韓国と日本の食文化

米を主食にしているアジアの国々のなかで、しっとりと粘りのあるごはんを好むのは特に日本と韓国です。中国では気候風土の違いが各地であるため、主食はどちらかといえば米ですが、小麦にも大きな比重があります。米についても多様で、調理法については日本や韓国人の好む食感とはちょっと違う。

韓国と日本は地理的な位置関係では、朝鮮半島の南端が三重県辺り。それより北はすぐに山岳地帯になっていて、気候は日本に比べて以外に寒冷。北朝鮮に接する江原道(カンオンドウ)では、4月でも雪が降るほどです。

日本とは気候に多少のずれはありますが、韓国の食文化と日本のそれとは、もともと次の点でたいへん似通っている。

主食がごはん
調味料は大豆の醗酵が基本
動物性たんぱく源は海産物が中心

両国の食文化で大きなちがいはといえば、なんといっても『唐辛子』の存在でしょう。日本では辛味・薬味として使われるくらいなのに対し、韓国での唐辛子の使われ方は尋常ではありません。日本人のイメージからするととにかく『辛い』ということになってしまいます。

視点を『農』に向けてみる
では農業についてはどうでしょう。これについても、韓国の農業地帯の風景は、日本のそれとまったく変わらない田園風景です。でもしかし、日本列島と朝鮮半島とでは、その土質について大きなちがいがあるといわれています。

日本列島:火山性で土質は酸性にかたよる
朝鮮半島:海底の隆起によるため、アルカリ性土壌

このちがいが作物に対して具体的にどのような影響があるのかむつかしいところですが、とにかく畑作の作物では特に大きいと思います。『韓国唐辛子事情』で考えたように、韓国の気候風土ではできる野菜の性質に、『食感』『風味』の点で日本とは大きなちがいがあるように思います。

唐辛子ではどうなのか
とくに『キムチ』を作るのに、日本の唐辛子ではその用を足すことはできません。たしかに唐辛子には『辛味』がありますが、韓国の気候風土で作られた唐辛子には決定的に『旨味』『甘味』がある。さらに野菜について、その歯ごたえの点では感覚的には『圧縮』された感じの食感がある。

日本で朝鮮人参ができないのと同じで、韓国でなければおいしい唐辛子はできないのかもしれません。要するに日本と韓国とでは、唐辛子に対する考え方が違うのです。

調味料としての唐辛子
日本では辛味か薬味としての役割の唐辛子ですが、韓国ではもっと重要な『調味料』として使われる。さらにもうひとつ、寒冷地としての宿命として『塩』の使いすぎ(塩は身体を温めるため)をおさえる効果もあるのです。

もし、日本も朝鮮半島のような風土であったなら、唐辛子はもっと強烈に受け入れられていたかもしれません。そうでなかったのが幸か不幸か、日本では今日のような風味の食文化となっているわけです。

日本に唐辛子が根付かなかった代わりに、米と大豆の食文化を、明確な四季折々の『旬』の農海産物と織りあわせて楽しむという方法を選んだのかもしれません。

それにしても、唐辛子の本当のすばらしさを知ることのなかった日本は、ある意味で不幸なのかもしれません。