梅ぼしと添加物

梅ぼしといえば日本の代表的な伝統食品です。かつてはお弁当といえば『おにぎり』。もちろん中身は『梅ぼし』。そして『日の丸弁当』。分厚いアルマイトの弁当箱にずっしり詰め込まれた『ごはん』と真っ赤な『梅ぼし』一個。あとはたくあん一切れ二切れ。それだけ。なんとあっけないお昼のお弁当なのでしょう。こんなんで育ち盛りのこどもが、学校の運動場やそれでも飽き足らず、学校の帰り道に野原を駆け回るほどの運動量をまかなっていたなんて信じられません。お父さんのお弁当もそうでした。それほどに『ごはん』のパワーってすごいんでしょうね。そして『梅ぼし』の持つインパクト。

市販の梅ぼし
市販の漬物にはおどろくほど多くの食品添加物が使われています。梅ぼしなどは単純な調味料しか使われていないと思われがちですが、そうともいえません。

中国などから輸入の安価な加工済み梅に味を付け直したり。熟度の浅い品質の悪い梅を、安い塩で漬け、赤しそも入れず、きちんと天日干しもしないとなると、足らない美味しさを人工的な調味料で補うしかありません。さらに必要以上の減塩のため、保存性も低下。結局保存料を使うことになります。ビタミンB1というと聞こえはいいですが、これもりっぱな保存料です。

どうしてこんなに余分なものが必要なのでしょう。実はこんな秘密があります。

えっ、梅酢が産業廃棄物?
最近では『酸っぱい、塩辛い』梅ぼしが嫌われがちです。塩漬けしたときに出る『白梅酢』は塩度も濃く、酸っぱい。そのままでは商品になりませんから、白梅酢は捨ててしまいます。そして水にさらして塩抜きをし、あらためて濃い調味液を作り、それに漬け込み、味付けをします。結果的に減塩でマイルドな酸味、強烈な旨味の美味しさ絶品の梅ぼしができあがります。はっきりいって、これでは梅のエキスの抜けた出しガラに味をつけただけということになってしまいます。日本の伝統食、梅ぼし。こんな梅ぼしをお弁当に入れても意味ないですね。

梅の歴史
梅の原産国は中国といわれています。日本へは奈良時代に伝えられました。もっともおそらくはその食べ方、利用法ということで、実際には弥生時代には日本にも梅の木が存在したことがわかっているそうです。

平安時代の(日本最古といわれる)『医心方(いしんぼう)』という医学書では、その最終巻で『烏梅(うばい)』という利用法が紹介されているようです。鳥梅とは梅の黒焼きで身体を温め、解熱、整腸、精神安定などに有効とされています。ただし、生梅を食すことはあまり勧められていません。

梅ぼしとして
梅ぼしが日本の食品として登場するのは平安時代だそうです。鎌倉・戦国時代には味噌玉とともに貴重な兵糧として利用されたようです。江戸時代には梅ぼしが一般的な保存食品としてもてはやされるようになったといわれています。

古くから健康食品として利用されてきた日本独特の食品『梅ぼし』。赤しそもその原産は中国とされています。その梅としそがどういった経緯で日本で梅ぼしとして親しまれるようになったのでしょう。もしかすると、日本の気候風土によるものかもしれません。梅雨のころ、どうして梅を有効に保存したらよいかと考えたとき、塩で漬け、さらに抗菌作用の高いしそを添えることで保存性を高める。赤しその色素であるアントシアンが梅の酸と反応して、みごとな紅色に変わる。梅雨明けのころ、それを天日で干して香り豊な梅ぼしに変身させる。

暑い夏に、かつては漢方薬として珍重された梅を、手軽に加工して真っ赤な梅ぼし。まさに日本の風土が生んだすばらしい食品です。

やっぱり梅ぼしは健康食品です。それに食品添加物は似合いませんよね。