添加物と有機
17/02/27

 今や、巷の加工食品に食品添加物は調味、食感、保存、見栄えなど、様々な目的で使われていて、もはや欠かすことのできないものとなっています。メーカーの言い分としては「消費者にいかに安く、おいしく、安全に供給するか」などで、一見、消費者サイドのメリットが挙げられる。

 調味・食感ではアスパルテーム、サッカリンNaなどの甘味料、クエン酸などの酸味料、グルタミン酸Naなどのうま味調味料、キサンタンガムなどの糊料、そのほかに着色、発色、漂白、光沢、香り、苦味など。ありとあらゆる種類の食品添加物がある。保存性のためには、殺菌、酸化防止、防カビ、PH調整など。加工を助ける中和、乳化、膨張など。そのほか発酵分解を促す微生物、酵素。栄養強化などなど。

 では、食品添加物を使わないで加工食品は作れないのかというと、そんなことはありません。あらゆる伝統食品は、長い歴史で培われた食文化のなかで、気候風土に逆らわずに、むしろ自然の力を利用して作られてきたのがその証です。

 食品添加物を使わないメーカーの言い分としては…「おいしく、安全に」。これも冒頭で示した、一般の加工食品メーカーのコンセプトに一致しています。ただし「安く」という言葉がここには含まれていません。

 ここで、発酵食品・調味料について、添加物を使った食品を農法にならって『慣行』、それらを使わず、原材料にこだわり、手間隙かけた食品を『有機』と分類して考えてみます。

●慣行:
・バイテク技術が駆使され、その移り変わりが頻繁
・大量販売のため、効率性と経済性が最優先される
・生産のために必要な環境を人工的に管理してしまう
・少しでも安価な原材料を優先
・低コストで消費者をひきつける
・おいしさと経済性

●有機:
・伝統的な技術を受け継いでいる
・仕込みから発酵、熟成に手間と時間がかかる
・その土地の風土、季節、原材料にあわせた技術が必要
・地元産、国産など、納得できる原材料を使う
・毎回、おなじ品質を保つのがむつかしい
・コストが高く、消費者の理解が必要
・おいしさと安全性

 以上から、慣行と有機では、その考え方に大きなちがいがあることがわかります。つまり、慣行では「いかに効率よく安価に(利潤性高く)」が最優先される。一方、有機では効率は二の次として「高品質でおいしく、安全」を最優先します。つまるところ、最終的に優先順位は量販では生産者、有機では消費者ということ。

※『有機』とは有機物の有機とはちがう
 英語で有機という言葉は『organic』で、これは形容詞。名詞形では『organ(機関・組織)』とか『organism(有機的組織体=生物)』。『organic』を直訳するなら『有機的な繋がりのある』ということになる。
 おそらく、日本で最初に『有機農業』という言葉を使ったのは、1971年に日本有機農業研究会の創設にかかわった元農協役員、一楽照雄という人。『organic』という言葉を、実に意味深く『有機』と解釈したものだと実感します。

 私たちの『食』には消費する人と生産する人との『有機』的なつながりが必要不可欠です。それはほかならぬ信頼関係であり、むかしから今、そして未来へと脈々と受け継ぐべき関係です。

 社会を繋ぐものは『経済』と言い切るべきではないと思います。その証拠に、近代、世界のあらゆる戦争の火種は利権の絡む目先の経済ということではないでしょうか。人と人、生産者と消費者、食と農の信頼関係、つまりは、有機的な関係こそが求められるべきではないでしょうか。