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    Differential Transformer デファレンシャルトランスフォーマー
   
■課題
磁気回路が強力で高能率なフルレンジスピーカーに高音質再生の期待を込めたい。
しかしそれ故、逆起電力が大きく最低共振周波数のインピーダンス上昇(交流抵抗)が大きい

特に密閉型キャビネットでは空気バネと相まってインピーダンス上昇が大きく定電圧駆動では
電流低下となって電力供給低下となる。
しかし共振という効率のよい振動のため共振周波数での音圧レベル低下になるとも言えない。
問題は共振による音質に問題があり、吸音材で制振すると低音が不足するので、共振を駆動できる電力供給が重要と考える。
それでもそれなりに設計された密閉型スピーカーシステムは、実用に至る低音が確保されてい
る。
逆に言えば、最低共振周波数の電力供給低下にもかかわらず、そこそこの低音を出しているこ
とに大きなポテンシャルが秘められている様に思える。
 
                                 2014/9/10
電源トランスを差動接続
スピーカーの最低共振周波数電力供給回路



 
   
   
■考察と実験
共振でZの抵抗が大きくなったとき電圧V2が増す回路としては、固定抵抗器Rを直列に入れる
方法があるが、共振周波数以下では抵抗を下げたい。

その方法として、固定抵抗器ではなくコイルを使いバイパス抵抗でバランスを整える。

コイルのカットオフ周波数が共振周波数に重なる位とすることで、低い方でしっかりインピ
ーダンスが下がると思われる。
コイズミ無線の総合カタログの計算式 
fc=(159×R)/L 逆算で L=(159×R)/fc R:8Ω fc:106Hzで良いとするとL:12:mHと
なる。
後は抵抗器の調整である程度ハイ上がり特性を調整できるので回路設計が苦手な自分には相
応しい回路とも言える。

能率が良く共振周波数の低音レベルを上げても良いシステムを用意する。
FostexFE103Enによる密閉型キャビネットでおこなった回路A~Cでは、周波数特性のfocの
レベルが維持されているが、それ以下では低下が見られる。
回路Aの2.2Ωを5Ωに変えると特性Bのようにfocを中心に低い方と高い方が下がる。
回路Bはボーカルがハイ上がりのソースでもノイズ感が少ない。
バランス的に低音が出ても、低い方のレベル低下は音質的にも好ましく無いように思える。

回路Cのように出力を中間タップから出すと、双方で逆向きの電流となってインダクタンスを
打ち消すため、foc以下で直接接続(direct)に近い結果が得られる。2.2Ωを5Ω~8Ωにして
もfoc以下でのレベル降下が少ない。
活気のある低音が得られ、音質を判断することを忘れて聞き入っていたことに気づいたCの方
が良いと判断できる。



コイルの差動接続が面白いと思ったので試してみる。
リングフェライトコアのバイファイラ巻きとキャンセル巻きがあるが、製品としては小型の
チョークコイルで、コアの性質のせいか、100Hz以下でのインピーダンス特性の山谷が多く、
まともにはいかないと判断した。
電源トランス二次コイルでは問題無かったので、試している内に一次コイルと二次コイル電
流が逆向きとなる差動接続とした所、foc以下にも緩やかなレベルアップが見ることができた。

一次コイルにはスピーカーを介さない電圧を与えたので、上記22mHのコイルも同じようなこ
とをおこなったら低音は出るがロスが多い特性となった。アンプに余裕があれば実用レベル
ではあると思われる。
一応この22mHの回路Dを示す。100μFは安い電解コンデンサーを使った。100Ωは最低イン
ピーダンスが下がりすぎない値とした。



 



回路C スピーカーを固定抵抗8Ω バイパス抵抗2.2Ω 5Ω 8Ωの特性


   
   
■電源トランスでの回路
Eのように一次端子100V表示と二次端子0V表示を一本結線するだけである。
他のトランスも表示が同じとは限らないので一応結線してみて音の大きい方とする。
少しハイ下がりとなるのでFまたはGのようにバイパス素子を付ける。
直接接続より劣る点は感じられず、歪み感や力抜け感のない音質を得られた。トランス二次
電流容量1Aでも良いが2Aの方が内部抵抗が低いので一層効果的である。
20Vタップ30Vタップなどもあったら変化を試せる。


回路Gはハイ上がりを抑えられないが低音の力量のようなものは一番。

負荷抵抗に伴う電圧のようす。



■最小限の浪費を心がける実験
トランス二次容量0.5Aで前実験のヒレ付5.7cmスピーカー平面バッフルを聞いて見る。
内部抵抗の影響が増すが入力定格インピーダンスが下がりにくい。
foのインピーダンス上昇に伴う電圧増加効果はあるので低域音質改善が実感できる。
トランスTOYODEN HT2405

 


FE103En密閉BOX 6.8L無吸音材で低音減少を回避  HT162 2A 回路G  LP66-22 回路C

定在波対策は、ユニット後ろ開口がBOX面に対し、対称にならないように斜めに付ける、また中
心をずらす。