天然酵母とイースト


道長では最近、岡崎市のかりんとうメーカーにお願いして、地元の小麦粉を使った『かりんとう』の試作をしました。できばえは上々で材料にしっかりこだわって、商品にしたいと思っています。

それはともかく、かりんとうもパンと同様、生地を油で揚げる前に発酵の作業があります。その際に使われるのが酵母菌(イースト)ですが、それを天然酵母にするかイーストにするかという初歩的な選択がまずあります。もちろん『イースト』とは『酵母菌』という意味ですが、通常世間的には『イースト』は単一的な酵母菌を工業的に、合理的に生産するのに対し、『天然酵母』は単一的な菌には違いありませんが、天然に存在する酵母菌であり、人為的な改良や遺伝子の操作が行われていないという条件がまず付きます。さらに『天然酵母』は化学的でなく有機的な培地で培養される点が大きな違いです。

さらに『イースト』には乳化剤や保存料などの添加物が使われることが多いのに対し、『天然酵母』の場合には食品添加物は使われません。

どちらも『酵母菌』なのに
天然酵母もイーストも、どちらも酵母菌であるにはちがいありません。しかしながらたとえば工業的にパンなどを生産する場合、経済的で扱いの楽なイーストを使うであろうし、さらに発酵を促進させるため、イーストフードと呼ばれる化学的な食品添加物が併用されるのが常識です。

それに対し天然酵母は、経済性や生産性よりも風味や安全性を追求する結果の選択肢ということで、製品作りに際して、すべてのほかの原材料にも当然厳選吟味がなされるわけです。

発酵技術と遺伝子組み換え
現在、安全性審査の承認を得た遺伝子組み換え作物は、ジャガイモ、大豆、てんさい、とうもろこし、なたね、わた、アルファルファの8品目77品種。そして『添加物』と称する6種、14品目(07年4月現在)。これらは食品や薬品を製造する際、本来は発酵技術が使われるところを酵素の添加で分解し、それで済ませてしまったりします。必要な酵素などを工業的に大量に生産するため、それに関与する微生物を遺伝子組み換え技術により作り出そうというもの。

この技術はたとえばチーズを作る過程で応用されているようです。発酵促進のための『キモシン』という酵素を組み換え微生物で大量生産しようというものですが、この場合、そのチーズの一括表示欄には『遺伝子組み換え』という文言は表示されません。その理由としては、結果として組み換え遺伝子の痕跡が残らないからということになっています。

『キモシン』ややはり遺伝子組み換え微生物による『リパーゼ』(食用油脂の加工助剤)なども、その安全性が確認されていて、消費者の態度如何で日本の食品メーカーでも使われるようになるかもしれません。

これは簡単な理屈です
まったく単純な道理ですが、将来『イースト』にも遺伝子組み換えが行われる可能性は十分あります。しかし、天然酵母にはそれはあり得ません。この簡単な理屈でわかるとおり、『天然酵母』と『イースト』とでは、たとえそれがおなじ『酵母菌』と訳されるとしても、そのコンセプトには180度の違いがあることがわかります。つまり、それをいったい誰のために使うのか、ということなのです。その製品を買っていただき、さらに食べていただく『消費者』のためにそれを使うのか、はたまた、生産する自分の会社の経済性、合理性のために使うのかということ。前者には『安全でおいしい』、後者には『大量生産ができて儲かる』というそれぞれの明確な目的があるわけです。でもこの両者にはとんでもない相違がある。

他にもたくさん
このほかにも、たくさんの同類項があります。保存料、酸化防止剤、色素、化学調味料、アミノ酸などの各種発酵調味料、芳香剤、消泡剤、増粘剤・・・。

『天然酵母』も『イースト』もどちらも大差の無い酵母菌、という論理の危険性はそれ自体の安全性の是非よりも、それを利用するメーカーの安全性への姿勢自体に疑問符が投げかけられることになるわけです。

以上両者は決して等号で結ばれることはないわけです。
塩化アンモニウム
塩化マグネシウム
グルコン酸カリウム
グルコン酸ナトリウム
炭酸アンモニウム
炭酸カリウム(無水)
炭酸カルシウム
硫酸アンモニウム
硫酸カルシウム
硫酸マグネシウム
リン酸三カルシウム
リン酸水素二アンモニウム
リン酸二水素アンモニウム
リン酸一水素カルシウム
リン酸二水素カルシウム
イーストフードとして認められている添加物