塩について
13/01/25


塩は私たちが生きてゆくためには、なくてはならない物質です。また料理を作るうえで、たいへん重要な調味料でもあります。漬物を作るにも塩がなくてはできません。

一口で『塩』といってもいろいろな種類の塩があります。またそれぞれに特徴があり、使用用途に応じた塩選びも必要になる場合があります。

塩の種類と製造方法
膜濃縮再生せんごう塩
最も一般的に使われている家庭用の塩です。『せんごう』とは煮詰めるという意味です。原料はメキシコ、オーストラリアから輸入される原塩。

原塩は海水をただ乾燥させただけなので、そのままだと不純物やニガリ成分が強すぎ、食用には向きません。そのため、製塩という作業が必要になります。

原塩を海水に混ぜ込み、濃い食塩水を作り、イオン交換膜と直流電気を使うことで、濃縮した海水(かん水)を作ります。これを真空の鍋で(低温で)加熱することで水分を飛ばし、結晶塩を作ります。最後に遠心分離機にかけてニガリ成分などを取り除きます。さらに洗浄と遠心分離を繰り返すことで塩化ナトリウム99.9%という純度の高い食塩が製造されます。

イオン交換膜で塩化ナトリウムのみをろ過しているように思われがちですがそうではありません。イオン化された粒子の細かい塩の成分だけがろ過されるため、細菌や汚染物質などを排除でき、非常に衛生的で安全というのがメーカー側のセールスポイント。

イオン化した海水成分だけが図の中央部分に集められ、かん水(濃縮された海水)が得られる

量産されているこだわり塩の製造もこの製法で作られていますが、ニガリ(塩化マグネシウム)やカルシウム、カリウムなどの成分を適度に含ませ、自然に近い塩に仕上げています。

日本では塩化ナトリウム99.9%というものが一般的です。湿気を吸いやすいニガリ(塩化マグネシウム)や塩化カリウムなどを取り除くと塩はさらさらになるため、工場内や輸送上の扱いが非常に楽になるというのがいちばんの理由です。

岩 塩
古代、隆起などで陸に封じられたりした海水が風化したもの。地中から採掘される。これを水に溶かし、汚れをとり、均一にしてから『せんごう』する場合もあります。

天日塩
天日と風だけで海水の水分を飛ばし、結晶化させた塩。さらに余分なニガリ分などを小山に積み上げておくことで流し落としたり、遠心分離機で除いてから製品にします。各種製塩法のうちでもっとも手間のかかる方法。赤道に近く、乾季があり、しかも海洋汚染のない地方でなければこの方法で製塩を行うのは困難です。日本でも一部の製塩所で行われていますが、雨季と乾季が明確でないため、効率が悪いというのが難点。ただし「天日塩でなければ」というユーザーに根強い人気がある。道長ではこの製法の塩を使用。
カンホア省の塩田

せんごう塩
平釜などで海水の水分を飛ばし、結晶化させ作られる塩。一般にはかん水を得るために天日を利用し、手間と時間のかかる結晶化の作業をせんごうで行います。多くの自然塩がこの方法で製造されます。夏季には湿気が多く、乾季の冬にも雨が降る日本のような気候ではこの方法が一般的。国産のこだわり塩にこの製法が多い。価格も高価。

粉砕塩
メキシコやオーストラリアなどからの輸入原塩の不純物や余分なニガリ成分を洗浄除去し、使いやすい粒の大きさに粉砕しただけの塩。家庭用には販売されていません。
この塩は大雑把ながら、安価というのがいちばんのメリット。また味噌などの仕込みにも使われることが多く、『膜濃縮せんごう塩』のこだわり塩などに十分匹敵する塩であったりもします。

塩へのこだわり
以上紹介した塩のほかにもまだまだいろいろな塩があります。
さて、塩とは何でしょう。その答えとして、まず塩は食品であるということ。たべものとは、私たちが健康に暮らすために欠くことのできないものです。そのためには食品はまじめでひたむきなものであるべきです。効率よく安いコストで作られたものがよいのか、手間隙かけたものがよいのか。そこに違いがないのであれば安価な工業生産された塩でもかまわないのかもしれません。でも知れば知るほど、使えば使うほどにその違い、よさがあるのであれば、もっとも基本的な調味料である『塩』にこそこだわりが必要なのではないでしょうか。

一般に加熱をして得られた塩は料理に使った場合、塩味が前に出る傾向があります。これは岩塩などにも見られる傾向です。それに対して天日塩のように太陽と風の力だけで得られた塩では、とくに漬物に使った場合、塩カドがあまり気になりません。素材である野菜の風味をぐっと前に出してくれる性質があります。漬物のほかに旬の味を大切にする日本料理に向くのは天日塩、一方塩味を付けたい肉料理やハム・ソーセージ作りなどにはせんごう塩や岩塩が合うのではないかと思います。


工業的な塩の製造に使われることがある加工助剤
加工助剤使用目的移行物質
次亜塩素酸ナトリウム殺 菌中和剤と反応して塩化ナトリウムに移行
亜硫酸ナトリウム殺菌剤の中和殺菌剤と反応して硫化ナトリウムに移行
塩化第二鉄懸濁物除去水酸化第二鉄に移行し固化。ろ過で除去される
塩 酸かん水を酸性に保つ塩化ナトリウムに移行
ポリリン酸製造途中の晶出防止にがり成分に移行
グリセリンエステル消泡剤にがり成分に移行

加工助剤はそのもの自体が製品に残ることはない。または塩化ナトリウムなどの海水成分とおなじ物質に移行することになっている。