGM生物(動植物・微生物)では
動物:92件
マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、カイコなどがあり、ほとんどが実験用。

2007年『ナイトパール』という蛍光を発する光るメダカが密輸入され、騒ぎになりましたが、現在流通販売は禁止されています。

植物:2件
花の色を調整するための酵素を作るのだそうです。
微生物:48件
大腸菌やウィルス、血清など。産業用に有用物質を発生する能力をもたせた微生物。

以上3点については『第二種使用』といって、温室や室内などの閉鎖された施設内で、拡散を防止する措置(国が定めた)をとる必要があります。この場合、国に対してGM生物を利用する旨の申請をする必要があるわけですが、GILSP(優良工業製造規範)という、特殊な培養条件下以外では増殖できず、病原性がないなど、安全性が確認されている場合は、拡散防止措置をとれば、その使用にあたって国へ申請をし、承認を受ける必要がありません。

以上のほかにGMワクチンなどもありますが、今のところペットや家畜用。
農林水産省の管轄となるGM生物
以上のGM技術を利用した生物はすでに安全性審査が済んでおり、食用や飼料、医療をとおして、直接的・間接的に私たちのからだに取り入れられることを前提としています。

一方、GMカーネーションやバラのように、観賞用など。あるいはまだ食用として厚生労働省への申請・認可されていない、研究段階のGM生物の場合は、農林水産省の管轄となります。

品目としては、アルファルファ、イネ、カーネーション、セイヨウナタネ、ダイズ、テンサイ、トウモロコシ、バラ、パパイヤ、グリーピングペントグラス、ワタの11品目(183品種)。たとえば、一般に流通している紫色のカーネーションのような観賞用花卉(かき)は海外で栽培されていて、切花として日本にも輸入されている。右の表のクリーピングペントグラスは除草剤ラウンドアップ耐性芝生(もちろん研究段階)。

2011年12月、GM微生物を利用した核酸系調味料がその年に数百トン(180〜200万トンの加工食品に利用されたことになる)日本に輸入されていたことが発覚し、問題になりました。結局2012年3月に厚労省から認可が降りてしまい、現在一般流通しています。厚労省の見解では、該当の調味料が高度に精製されており、GMタンパク質が含まれていないことが確認されたためということです。問題の調味料がいつ頃から日本に輸入されていたかについては、発表がありませんでした。

すでに回収しきれない量のGM調味料が流通していて問題が起きていないという既成事実のおかげの、どさくさ紛れの感が拭えません。ほんとうに大丈夫なんでしょうか。
GM微生物で製造された5'-グアニル酸二ナトリウム(椎茸のうま味)と5'-イノシン酸二ナトリウム(鰹のうま味)を混合して、5'-リボヌクレオチド二ナトリウム(工業生産の加工食品に一般に利用)という核酸系調味料として流通

3倍の速さで成長するサケ
米国FDAで承認間近?
羽毛のないニワトリ
巷は食品、作物、農産物、微生物などなど、GM技術であふれかえっているといっても過言ではありません。まだ日の目を見ないダークな世界では、考えられないGM生物の研究・開発が数多、日常的におこなわれている。

医療など、やむをえない場合は仕方ないかもしれない。しかし、倫理的にしてはいけない研究もあります。

GM生物が環境に放たれてしまった場合、それをすべて回収することは非常に困難です。遺伝子汚染が将来引き起こすかもしれない危険を、未然に知り得ているといえるのでしょうか。

本当に安全なのかどうか確信の持てていないさまざまなGM生物を利用した食品を、表示などの義務などもなおざりにし、消費者に選択肢を与えないまま市場に送り出していることに大きな疑問を感じます。

大手バイテク企業の安全性を二の次にした、便宜性、経済性と市場独占の目的のためのGM技術に大きな憤りを感じます。

光るウサギ
光るメダカ


第一種使用:
それにあたっては、近隣のほ場の作物にGM汚染などの影響を及ぼさない(国が定めた)措置をとり、国に申請し、承認を受ける必要があります(例:隔離圃場)