味覚について

人の舌には、年令や個人差があるそうですが、2000個前後の味蕾という突起があり、その中には40〜60個の味細胞がある。味蕾の頂点には味孔というものがあり、この孔から味物質が味細胞に受け入れられる。

味の種類としては大きく分けて酸味・塩味・苦味・甘味があり、それが複合されることで複雑な味わいを作り出している。これらの4種類の味はそれぞれの味をより鮮明に感じ取ることができるよう、それぞれ舌の違った部分で受け入れるようになっている。

・酸味と塩味:おもに舌の両サイドで感じる
・苦味:おもに舌の奥で感じる
・甘味:おもに舌の先端部

唐辛子やわさびの辛味って
ところで、これらの4つの味の他に、『辛味』というのもあります。たとえば、唐辛子を口に入れたときに感じる痛みにも似た感覚です。これは味覚とはちょっとちがっていて、たとえば唐辛子の場合その辛味成分である『カプサイシン』というのが舌の粘膜を大いに刺激することで、ようするに『しみる』状態を作り出しているわけです。したがって、この辛さというのは、ちょっと時間を置いてから、じわっと効いてきます。唐辛子を扱った手で目をこすったりすると、痛くて目を開けていられなくなるのも同じ理屈なのでしょう。

最近、エスニックというか激辛ブームで辛いものを好んで食べることがよくありますが、こういった刺激物は舌の粘膜とともに味細胞も痛めたりするため、適当にしておいたほうがいいでしょう。

『しるこ』に塩ひとつまみ、なぜ?
よくしるこを作るとき、塩をひとつまみ入れます。すると不思議なことに、その甘味をさらに強く感じるようになります。これは『味蕾』をちょっとだますことで利用する効果です。
 しるこを口に入れます。まず、甘いしるこに少量含まれた塩味を舌の両サイドで感じるわけです。そのとき味覚がスタンバイし、そこへ大量の砂糖の味がおしよせて、塩味を感じる味細胞さえも甘味を感知してしまう。結果として実際よりも強い『甘味』として感じてしまう。というわけ。

この『対比効果?』のためにいちばん適当な塩の量は、砂糖の量の0.5%といわれています(砂糖4カップに塩小さじ1/2)。それ以下では味覚が適度な塩味を感ずることができず、それ以上では塩味がまさってしまいます。

なんとなく言葉でだまされているような、甘味に対する塩味の効果ですが、これは味覚以外にいろいろな場合にありうること。

たとえば一面の白い花畑のなかに真っ赤な服の人物がひとりいたとすると、その白が鮮やかさを増したり、音楽で主旋律にたいして奏でられる和音などは、その美しさを際立たせるはたらきをする。などなど。対比の効果、アクセントの効果とでもいうのでしょうか。

人の味覚というものは、こういった効果で、料理を実際よりも美味しく感じさせることができます。みりんや酢など、ちょっとの工夫で味というか、風味というのはぐっとアップします。

さらに、味覚をかもし出す効果には、もっと外的なものもあるわけです。『物は器で食べさせる』、あるいは人が料理を食べるときの心理状態、環境などなど。あげたらきりがないくらいです。

これらのいろいろな要素がどれだけ取り入れられているか、気配りがなされているかというのが、ようするに料理の『味』にあらわれるというわけです。

月並みすぎて、いまさらこんな言葉・・・。『愛情は塩にも勝る調味料』。肝に銘じて・・・。